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パラライズ  作者: 柳
東京編
3/14

享受する平和

8区襲撃から1週間

週末にいくと約束して、ゴタゴタして先延ばしになっていたショウカとのデートに行く。リカは侍女さん達が面倒を見てくれている、ありがたい限りだ。

目的地は『小鳩』である。先日のテロ以来8区の人口は大きく減ってしまった。シェルターに入れるのはスライムの感染者を判別する警報が反応しなかった為に、大変な被害を被ってしまった。街自体の破壊はそれほどではない。人口も他の区から人が流入し復興に向かっている。


「嬉しいですわ、久しぶりの夫婦水入らずのデートだなんて。」

左腕にピッタリとショウカが張り付いている。

新婚でもないのに多少気恥ずかしいが、ショウカのいう通り夫婦水入らずだ。

目的地は『小鳩』だ。

コバトさんとも、あれ以来会っていない。

多少の気まずさを覚えつつ店へと歩を進める。

「ショウカは和菓子とか素朴な甘いものが好きだと思ってたから、パフェに目がないとは思わなかったよ」

「ふふふ、女子は甘いものに目がないものですわ。」

得意そうな表情と上目遣いに心奪われる。われながら妻バカだと思う。と同時に妻の発案とは言え、例のプログラムを言い訳に他の女性達と関係をもつことに自己嫌悪を覚える。まぁいつものことだ…

それよりもこの貴重なデートを楽しもうと全力を注ぐ。

喫茶店につき店の扉を開ける。アビーときた時同様入店を知らせる鈴が鳴る。

「キクリくん。来てくれたんだねよかった。」

いつもと変わらぬ様子に安心する。

俺に聞きたいことは沢山あるだろう。

「コバトさん、妻のショウカです。」

「あら、この子が。はじめましてコバトです。」

コバトさんは手を差し伸べる。

ショウカも握手に応じる。

「夫からはお話を伺っていますわ。」

適当な席に座る。

「コバトさん、例のパフェとコーヒーを。ショウカは何飲む?」

「ワタクシもコーヒーでお願いいたします。」

「はい、少々お待ちください。」

コバトさんは注文をとりカウンター越しのキッチンへ向かう。

「いいお店ですわね。」

「あぁそうだね…昔は良く来てたんだ。」

「昔と言いますと、ウチに来る前ですの?」

「そうだね、当時はコバトさんのお母さんが経営してい、すごく良くしてもらってた。あの頃が懐かしいよ。」

「含みのある言い方ですわね」

「話しても楽しくない話だよ。」

「じゃあ、楽しいお話ししましょう。見てくださいこの写真」

ショウカはスマフォを取り出し娘の写真を見せてくる。

「リカちゃんのこの垂れ眉キクリ様にそっくりですわ。」

「本当だ眉毛そっくり。でも目はショウカにそっくりだ。」

適当に会話を続け、注文したものが来るのを待つ。

しばらくすると、コバトさんがコーヒーとパフェを運んでくる。

「素晴らしいですわ。こんなに大きいなんて!」

「2人で食べるやつだから…」

「いいえ!1人で食べられますわ!別腹ですわ!」

「ハハハ、すっごいデジャヴ」

アビーと同じ反応に笑ってしまう。

パフェを頬張る妻を見てコーヒーを啜る。

こんな穏やかな時間を過ごせることに感謝し、コバトに話を切り出す。

「コバトさん、何か俺に聞きたいことがあるんじゃないですか?」

「え、えぇ、まぁ」

「少し話しましょう、こっちにきて隣の席に座ってください。」

コバトはカウンターで拭いていた食器を戸棚に戻し、隣の席に座る。

「俺達は木戸家の人間です。」

その一言で全てを察したかの様に口に手を当てる。

「その中でも特殊な部隊の所属でして、あんまり詳しくは話せないんですけど、この前のあれはそれによる救助活動中でした。」

「いえ、話してくれてありがとう。木戸家の方と聞いて納得したわ。」

一般人にも木戸家の事は認識されているようだ。

「騙していた様で、申し訳ありません。」

「全然いいのよ!まさか木戸家の方だとは思わなかったけど。」

コバトさんは少し考え話し続ける。

「また、何かあったときは助けてね。」

「それはもちろん、俺たちの義務ですから。」

「キクリ様の言う通り、皆様のことを守るのはワタクシ達、木戸家としての責務ですわ。」

凛とした顔を見せる妻の顔を見て思わず笑ってしまった。

「どうしましたの?」

「いや、すっごい真剣な顔してるけど、ほっぺに生クリーム付いてるなって思ってさ。」

ショウカは慌ててナプキンで顔のクリームを拭き取る。

「お恥ずかしい姿を見られてしまいましたわ。」

「2人とも仲良しね。結婚したって聞いて、どんな子か気になっていたの。会えてよかったわ。」

「ワタクシもコバトさんのお話を伺ってお会いしたかったですわ。」

人のニオイを嗅いでおいていうことじゃないだろ、と心の中で突っ込みつつ引き続きパフェを頬張る妻の姿に見惚れる事にする。


ーーー


「ほら、ここ、ここ、ここ」

V部隊本部道場

ミツカとユキに近接戦闘の訓練をしている

2人ともとてつもない打撲痕だらけだ。ユキも二、三手攻撃を防いでいるが致命的な攻撃は防げていない。

ぐぇ、とえづいている。

「き、キクリさんちょ、っとタンマ、タンマッス」

「はい、口動かす前に足を動かす。」

「あぎゃーー!」

とんちきな悲鳴をあげ、床に転げ落ちる。

ミツカはよろよろと立ち上がり木刀を構える。

(お兄様にしごかれる、痛みすら快楽に変えてくれる。)

「ほらミツカを見習いなさい。ユキよりしごかれてるのにやる気十分だぞ。まぁ、3時間ぶっ通しだし少し休もっか。」

「助かったッス〜。」

「助かったじゃないよ、まったく。ユキパシリとして軽食と飲み物買ってきて。」

財布から3千円渡す。

「任せくださいッス!」

なんだかんだ言いながらピンピンしてる、まだしごけそうだ。

道場の縁側に座りミツカを呼びつける。

「ミツカ、少し風にあたりなよ。どんなに頑丈でも熱中症には勝てないぞ。」

「えぇお兄様、お気遣いありがとうございます。」

姉妹間で話し方や性格は全然違うが、ミツカとショウカは良く似ている。子供の時はよく、ショウカがミツカとオウカの面倒を見ていたと聞く。オウカは真逆の性格に、ミツカは真似をしてそっくりになったのだろうと推察する。

「休憩後、次は槍術の訓練するからね。」

「わかりました。」

体中の打撲痕が目に見えて回復しているのをみるに、ミツカも回復力は高い様だ。ユキも戻ってくる頃には綺麗になっているだろう。

「ミツカは希望の武器とかある?明日はそれに合わせてメニュー決めるけど。あ、射撃以外でね。」

「まだ、どれが使いやすいかはわかりません。体術は得意ですけど近接武器を使っての戦闘訓練はしてきませんでしたから…」

「体術と武器を合わせて戦えるといいね。型にハマる必要はないから。それに射撃の腕はかなりのものと聞いてるから、そっちはミハルさんにお願いするけど。」

「いえ!私はお兄様の側で戦いたいのです。それだけは譲れません。」

「買ってきたッス!」

バタバタと足音を立てユキが武道場に入ってくる。

「お、ありがとうユキ。じゃあ、今から1時間休憩しよう。腹に物をいれて、少し昼寝でもするといい。」

ユキが買ってきてくれた軽食(プロティンバー)を頂く。

10年前の自分もシュウカさんにしごかれ、縁側で横になっていたことを思い出す。今思えばこの2人よりボコボコに殴られていたと思う、とにかく容赦がなかった剣術の訓練なのに拳が飛んでくる蹴りが飛んでくる、挙げ句の果てには背負い投げされたことを思い出す。その点2人はちゃんとした訓練を受けてきているだけあって身のこなしは軽い、実戦を考えればシュウカさんの様に容赦なくやるべきなのかもしれない。

ミツカとユキは2人とも軽食を食べた後、縁側で横になり目を閉じる。ユキはあっという間にイビキをかいて寝始める。ミツカも寝息をたて寝始める。俺も一緒になって寝たい所だが生憎、寝つきも悪ければ睡眠の質も悪い為、仕方なく柱に寄りかかり目を閉じることにする。

気がつくと2時間寝てしまったようだ。ユキとミツカは既に目を覚まし、2人で槍術の練習をしている。

「2人ともごめん、すっかり寝入ってしまって。」

2人には申し訳ないが、久しぶりに熟睡した様な気がする。体がすごく軽く感じる。

「おはようございます。起こそうと思っていたのですが、すごく気持ち良さそうに寝ていたので起こすに起こせなくて。ユキさんと相談して起きるまでそっとしておこうって。」

「そっか、お陰様で体が軽いよ。槍術の訓練はやめて、2人とも使いやすい武器で本気で俺とやり合おうか。連携の訓練にしよう。15分後に装備をもって地下演習場に集合。」

「「了解です。」」


ーーー


「さて2人とも用意はいい?」

地下演習場、実戦訓練に使われる場所だ。俺達はいわば超人だ通常の施設で本気で動こう物なら辺り一体を木っ端微塵にするところだ。ここならどれだけ暴れても壊れることはない。しかも電磁パルス?を用いて建物なども生成可能だ。今は8区を再現した間取りとなっている。

「すごい、こんな空間が地下にあったなんて」

「ほんと、すごいっす…」

「そっか2人はここは初めてなんだ。ここでなら思いっきり暴れられる。」

ユキはいつものバックにハンドガンと野球バットの様な鈍器を装備している。

ミツカは腰にフォトンブレードをメイン武器はAR KDD-305とサブにHG SKY100を携行している。PKの基本装備に近い。

俺はいつも通りの装備だ。

「2人ともわかってると思うけど、殺す気でかかってきてね。」

同時にユキがスタングレネードとスモークグレネードを投擲する。煙幕の中から、銃弾が飛んでくる。何発か体に受ける。すぐにSFGで上空へと離脱しビルの壁に張り付く。すると煙幕の中からユキが飛び出し壁に張り付くキクリ目掛けフルスイングする。ユキに動きを読まれている。咄嗟に左腕で受け骨が折れる。が、構わず折れた腕でバットを握る。左腕は瞬時に再生する。キクリへ打撃は有効打にならない。

「!」

「読みはよかったが、まだ甘いッ」

煙幕の中から再び銃弾が飛んでくる。

心臓と頸動脈を掠める。ミツカの援護射撃が嫌な所でとんでくる。サーモセンサーを装備していたのか煙の中から的確に狙ってくる。人体の急所をやられると、再生までに一瞬のラグが生じる。その隙をユキに狙われバットで隣のビルまで吹き飛ばされ、なんとか屋上を転がり体勢を立て直す。

2人のコンビネーションに感心する。初めての共闘で正直もっとチョロいと思っていた。

甘いのは自分だったようだとキクリは反省する。

「ま、だからって負けてやるつもりはないけど。」

ビルの壁を手足をつけ滑り降りる。

煙幕が晴れ街の様相を取り戻す。

ビルの壁を遮蔽物にしミツカが射撃をしてくる。

ユキも別の角度から射線を通してくる。

フォトンブレードを引抜き2人の銃弾を弾きながら、こちらも遮蔽物へと身を隠す。

「初めてにしてはよく連携とれてるじゃないか。」

2人からの返事はない。それでいい。

すると、カンという金属音がなったかと思うと、球体が壁にめり込みそれがグレネードだと気がつくまでに一瞬判断が遅れるが、直撃は免れた。少しつま先に火がついたが問題ない。すぐに壁に張り付きビルとビルの間をバッタの如く飛び交い、ミツカを狙って切り掛かる。確実に意表をついたと思った。ミツカは左手で腰のブレードを逆手にもち俺の一撃を受け止めた。

「嘘だろ反応した!?」

「!?体が勝手に!?」

ミツカ本人が驚いている。ちょうどユキから射線はきれている。ユキがこちらに向かってくる足音が聞こえる。

バット片手にこちらに振りかぶってくる姿が想像できる。

「もらったッス!」

「甘いっ!」

ミツカの襟元を掴み、鍔迫り合いのまま飛び込んでくるユキにぶつける。ミツカが焦っていなければ、やすやすと投げ飛ばすことはできなかったであろう。

ユキはミツカを受け止め手が塞がり、そのまま地面に倒れ込む。倒れた2人にブレードを向ける。

「まいったッス」

ユキの一言でブレードをしまい2人に手を差し伸べる。

ギュッと両の手が握り返され、2人を起き上がらせる。

「正直こっちも焦ったよ。2人とも初めてにしては本当によく連携がとれていた。」

ユキの動きも格段に良くなっていた。以前ならビルの壁を駆け上がり左腕を折るほどのフルスイングはできなかったであろう。ミツカも咄嗟に体が動いた様で、まぐれか実力かはわからないが反射的に行ったのだとすると、恐ろしいほどの反射神経だ。

ごく短い時間の戦闘であったが、2人の成長、可能性を見ることができた。スリーマンセルとして、最前線を張ることも出来そうだ。

「よし、早いけど今日の俺の訓練はここまでにしよう。後はトレーニングするなり休むなりするといい。実りあるいい訓練だったよ。」

2人はふぅと、ため息をつく。

「俺は射撃訓練に行ってくる。」

「あ、お兄様それでしたら私もいきます!」

「お、じゃあ先に射撃訓練に向かっていて、自前の銃取りにいったんピットに戻るから。」

「はい!お待ちしています!」

「ウチはちょっと閃いたことごあるんで、トウカさんとオウカちゃんのとこに行ってくるッス」

「ほい、じゃあ解散。ミツカはまた射撃場で会おう。」

「はい!お兄様!」


ーーー


「ねぇトウカ、感知器すり抜けた件わかった?」

実験室の椅子に座り子供の様にクルクルと回っている姉に辟易とする。この姉は、突然きては私に答えばかり求めてくる。

「教祖の能力が、どんなものか知らないですけど、恐らく体内に寄生させたスライムを休眠状態にする事で感知器を潜り抜けたんじゃないかしら。」

「休眠状態って言っても感知器に引っかからないってのは無理でしょ。」

「恐らくといいました〜。」

とはいえ科学者、開発者、博士、まぁ呼び方はなんでもいいが、私もそう言った人達の端くれとして何もわかりませんでは虫が悪い。

「現場の感知器を調べた結果、8区の感知器全てにイジられた形跡があったわ。」

「てことは、うちに工作員が紛れ込んでるってことね。」

「そういうこと。後はそっちで調べてください。」

「はいはい、わかりましたよ〜。」

姉は椅子から降りると出口へと向かっていく。

「そうだ、たまには家に帰ってきなさい。可愛い姪っ子も

産まれて4〜5ヶ月は経つのに、一回も会ってないでしょ。あんただけよ、家に住んでないのわ。」

「姪っ子の件は次の休みにお祝い持って帰るわ。」

私には実家は窮屈で仕方ない。自室があれど常に誰かの気配を感じてしまうのが嫌で15歳の時から8区内の戸建てを購入し1人で暮らしている。資金はもちろん自腹だ、12歳からラボで研究や開発で得た正当な報酬でだ。トウカには放課後の時間をラボで過ごすのが何より楽しみであった。木戸家が設立した学校だが大学まで通い、少しばかりの友人と実りのある時間を過ごす事ができた。

「ショウカは、例の実験は続けてるの?」

「続けてるわよ、昨日はアタシと寝た。」

「やめて、そこまで聞きたくない。」

「はいはい、じゃ今度こそ、またね」

バタンとドアが閉まり、部屋は静まり返る。

何かと忙しない人だ、姉妹だが私とは違う世界の住人だ。


ーーー


V部隊本部

マヒルとヒビヤを伴い演習場へ向かう。

シュウカさんの指示で、元PWT同士でスリーマンセルを組めとの事だ。過去にもスリーマンセルを組んだ経験は何度かあるが、結局はキクリとツーマンセルになってしまっていた。今回は1人にならない事を祈るばかりだ。

「お二人ともPWT出身なので射撃は得意かと思いますが、一応訓練と施設案内もかねてということで。」

「キンジさん俺たち2人確かに年上ですけど、階級は下だしV部隊では後輩ってことになりますし。」

マヒルさんが進言してくれたことで、敬語はやめることになった。このさい呼び捨てにしようと思う。

「あれ、キンジじゃん。どこ行くの?」

軽薄なこの感じキクリだ。

「演習場、2人の実力を見てみようと思ってな。」

「奇遇だね、俺もさっき同じ事やってきた。っで、今から射撃場行くところ。ってことで、ここでお別れまたねー」

どんな訓練を受けてきたのかわからないが、キクリが銃を持っていたらキクリより前には絶対に出ないが部隊内でのお約束だ。それでもマシになり一応援護射撃が出来るくらいにはなったそうだ。

エレベーターに乗り地下へと向かう。

毎回新人が入るたびにこの演習場へ向かい実力を見る。

誰も彼も実力不足だと思ったことはない。そもそも選ばれた時点で基準値は満たしている。ユキやアビゲイルの様に生き残っているが、彼女達の同期は皆殉職した。

ミツカ、マヒル、ヒビヤ、ナナ、コウ何人が生き残るだろうか。ミツカは生き残るだろう、木戸家の人間はスライムに対する適合率が高い。それだけで生存率は跳ね上がる。他の4人はどうだろうか、願わくば全員生き残ってほしいとは思う。

エレベーターが演習場の階で止まり、廊下への一歩を踏み出す。


ーーー


「すごいなミツカ、ほぼ全弾同じところに当たってる…」

部隊内で言えばミハルさんとアビーの次くらいの精度では無いだろうか。キクリがとても評価できるような立場では無いのだが…。

「さっきの演習でもすごい反応速度だったし、オールラウンダーだね頼もしい。」

「ありがとうございます!嬉しいです!」

うーん、素直可愛い。ユキ、アビー、オウカもそうだが、みんないい子ばかりだ。油断をするとよしよしと頭を撫でてしまいたくなる。いや、撫でてしまった。

ミツカは頬を赤く染め、上目遣いでキラキラした目を向けてくる。姉妹揃って同じ仕草だ。

アビーやユキにやった日にはセクハラで訴えられかねない。2人とも許してくれそうではあるが…。

「お兄様の射撃も見せてください!」

「いや、ほんと酷いもんだよ利き手と利き目が逆で。ミハルさんにそういう場合の撃ち方も教わったんだけど上手くいかなくて。」

左手にハンドガンを持ち的に向い数発撃ってみる。

「銃の利き手を矯正してこんな感じで的には当たるようになったけど、これが精一杯。ほら一応全弾命中って感じでしょ?」

頭の部分を狙って撃ったのだが、1発頭にあたっただけで残りは全て的に当たっているだけである。寄生体には当たるが変異種や適合者相手にはとてもでは無いが通じない。

「撃つお姿にお兄様の努力が滲みでていました!」

すげぇ、どうやっても褒めてくるぞこれ。

なんだかむず痒い。

「精一杯とは言ったけど、仲間の命がかかってるからね。訓練は続けて、その精一杯を少しでも伸ばしていくよ。」

「えぇ!一緒に励みましょう!いつでも訓練お付き合いします。」


ーーー


「キクリ、仕事よ」

2人きりの喫煙所の中で交わされるそれは、決して気持ちのいいものではない。シュウカさんから手渡された端末にSFGを挿しこみデータの中身を閲覧する。

中には3人の個人情報が入っている。任務の内容は、工作員の抹殺。シェルターの感知器に細工を施し大勢を殺した大罪人達だ。

「悪いわね、汚れ仕事押し付けて。」 

「俺に任せてくれるって事を、信頼の証だと思ってますよ。」

端末を抜き取り、シュウカに返す。

「それより、ナナちゃんとコウくんはどうですか?」

「悪くないんじゃない?」

シュウカはタバコに火をつける。

「ナナはアンタに似てるかもね3次元的にものを捉えるのがうまいわ、コウは動けるけど突出した能力は無いかな。そっちのミツカどうなのよ?」

「すごいですよ、才能の塊です。」

先日の演習の話をシュウカさんに話す。

いつものようにケタケタ笑いながら煙草の灰を落とす。

「それじゃあ俺はこれで、今夜はショウカと予定があるので。」

「もう2人目考えてんの?お盛んねー。」

「少子高齢化対策です。」

「その調子でアタシのことも頼むわよ」

「了解です。」


ーーー


「お待ちしてましたわキクリ様」

寝室に戻ると、ショウカは三つ指をついて待っていた。

服装も白い浴衣姿だ。

「今晩は寝られないだろうな。」


※18禁同人誌の様な展開。


「ショウカ子供は何人欲しい?」

「5人は欲しいですわね。」

「まじ?五姉妹だから?」

「えぇ、それもありますが、いつまでもキクリ様と愛し合っていきたいですわ。」

「応えられ続けられる限り、応えるよ。」

「嬉しいですわぁ」

ショウカは頭をぐりぐりと押し付けてくる。紫色の髪が振り乱れショウカの香りと布団の中で姉妹の中でダントツの胸が揺れ体にすりつけられ。再び元気を取り戻す。

「さぁ、ショウカまだまたヤレるぞ」

「まぁ、では失礼致しますわ。」


※18禁同人誌の様な展開。


ーーー



昨晩はショウカと頑張りすぎた。起床が正午になってしまった。今日は訓練ではなく兵器開発部に私用がある。

「オウカ、お疲れ様。ちょっといい?」

「お兄ちゃん、どうしたのわざわざ開発部まで顔出すなんて珍しいじゃん。トウカちゃんが怖くて普段寄り付かないのに。」

「人聞きの悪いこと言うなって、ちょっとお願いがあってきた。」

「ほうほう、何をご所望で?」

オウカはこれみよがしに伊達メガネをクイッと上げて見せる。そういうふざけた態度で実力を見せつけてくれるのがオウカという人物だ。

「それがさ8区襲撃事件で、俺の大剣ボロボロになっちゃって改良と修理をお願いしたくてね」

「ほうほう、して月光剣の現物は?」

月光剣とは大剣に付けられた正式名称だ。

「一応現物は持って来たけど…」

「これはまた随分と。名剣と謳われた技物が何を斬ったらこんなことになるのか…」

刃こぼれし、ボロボロになった月光はαとの戦闘でこうなった。正直今回αが一体だけであったから、なんとかなったものの、あれが2体、3体と現れれば一撃で斬り伏せられないと困る。

「つまり、更に切れ味を増せと。なかなか無茶なお願いですね。既に最高硬度のモノを更に硬くしろと。それに応じた鞘も用意しなきゃ、無理難題だよ〜。ま、私に全面的に任せてくれれば何とかしようじゃないですか。」

「ありがとう。オウカ様」

「褒めて良いのだぞ!具体的には頭を撫でてくれればいいよ!!」

「謹んでヨシヨシさせていただきます。」

オウカの頭をこれでもかと言うほどわしゃわしゃと撫でる。

「それともう一つ、ハヤテが大破しちゃって。直せるかな?」

「あー、状態は見たけど。廃車だね。」

シュウカから譲り受けたものだったが、残念だ。

「新車用意しておくよ、私が設計した奴でよければ。」

「それはありがたい。悪かったね仕事の邪魔して。」

「大丈夫これも仕事のうちだよ。武器の開発から修理、メンテナンスまでなんでもお任せくださいな!」

「ハハ頼もしい。ありがとう、それじゃあ俺は別件が、あるから、また夕飯に。」

「うん!」


ーーー


第8区収容所地下へ13階層になる施設だ。PWTの適合者が常勤し外からの防衛システムも強固なものになっている。PWTやV部隊が逮捕した適合者や人間を個々に監視するための施設だ。情報源として確保した、カリムと二宮ヒサコはここに収監されている。

ショウカはアビゲイルを同行させ、収容所を訪れていた。今回はカリムとの面会を希望してのことだ。

世界的なテロ組織であり、アスラム教の主導者の1人だ。何かしらの情報を引き出したい、例えば次のテロの標的などが分かればこちらも相応の準備ができる。

簡単に口を割ることも無いのは分かっている。カリムは主導者の中でも過激な原理主義者だ、通常の手段ではまず口を割らないだろう。となれば残る方法は非人道的な方法となる。それは最後の手段として取っておくとして、話をしてコミュニケーションを取ることで、相手の情緒を把握し何かしらの情報をポロッと漏らすかもしれないというのがショウカの狙いだ。菓子折りを持って収容所に来た理由を分からないアビゲイルは?マークを頭につけている。

コツコツとショウカのヒールの音だけが反響している。

面会室への扉を開く。

厚さ50mmの強化ガラス越しにカリムと対面になる。

カリムの両手両足には拘束具が取り付けられており、自由が制限されている。また拘束具から伸びたチューブから抑制剤が常に投与されている。このチューブは成人男性でも引きちぎることができないほど強固なものとなっている。

「俺に何の様だ。」

「あら、日本語お上手なのですね。」

「…」

「差し入れを持ってきましたの、こちらお召し上がりになってください。」

アビゲイルは紙袋から取り出されたものを見て思わず絶句した。てっきり菓子折りだとばかり思っていたが、なんと中身は豚の生姜焼き弁当であったのだ。アスラム教徒は豚肉は食べてはいけないもの、初手から喧嘩を売りにいく上官に一種の恐怖を覚えた。

受け渡しは椅子の下にある開閉式の扉から、足でカリムに差し出す。

「ワタクシ、アジュワル教ってこの世から無くなった方がいい宗教だと思いますの。いもしない唯一神を信じて女性に乱暴を働く宗教がまともとは思えませんわ。アスラムに死を。それを食べられたら今の言葉は取り消しますわ。さぁ召し上がれ。」

カリムは差し入れられたそれを蹴り飛ばし、ものすごい形相で強化ガラスに頭をぶつけ、こちらを睨む。

「×・÷2%…::€〒〒:×4」

何の言語かわからないが、罵られているのはわかる。

「ふふ、哀れですこと。私が貴方がたの言葉を理解してないとお思いで?」

そういいながら笑うショウカさんの笑顔は恐ろしかった。

ショウカとアビゲイルは面会室を出る。

アビゲイルはとんでもないものを見てしまった、とばかりにショウカの顔を恐る恐る覗き込む。

そこにはいつもの優しいショウカの顔があることに安堵する。

「何かもっと尋問とかするものだと思ってました。」

「ふふふ、それはこれからキクリ様やお姉様が、じっくりやってくれると思いますわ。ごめんなさいアビーちゃん、こんな嫌がらせのために護衛で同行させてしまって。」

「いえ!とんでも無いです。」

「そうですわ帰って、一緒にマフィンでも作りましょう。もちろ無理にとは言いませんわ」

「もちろん大丈夫です!」





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