6話
映像は酷く乱れていた。
音声も途切れ途切れである。
画面の大半は黒い。
時折ノイズが走る。
それでも人影だけは判別できた。
壁にもたれかかる男。
モンブ・アシャリカだった。
配信中とは思えないほど疲弊している。
頬は痩せこけ、
声も掠れていた。
今まで公開されていた配信の姿とはまるで別人だった。
しばらく無言が続く。
やがて小さく笑った。
生きてるな。
よし。
独り言だった。
視聴者に向けたものではない。
確認作業のようだった。
遠くで何かが鳴っている。
風の音にも聞こえた。
獣の唸り声にも聞こえた。
そのどちらでもないようだった。
やがてモンブは口を開く。
多分ここから先は残らない。
だから先に話しとく。
……まず訂正。
今までの配信で言ったこと。
半分くらい嘘だ。
その言葉に思わず笑ってしまった。
死の直前まで詐欺師だったのかもしれない。
もっとも。
その後に続く言葉は冗談には聞こえなかった。
五十階層の自己最速記録。
本当。
単独攻略。
本当。
無酸素探索。
本当。
再生数煽り。
……あれも本当。
そこで初めて本人が笑う。
短い笑いだった。
だがその後は続かなかった。
嘘だったのは理由だ。
金が欲しかった。
有名になりたかった。
冒険が好きだった。
首を振る。
全部違う。
急がなきゃいけなかった。
間に合わなくなる。
本当に。
誰も信じなかったけど。
やがてモンブは顔を上げる。
その時だった。
初めて恐怖が見えた。
これまでの証言をいくら読んでも現れなかった感情だった。
エアハルトも。
ラザも。
ノグラも。
誰も語らなかった顔。
しかし、この映像の中では違う。
明らかに怯えていた。
何かを思い出しているようだった。
俺のいた世界は終わった。
終わったんだ。
……そこで映像が一度完全に途切れる。
以降のファイルは別番号として保存されていた。
調査記録によれば、 ここから先は一般公開されていない。
理由は不明。
しかし復旧された内容を確認した結果、
本稿では無視できないと判断した。
なぜなら。
そこから語られていたのは、
失踪した探検家の冒険ではなく。
世界そのものの話だったからである。




