11
休日は一瞬で消化された。
二日間の記憶は、真空に置かれたメロンパンみたいに圧縮された。
家族団欒の時間は、ただ甘いだけのエンプティ・カロリーだった。
いつもなら幸せなのに、物足りないと感じた。
友人と会い、酒の力もあって、いつもと違う自分だったからかもしれない。
あるいは、夢の記憶。
非現実の消化不良で、胃がもたれていたのかもしれなかった。
明けて、月曜日。
「おはよ」
黒江が目つき悪く桜井を睨みながら、煙草をふかした。
「おはようございます」
朝の調子の悪さは、黒江の十八番だった。
「疲れたぁ」
「もうですか?」
「揉んで」
そう言って黒江は桜井の前に立った。
「あ、こっちか」
対面だったのを、後ろ向きに直る。
「今日は比較的元気ですね」
「カラ元気」
黒江は伸びをした。
「疲れてからが勝負ってね」
そこに幹島がやってきて、部内の人間を招集した。
なぜか桜井に向かって、鋭く睨みつけてきた。
***
幹島は同僚らを集めた部屋のドアをしっかり閉めて、全体に向けて話した。
内容はすぐに理解できるものではなかった。
頭がその話を拒絶しているようだった。
首が汚れていた同僚は、名前を鷺矢といった。
桜井は彼のことを名前で呼ぶことはついになかった。
幹島が話したことは三つ。
鷺矢が殺されたこと。
犯人は黒江の夫だったこと。
黒江が会社を退職すること。
言葉としては簡単なのに、とても難解な文章だった。




