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宍戸とは、互いに健闘を祈り、深酒はせずに別れた。
桜井はまだ体力を余していて、車で横になっても瞼を開けたままだった。
夜景が静かに流れていく。
「昔は、酒を飲んだら車に乗れなかったって、親父が言ってた」
『かつてはそうでした』
蒼月が相槌を打つ。
「馬鹿な話だよね」
『そうでしょうか?』
ため息を吐きながら桜井は言う。
「依存物質とか、それを我慢できなかった人間の欲望に、すべての罪をなすりつけようという魂胆がみえる」
鼻から抜ける呼気には、自分でもわかるほど酒の匂いがした。
「ケアレスミスが人の命を奪ってしまうという不条理からは、どうにかして目を背けたいんだ」
身体が空気よりも軽い物質で希釈されているような浮遊感を覚えた。
「それ自体が、正しくありたいという欲望」
『ケアレスミスが人間らしさです』
「高度な頭脳が、かつては人間のアイデンティティだったんだよ」
『欠陥は、自然界の生物である証明です』
「それ、誉めてないよ」
『神が造った証しです』
蒼月はきっぱりと言った。
「もしかして、首が人間につくられたって皮肉?」
桜井は冗談めかして顔を顰めた。
『首も、神も、人間がつくりました。人間は、不完全なものをつくるのが苦手なようです』
「自分の不完全さは棚にあげてね」
確かに笑える、と桜井は思った。
「神の子なのに、神をつくったなんて、卵と鶏だ」
『人は親の子です』
蒼月が真面目に言う。
桜井は声に出して笑った。
***
その晩、桜井は淫夢にうかされた。
とても抽象的な夢だったが、鮮烈で、生々しく、激しい快感を伴った。
身体が溶け合い、混ざり合う。
白く輝く温かな異物と絡み合った。
それは体内に侵入し、内側から身体を貪った。
咄嗟に、反発、拒絶、憎悪。
同時に、屈服、許容、溺愛。
あらゆる感覚はただ一点にのみ集中し、そこだけを光は包み込み、執拗に刺激した。
一瞬のような、永劫のような稲妻が走る。
頭からつま先まで全身を貫いて、すべてを引きずり出した。
最後に封するように唇は濡れーー。
心臓の収縮の強い痛みに、桜井は目を覚ました。
現実は真夜中だった。
静謐な寝室は真っ暗で、ただ荒い呼吸の音だけが響いた。
隣には娘と妻が寝ている。
どこからか、ほのかに煙草の匂いがした。




