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Telepath crisis  作者: 白昼夢
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3.意気地なし

意気地なし 【読み】 いくじなし 【名詞】


困難に挫けず立ち向かう気力がない人。意気地がない人。甲斐性なし、弱虫、腰抜け。


ユウ君。


誰かの国語辞典、可愛らしい丸文字で、最後に書き足されていた。



『意気地なし』  歌・歌詞 七瀬 深空


もっともっと 近い存在になりたい


そんなキミの心の声が 聞こえる


僕の事を好きでいてくれたら こんなに嬉しいことはないよ


そんなキミの心の声が 聞こえる


いつも一緒に居たり 隣で笑ったり


キミの事が大好きだからだよ? 


キミが私の事を想ってるくらい 私もキミの事想ってるよ


鈍感なキミはそんな事気づかない ねえどうしてなの?


どうしてこんなにも好きなのに キミは気づいてくれないの?


こんなにアピールしてるのに 照れ隠しばっかりなキミ


『この、意気地なし!』


心の中でそう叫ぶ私 意気地なしは私の方かな?




AM5:30


早朝、僕、坂本優は現在進行形でリア充してます。

ちゃんと説明しろ?…あ、えっとですね、今僕はみーちゃんの近くの公園まで朝のランニングに付き合ってるっていう状況です。

みーちゃんは中学からほぼ毎日朝のランニングを欠かさない、薦めたのは僕だ。

あ、一応言っとくけどやましい理由ではないよ、ずっと前からみーちゃんがアイドルを目指してるのは知ってたし、それが本気なのも知ってた。

で、中学1年の時だったかな、ふと、アイドルになるにはどうしたらいい?みたいな話題になって、まあ、僕はみーちゃん大好きだからね、結構一生懸命考えた。

結果なんだけど、やっぱり歌が上手いと都合がいいよねって、で、ランニングを薦めたんだ。

何でランニング?って思うかもしれないけど、歌うのに肺活量って結構重要な要素だと思うんだ、声量にも影響するしね。

完全に後付けなんだけど、適度な運動をすればスタイルもよくなるし、まあ割とアリなんじゃないかな?と進言してみたら採用されたってワケ。

で、まあ僕がランニングに付き合ってるのは、まあ薦めた張本人だし、薦めるだけ薦めてはい終わりってのもアレだし、確かに朝からランニングは辛いけどみーちゃんと一緒の時間を過ごせるし。

まあ、後は、少しでも僕が、”みーちゃんに釣り合う男”になりたいって所かな…。

だから僕もほぼ毎日欠かさず毎朝ランニングをしている、結果帰宅部だけど学校の長距離走でも結構上位に入ったりしてる。まあ、主だった成果はその程度ですが。

『ふぅー、ちょっと休憩しよっか?』

『うん、そうだね』

丁度公園に着いたところでみーちゃんがそう言う、僕も丁度休憩したかったので賛成した。まあ、僕がどうこうっていうよりみーちゃんからの申し出なら断る訳がないんだけどね。

『この時期になると、朝でも暑いねー』

『そうだね、走ってなくても汗ばんでくるよ』

季節は7月、梅雨もあけそろそろ夏本番といった所だ。まだ6時前だが公園のベンチで座ってるだけでも額に汗が滲む。

ふと僕は隣に座ってる天使様を見やる、今日も変わらず可愛らしい。

流行のブランドのTシャツらしき1枚、下はホットパンツ姿、おみ足が眩し過ぎます。Tシャツの色は白が基調、おしゃれな感じに英文が書いてある、もちろん読めない。

その白いTシャツから透けて見えるピンク色と思われるモノが僕の理性をフルブレイクしようとしている。そう…”透けブラ”である。

…いや違うんだ、故意じゃない、たしかにみーちゃんをまじまじと見てたけど…けど!間違ってもそれを期待してガン見してたわけでは…!意識したら視線がそこばかりに行ってしまう…とりあえず別の事に意識を集中させよう、そうだ!みーちゃんのふつくしいおみ足…。って、なんて僕は変態なんだ、氏ね、死ねじゃなくて氏ね僕。

『ユウ君、だいじょうぶ?』

自己嫌悪モードの僕の顔を覗き込むみーちゃん、その声でその様子に気づく僕、近いっす、顔、近いっす。

『だ、大丈夫だよ、ははは…』

『ほんとう?』

首を傾げ、まだそのままの体勢でいるみーちゃん、可愛い…、ほんのりみーちゃんの香水の匂いと汗の匂いが感じられて今から大丈夫じゃなくなりそうです。

『うん!大丈夫大丈夫!今からフルマラソンいけるよ!』

非常に残念だが立ち上がって自分から距離を取りそう言ってみる、あのままだとマジでなんか色々ヤバい気がした。

『あははっ、まあでもそろそろ戻ろうかっ、今から行けば丁度いい時間だと思うし』

『そうだね、心配かけてごめんね』

『いえいえっ』

そして自宅目指して走り出す僕とみーちゃん。


『とうちゃーく!』

『ふー、今日もお疲れ様でした』

今日はちょっと疲れたなあ、まだ暑さに体が慣れてないんだと思うけど。

『いつも付き合ってくれてありがとねっ、ユウ君』

『いえいえ』

朝から立て続けに僕の心を打ち抜いてくるみーちゃんの笑顔が眩しい。今日も一日頑張れそうである。


家に帰ると、とりあえず汗ばんだ服を脱ぎシャワーを浴びる、そしてマッハで制服に着替える。

ダイニングにいくと、既にご飯が用意されていた。母さんが先に食事を開始している。

父親はいない。あ、勘違いしないでね、別に死んだとか離婚したとかそういうわけじゃなくて、仕事の都合で家には居ないだけである。

まあ、そんなことはどうでもいいや、僕は母さんに『おはよう』と挨拶してそのまま用意されたご飯をかきこむ、朝ごはんに時間をかけない主義なのである。

そしてすぐに弁当作りに取り掛かる。今日はきっちり弁当を作る、今日は玉子焼きを少し多めに作っておこう。

『いってきまーす』

そのまま流れるように鞄を持ち玄関を出る。そしてみーちゃんの家の玄関の前でみーちゃんを待つのだ。

…しっかし朝のあれはまずい、ピンクのレースのついた物体が頭から離れない、努めてあんまし見ないようにして、実際合計6秒ほどしか見てないはずなのに鮮明に脳裏に焼きついている。

ピンクかぁ…うん、いいなぁ、みーちゃんのイメージにぴったし…。じゃなくて早くこの情報を脳内からデリートしないと…無理そう。

『…しもーし、ユウ君?』

『うわぁ!』

気づいたらみーちゃんが目の前に居て、僕の顔の前で手を左右に振っていた、どうやら僕はピンクの物体と一緒にあっちの世界に行ってたらしい。

『ご、ごめん、ぼーっとしてた』

『ああ、こっちこそおどかしちゃってごめんねっ、じゃあ、いこっか』

『うん』

言って、歩き出す僕とみーちゃん。


『ユウ君、最近疲れてる?』

登校中、突然そんなことをきいてくるみーちゃん。とりあえず理由を聞いてみる。

『ん、どうして?』

『最近なんかぼーっとしてること多いなあって、昨日も6限ほとんど寝てたし』

そういえばそうかなあ、突然眠りこけてちっちゃいおっさんが出てくる夢なんかみちゃう位だし。

『ああうん、なんだろ、バイト疲れかな?』

少し考えて、そう言う。僕は先月くらいから、近所のファーストフード店、ドナドナルドでアルバイトを始めたんだ、週2回だけど、やっぱ慣れない事をするのは疲れるしね。

『そっかぁー、あんまり無理しないでね』

『心配してくれてありがと、まあでも慣れない事してちょっと疲れたくらいだと思うから、心配ないよ』

心配かけてしまったのか、申し訳ないなぁと思いつつも、みーちゃんが自分の事を心配してくれる事を嬉しく思った。まあでもあんまし一緒にいるときにぼーっとして話聞いてなかったりするのは失礼だし、ちょっと気をつけなきゃな。



『はい、じゃあ今日はここまで、はい号令』

『起立』

『礼』

『ありがとうございました』

ふう、ようやく鬼門の4時限目が終わった。いつも思うけど4限の辛さは異常な気がする。

『今日はどうする?学食いく?』

『あ、いや、僕は大丈夫かな、今日はゆっくり作る時間あったし、みーちゃんが行きたいなら一緒についてくけど』

今日は玉子焼き以外もちゃんと作ってきたからなあ、それにあんまり買って食べてるとすぐお小遣いが尽きるからね。

『ん、私は大丈夫かなぁ、じゃあ直接屋上いこっかっ』

頷き、いつもの場所に向かう。


屋上につく、今日もまた誰も居ない。

いつもの場所に腰掛け、弁当を取り出してると、誰かがやってきた、蓮だった。

『おーっす、ちょっと学食いってた』

『レン君やっほー、うわー、それすごい量だねー』

『うーい』

焼きそばパンその他色々が詰められた袋を片手に蓮がやってきた。それを一食で食べるのか。

中学の時は柔道部で全国大会などに出ていた蓮は体がでかい、たぶん身長も180cm後半はあるんじゃないかと思うほど高い。

中学の時に足を痛めて、今は部活動はやってない、僕と一緒で帰宅部だ。

まあ、そんな奴だから、その食事量も頷ける。

~♪

僕の携帯が鳴る、着うたは七瀬深空の”意気地なし”みーちゃんのデビュー曲である。

メールだった、内容は…


From:ありす

件名:無し

本文:今日は委員の仕事があるから屋上には行きません。まあ、どーせ深空さんとイチャイチャしてるだろうから別にいいんでしょうけどねー(`ヘ´#)


差出人はありすだった、わざわざこんなこと報告しなくてもいいのにと思いつつ、とりあえず適当に返信を打つ。

『お、七瀬がいるのに他の女に浮気か優』

『ちげーよ、ありすだよ、今日はなんか委員会の仕事かなんかでこっち来ないって』

速攻で否定する、んな訳あるか。

『そっかー、ありすちゃん、今日は来ないのねー、とゆうか友達が私の歌を着うたにしてるのって、なんかちょっと恥ずかしいね』

そういって照れ笑いを浮かべるみーちゃん、可愛いなあ。しかしそれを本人に指摘されるのもなんかすごい恥ずかしいです。

僕はこの曲が好きだ、歌詞の内容は、両想いの男女のすれ違いとかを歌った物である、特徴的なのは、歌の中の彼女に心を読む力があるっていう設定があって、男の方の気持ちに気づいてるんだけど、中々素直になれずにそれ以上踏み込めない、みたいな。

歌のタイトルは、お互い好き同士なのに踏み込めないでいる男女への言葉なのだろうと思う。

そんな不器用な男女の恋模様を歌ったこの曲が、実体験のように妙にリアルで、特に若い層に共感を得て大ヒットしたって訳。

この曲を聴いてると、僕とみーちゃんも、こうだったらなあ…なんて思ってしまう。まぁ…ないか。

『あはは、でもみーちゃんの歌の中で、僕はこの曲が一番好きだなあ』

『あれだろ、ユウが七瀬と歌の男女みたいな関係だったらいいなーとか思ってるんだろ』

焼きそばパンを頬張りながら、意地悪くそう言う蓮。黙れエスパー野郎、大正解だよ畜生。

あははと笑うみーちゃんの横顔を見る、ホントに両想いだったらどれだけ幸せな事か…。

正直ちょっと恥ずかしい感じになってきたので、別の話題を振ってみる。

『ああ、そういえばさ、昨日ちっちゃいおっさん見たよ』

昨日の妙にリアルな夢の話をしてみる。ある意味予想通りの返答が返ってきた。

『ユウ、お前大丈夫か?バイトのし過ぎで疲れてるんじゃないか?』

『そんなにシフトいれてねえよ、週2だし、でおっさんがなんか訳わかんない事いってしばらくして目がさめた』

笑いながら蓮が言う、僕は否定し話を続ける。

『ちっちゃいおじさんかあ、ねえ、何て言ってたの?』

みーちゃんが興味あるのか聞いてくる。イマイチ訳わかんない単語も出てきてちゃんと覚えてるか分からないけど思い出しながら言う。

『えーっと…神になりそびれたてれぱす?よ、おまえは大事な物を失ってしぬだろう、とか未来を変えたいなら一刻も早く力に目覚めよみたいな、そんな感じ、ちっちゃいおっさんがそんな事言うなんて、シュールじゃね?』

笑って言ってみたが、何故か二人は黙りこくってしまった。…あれ?僕二人にやばい奴認定された?ですよねー。

『あ、ゆ、夢の話だよ、真に受けないでね』

急いで取り繕う、蓮はともかくみーちゃんにまで変な奴だとは思われたくないし。

『あはは、分かってるよ、それにしても変な夢だねー』

『やっぱ疲れてるんじゃね?大丈夫かよ、ははっ』

そういって笑う二人、そうかもと苦笑いを浮かべ返す僕、とりあえず変な空気はどっかに行ってくれたようだ。空気が読めないって辛い。

『あ、ちょっと寄る所あるから先に教室戻ってるね、また後でー』

そういってみーちゃんは先に席を経つ。

『ん?わかったー、また後でね』

『んじゃなー七瀬、また後で』

なんだろ、お手洗いかな?まあいいや。


『ユウ君…超力会話者なんて、何処で聞いたんだろう…』

屋上から下の階へ降りる階段の途中、深空は小さく呟いた。


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