19の13
カラコロカラン
住岡楓が入ってきた。
橘がこっちこっち!とソファへと手招きをして、
ソファへと座った。
「楓ちゃん。とりあえず、わかったことの報告をするね」
「は、はい…。お願いします」
「うん。奇跡の子は影宮恭次朗って名前だったんよ」
「影宮…恭次朗さん…」
「そう。んでね…影宮恭次朗がいる村を見つけることが出来たんだけど…その村は火災でなくなっちゃってさ…村の人達も全員亡くなってるみたいなんよ…。正確に身元が判明したわけじゃないんだけど…影宮恭次朗も亡くなってる可能性が高いんよね…。これ以上は調べることが難しいと思ってさ…」
「そう…だったんですね」
住岡楓は涙を堪えながら話を聞いている。
「ごめんね!ここまでしか調べることが出来なくてさ!一応、色々と頑張ってみたんだけど…」
「い、いえ…。名前が知れて…よかったです」
住岡楓の頬から涙が溢れた。
橘は住岡楓隣に座り肩を優しく撫でながら、
泣き止むのを待っている。
「も、もう…大丈夫です」
「…そっか」
「は、はい!あの…本当にありがとうございました」
「いや、俺らができることをやっただけだからさ!」
「おじいちゃんにも伝えなきゃ…」
「そうやね…」
「あ、あの…ご迷惑じゃなければ、おじいちゃんに会ってもらえませんか?」
「え?大丈夫なん?」
「はい!もちろんです!おじいちゃんには神影さんと橘さんが調べてくれてるって話はしてありますので…おじいちゃんからもお礼が言いたいって言っていたんです…ですから…その…」
「もちろん!大丈夫だよ!なぁ、リンちゃんもいいよな?」
「…そうだな」
「あ、ありがとうございます!」
後日、住岡楓と一緒に住岡楓の祖父、
住岡弘に会いに行った。
病院に入院しているらしく、
病室のベッドに座っていた。
「私が楓の祖父で住岡弘です。神影さんと橘さんには色々と楓がお世話になりまして…ありがとうございます」
「いいんすよ!気にしちゃダメっすよ!」
「ありがとう」
住岡弘は笑顔でそう言った。
橘と住岡楓から奇跡の子、影宮恭次朗について話をして、そうでしたか…と住岡弘は呟いた。
「うん。だから、直接お礼をすることはできなかったけど、名前を知ることができてよかった!私、影宮さんのことは絶対に忘れないんだ!ずっと心の中で感謝するの!」
「そうだな…。奇跡の子に…感謝しないといけないな…」
「うん!感謝の気持ちを忘れない!」
住岡楓と住岡弘は笑顔で話している。
「楓…お茶を買ってきてくれないか?」
「え?お茶?」
「ちょっと、喉が乾いてな…」
「うん!わかった!ちょっと待っててね!」
「あっ!俺も行くよ!」
「橘さん!ありがとう!」
橘と住岡楓はお茶を買いに病室から出て行った。
「神影さん…本当にありがとうございました」
「…いえ、お気になさらないでください」
「私の話を…聞いてくださりますか?」
僕は何も言わずに住岡弘をただ見つめていた。
「楓は不治の病で毎日死にそうなぐらい酷い状態でした…可愛い孫娘が良くなるなら、悪魔にでも魂を売ってやるって考えていたんですよ…。その時に奇跡の子の話を聞いて…私は奇跡の子に頼ったんです…本当に楓は元気になって、嬉しくて嬉しくて…感謝してもしきれないほどに…」
「…そうですか」
「でも、それとは別に違う感情もあるんです…。楓には話していませんが…」
住岡弘は手を強く握りしめながら話している。
「私は楓と同じぐらいの小さな少年を傷つけたんです…。楓の手にナイフを持たせて、その手を握って…何度も何度も…あの時の感触が今でも忘れられなくて…楓が治って感謝の気持ちもあるんですが…申し訳なくて、申し訳なくて…あの少年にいったい私は何てことをしてしまったんだろう…今でもそれが忘れられないんです…だから、どうしても会って…感謝と謝罪をしたかった…」
「…そうでしたか」
「神影さん…本当に申し訳ありませんでした」
「…どうして僕に謝るのでしょうか?」
住岡弘は何も言わずにただ頭を下げている。
「…住岡さんが謝りたい方は影宮恭次朗さんです。僕ではありませんよ」
「そう…ですよね。それでも…申し訳ありませんでした。本当に、本当に…ありがとうございました」
「…もう一度言いますが、僕ではありませんよ。ですが、こうして楓さんも元気に暮らしていて、よかったのではありませんか?」
「そう…ですね」
「影宮恭次朗さんの気持ちなんて…僕にはわかりませんが…。もしも僕がその立場だったのなら…そう言うかもしれません」
「…ありがとうございます…ありがとうございます」
病室のドアが開き、橘と住岡楓が戻ってきた。
「あれ?おじいちゃんどうしたの?」
「あぁ…神影さんにお礼を言ってたんだよ。楓もちゃんとお礼をしなくちゃいけないよ。このご恩を忘れちゃいけないよ」
「うん!わかってるよ!神影さんと橘さんには本当にお世話になったんだから!」
「そうかそうか…。うんうん…それならいいんだ」
「おじいちゃんどうしたの?」
「ああ、何でもないよ。神影さん…橘さん、本当に本当にありがとうございました」
「私からも!神影さん!橘さん!私の為に…私とおじいちゃんの為に調べてくれて、本当にありがとうございました!」
「いいっていいって!困った時はいつでもきてよ!リンちゃんがコーヒーぐらいなら出すからさ!な?」
「…コーヒーだけですよ」
「はい!ありがとうございます!じゃあ、またコーヒーをいただきに行きますね!」
「おうよ!待ってるからさ!弘さんも体調が良くなったら、楓ちゃんと一緒にきてよ!俺ら待ってるからさ!」
「はい…。楓と一緒に行かせていただきますね」
「…お待ちしています」
じゃあ、俺らは行くからさ!と橘が言って、
手を振りながら病室から出た。
「いいおじいちゃんだったな〜」
「…そうだな」
病院を出て、橘の車に乗り事務所へと帰る。
「…でもさ、結局のとこ、わからんことばっかりだったよな〜。何で火災があったのかとかさ〜」
「…そうだな」
「何で燃えたんだろ?多分、奇跡の子を巡ってのって噂は本当だったとしてさ…火災になるんかね?森田さんだけ村の中で亡くなってるのも気になるんよね〜」
僕は外の風景を見ながら、
あの村の火災は…と呟いた。
「森田さんがしたんだろうな」
これにて第十九章完結です。
大切な皆さまのお時間を、
この作品を読むためにお使いいただき、
ありがとうございます。
ブックマーク登録していただき、
本当にありがとうございます。
また、評価ポイントをつけていただき、
本当にありがとうございます。
☆5で評価してくださった方々、
とても嬉しく思います。
次回で最終章となりますが、
あなたのおかげでここまで書くことができました。
本当にありがとうございます。
最後まで優しい気持ちで、
見守ってくださると嬉しく思います。
お楽しみいただければ幸いです。




