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カラコロカラン


「…そうです。…はい…お願いします」

「電話してたの?」


丸山順子に奇跡の子について話をして、

調べてもらえるようにお願いしたところだ。

通話を切ったタイミングで、

柚葉さんが僕に聞きながらカウンターに座った。


「…そうですね」

「お仕事のお話かしら?」


僕は返事を返さずに、コーヒーを淹れる。


「鈴も大変ね。誰か探してるって言ってたかしら?」

「…そうですね」

「どんな人を探してるのかしら?」

「…個人情報ですので」

「あら、それもそうね〜」


そう言った後にふへーーーっとした感じで、

両手を伸ばしながらカウンターに突っ伏した。


「…柚葉さんもお仕事だったんですか?」

「そうなのよ〜。やっぱり、肩が凝っちゃうのよね〜」

「…それなら服装にこだわる必要もないんじゃないですか?」

「そういう訳にもいかないでしょ?私に依頼してる人がちゃんと信じてくれて、しっかりとお仕事しないと不安に思っちゃうかもしれないじゃない?」

「…柚葉さんは服装にこだわらなくても、しっかりとお仕事をされるのではないかと思いまして…不思議なことがあった時に何度もお願いしていましたので…」

「そうね〜。鈴みたいに思ってもらえたらいいけど、初めて私を見た人が信じてくれるかなんてわからないわよ?私じゃない人がその人の悩みを解決できるならいいけれど、もしも私の服装でその人の悩みが早く解決できるのなら、肩ぐらいどうだっていいわよ」

「…柚葉さんがそう言われるのなら…そうなのかもしれませんね」


僕はタバコに火を灯してから、そう答えた。

コーヒーを二つ入れ、カウンターに一つ置く。


「ありがと〜」


柚葉さんはそう言って、両手でカップを持って

フーフーと息を吹きかけてからコーヒーを飲んだ。


「ねぇ、鈴…私に話があるんじゃないの?」

「…どうしてそう思われるのですか?」

「顔に書いてあるわよ。悩みがありますって」


天井に煙を吐き出してから答えた。


「…顔に言葉が書いてあることはありませんよ」

「そうかしら?目は口ほどに物を言うって言葉もあるぐらいよ?顔に言葉が書いてあることもあるかもしれないわ」

「…それは柚葉さんの主観で見た顔ですから、そう思われてもかまいませんが…それで心の中を察することができると思い込むのはいかがなものでしょうか?」

「そうね〜。鈴の言う通りね〜。思い込むことは良くないかも知れないわね〜…でも、些細なことだけでも…本人も気付いてあげられていない気持ちを気付いてあげることができるかも知れないわ?」

「…そうですね」


コーヒーを一口飲み、天井に煙を吐き出した。


「恭子さんのことかしら?」

「…誰のことですか?」

「鈴もわかっているんでしょう?それとも、名前は本当に知らなかったのかしら?」


僕は何も言わず、柚葉さんの顔を見つめた。

コーヒーカップを両手で持ちながら、

僕の顔を上目遣いで見つめている。


「…そう。本当に知らなかったのね」

「…その名前に聞き覚えはありませんね」

「そうだったね…。名前は知っているのかと思っていたわ。鈴の母親だったのかしら?」

「…どうですかね」

「そう…。ごめんなさい。私には名前しか聞くことができなかったわ…。何も話してくれないの…ただ微笑んでいるだけ…」

「…そうですか。教えてくれて…ありがとうございます」

「ううん。少しでも鈴の為になったならよかったわ…」


僕は新しいタバコに火を灯し、コーヒーを一口飲む。


「私でよかったら、いつでも話は聞くわよ?」

「…ありがとうございます」

「…それだけは覚えていてね」

「…わかりました」

「約束よ?」


僕は何も言わず、天井に煙を吐き出した。


「鈴、約束して。約束したら覚えているでしょ?」

「…約束しなくても覚えていますよ」

「それでも私の為に約束して」


柚葉さんは真剣な表情で僕を見つめている。

僕はゆらゆらと天井に上がっていく煙を見ながら、

わかりました…と呟いた。

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