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丸山順子は住岡楓から話を聞いてから尋ねた。
「そうだったのね…奇跡の子は男の子だったと…。他に覚えていることはないかしら?」
「そうですね…。痛くて…苦しくて…記憶も微かにしか覚えてないので…スーッと身体が楽になって…痛みも苦しみも消えて…男の子が立っていて…そうだ!確か…鈴の子って言われていたような…」
「鈴の子?奇跡の子じゃないん?」
「そ、そうですよね…。でも、確かにそう呼ばれていたような気がするんですよね…」
「そうだったのね。その子が奇跡の子で間違いないと思うわ」
「え?そうなん?」
「ええ。奇跡の子は元々、鈴の子って呼ばれていたらしいの…。でも、それから救われた人達が奇跡だって言ったことから奇跡の子として噂されているみたいなのよね…」
「じゃあ、やっぱり実在してる人だったんだな!」
「そうね…」
「どうかしたん?」
丸山順子は悩ましい表情をしている。
「今まで私が調べたことでの推測になるんだけど…今までは実際に救われた人も見つけられなくてね…。その村、特有の児童虐待じゃないかと思ってたのよ…」
「児童虐待?え?ごめん。話が見えないんだけど…」
「…橘…僕が話した都市伝説は覚えているか…」
「ああ、なんか傷がすぐ治って、傷つけて自分の不幸とかを一緒に浄化してもらう〜とかなんとか…」
「その話は聞いたことあったのね…」
「え?じゃあ、実際にそれが行われていたってこと?」
「可能性があるってだけなんだけどね…」
「ま、マジかよ…」
「奇跡の子の話には色々あるのよ。きっと話に尾ひれがついて噂されていたんだと思う。どんな怪我や病気を治してくれるって話もあれば、不幸や業を浄化してくれるって話もあって、不思議な力で誰かを救うって言うところだけは一致してるから、そういう不思議な力を持っている人だったのかもしれないとは思っていたんだけど…。どの話でも奇跡の子を傷つけることで不思議な力が与えられるって感じなのよね…。ナイフで切ったり、毒を飲ませたりとかね」
「それってさ…めっちゃ残酷だな…」
「そうよね…。だから、今までは不思議な力があるからって児童虐待を正当化する為の話だったんじゃないかって思ってたの…。でも、実際に救われた人がこうしているのなら…考え直さないといけないわね」
「…あ、あの…それじゃ、私…あの時に…」
「それは…わからないわ。可能性はあるかもしれないけど…。そういう話をよく聞くってだけで、奇跡の子を傷つけない話もないわけじゃないの」
「…そうなんですね。私はあまり覚えていませんが…そういうことをしたとは思えなくて…」
「…そうよね。実際にどの話が本当でどの話が嘘なのかはわからないのよ…」
丸山順子も住岡楓も黙ってしまった。
僕は天井に煙を吐き出してからこう言った。
「…現状、わかっていることを整理しましょうか」
「確かに…そうね」
「楓ちゃんの病気が治ったのはホントじゃん?だから、病気が治るってのと奇跡の子がいたってのはホントかね?」
「うん。その可能性は高いと思う」
「んで、傷つけたかどうかってのはまだわかんない状況ってことでさ…んー?結局何も進展してない感じ?」
「私にとっては実際に救われた人がいたから、実在した可能性がより高くなったって思うけど…」
「どこにいるのかまではわからんよね〜…」
「…丸山さんは他に知っていることはありませんか?住岡さんを奇跡の子に会わせたお祖父様はどこかまでは詳しくは覚えていないそうですが、小さな村だったとおっしゃっているそうなのですが」
「それなら私も聞いたことあるわ。でも、どこの村なのかまではわからないの…小さな村って言ったって、どこにあるのか…今もあるのかなんてわからないもの…」
「…そうですか」
「うん…。そういえば!」
丸山順子は何かを思い出したかのように、
鞄からノートを取り出した。
「それはなんなん?」
「色々と調べてたら、わかんなくなっちゃうでしょ?だから、ノートに聞いた話をまとめてるのよ!奇跡の子なんていないって思ってたから、今までは気にしてなかったけど…」
そう言って、ノートをペラペラとめくっている。
「あった!…そうよ。奇跡の子がいた村は燃えてなくなったって話もあったわ!」
「そうなん!?」
「もし奇跡の子が本当にいたのなら、大きな火災があった村に絞れるかもしれないわ!」
「うぉー!ちょっとは進展したじゃん!丸山さんってすごいのな!やるじゃん!」
「…それなら火災に巻き込まれて、亡くなられている可能性もあるかもしれませんが…調べる価値はありそうですね」
「だな!丸山さんありがとな!」
「いいのよ!そのかわり、わかったことがあったら教えなさいよ!」
「…わかりました。ありがとうございます」
住岡楓もありがとうございますと丸山順子に感謝を伝えている。橘はうし!調べっか!と気合を入れ直している。
丸山順子は何かわかったら連絡してね!と言ってから、立ち去っていった。




