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「奇跡の子を探して欲しいんです」

「奇跡の子?なんなんそれ?リンちゃん聞いたことある?」

「…一度だけ、聞いたことがある気がするな」


そうなんだと橘は相槌を打っているが、

頭の上にはハテナマークが見えるようだ。


「えっと、その奇跡の子ってなんなん?」

「そ、そうですよね…奇跡の子はどんな病気でも治してくれる不思議な力を持っている男の子だったんです」

「え?そうなん?なんか詐欺かなんかかと思ったわ」

「詐欺なんかじゃありません!」


彼女は強く否定した。


「ご、ごめんなさい。でも、奇跡の子は本当にいたんです」

「そ、そうなんだ…。なんか都市伝説とかそういう感じでもないん?」

「はい、違います」

「…僕が聞いた話では、奇跡の子はどんな傷も次の日には綺麗に治ってしまい、奇跡の子を傷つければ、傷つけた人の不幸や業を吸い取って、傷と一緒に浄化してくれると聞きましたが…貴女の話とは少し違いますね」

「わ、私は…どんな病気でも治してくれるって聞きました」

「…そうですか」

「てか、リンちゃんそんな話聞いたことあるん?なんかヤバめな話じゃね?なんなんそれ?」

「…都市伝説らしいよ」

「うわぁー、そんな話があるんやね…」


橘は都市伝説ってめっちゃ怖いやんと呟いた。


「てかさ!奇跡の子だっけ?なんでその子を探してるん?」

「あの…それは…」

「なんか病気になっちゃったん?それならさ!病院に行った方がいいんじゃね?」

「ち、違うんです!あの…その…」

「…先程、不思議な力を持っている男の子だったとおっしゃっていましたね。…実際に会われたことがあるのですか?」

「え?リンちゃんどゆこと?」

「…奇跡の子の話は聞いたことあるが、男性なのか女性なのかまでは話にはなかった。でも、彼女は男の子だったと言ったんだ…実際に会われたことがあるのですね?」


僕がそう尋ねると、彼女は話しはじめた。

彼女の名前は住岡楓。

子供の頃に不治の病にかかっていたらしい。

毎日、苦しい思いをしていたそうだ。

ある日、祖父が奇跡の子の話を聞き、

彼女をつれて会いに行った。

そして、病気が治った。


「祖父からも両親からも奇跡の子のおかげだって、楓を救ってくれたのは奇跡の子なんだよって…ずっと、聞いてきました。私も毎日苦しくて痛くて…耐えられないような日々を過ごしていたのを覚えています。でも、その時は知らなかったけど、男の子に会って…スーッと痛みも苦しみも無くなったのを覚えているんです!記憶は微かにしか覚えていませんが、たしかに男の子でした!私より少し年上の男の子だったんです!」

「そう…だったんやね」


橘は少しウルウルしながら話を聞いている。


「でも、私はありがとうって言うことができませんでした。男の子を見たのは微かに覚えていますが…気付いた時にはもうお家に帰っていて…。祖父からも両親からも奇跡の子のおかげで救ってもらったって、ずっと聞いていたのに…その時、私は感謝の気持ちを伝えることができていないんです。だから、どうしてもまた会って、ありがとうって感謝の気持ちを伝えたくて…だから、その…奇跡の子を探してもらえませんか?」

「うん!うん!そうだよな!ありがとうって言いたいよな!俺さ!頑張って探すよ!リンちゃん!いいよな?」


橘は今にも泣きそうな表情で僕に聞いてきた。


「…どうやって探すんだ?」

「え?どうやってってさ!なんとかしてさ!」

「…探すにしても情報が足りなすぎる。奇跡の子が住岡さんの病気を治したとして…実際にいたと過程して、どうやって探すんだ?奇跡の子を探すなんて、妖怪を探して欲しいと言われているのと一緒じゃないか…」

「いや!でもさ!男の子だったってわかってんじゃん!楓ちゃんよりちょい年上のさ!奇跡の子かもしれない男性を探したらいいわけじゃん!妖怪とは違くて、実際にいたわけじゃん!」

「…実際にいたとして、それをどうやって探すのかを僕は聞いてるんだよ」

「いや、それはさ…なんとかできんかな…」

「…住岡さんのお祖父様にお話を聞くことはできませんか?」

「私も祖父に…おじいちゃんに聞いてみたんですけど…奇跡の子と会った場所は詳しくは覚えていないみたいで…どこか小さな村だったとは聞きましたが…。でも、もう一度会って話がしたいっておじいちゃんも言ってるんです!だから、どうしても会って話がしたくて…」

「…そうですか」


僕はコーヒーを一口飲み、住岡楓に話しかけた。


「…正直な話、奇跡の子を探すことは難しいと思います」

「ちょっ!リンちゃん!」

「わ、わかってます…やっぱり、無理なんですよね…」

「…そうですね。情報が足りなすぎます。奇跡の子が本当にいたのかも定かではありません。住岡さんがお会いした男の子が本当に奇跡の子だったのかもわかりません。そして、どこで会ったのかもわからない…それでは見つけることは難しいと思います。難しいとは思いますが…それでも探しますか?」

「わ、私は会って、感謝を伝えたいんです!」

「…そうですか。見つけられない可能性が高いとお考えください。…それでも、よろしければ…探してみましょう」

「い、いいんですか…?」

「リンちゃん!」

「…見つけられない可能性が高いですが、全力で調べてみますよ」

「あ、ありがとうございます!お願いします!」

「よっしゃ!キター!」

「…それじゃ、橘…頼めるか?」

「OK OKまかせんしゃい!」


そう言って、橘は生き生きと調べに行った。

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