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シャワーを上がったら橘が起きたようだ。
「…起こしたか?」
「いや、大丈夫よ。もう朝なん?」
「…そうだな」
「今日は帰る日だもんな〜。準備しなきゃだね」
橘はそう言って、起き上がり荷物をまとめはじめた。
「今日までお世話になりました!」
「いえ!こちらこそご利用いただき、ありがとうございます。撮影は順調に済みましたでしょうか?」
「そうですね。無事に終えることができました」
「それはよかったです」
「本当にありがとうございました」
「いえいえ!またのご利用お待ちしております」
高須史華と佐伯雄星は笑顔で話している。
みんなは荷物を持って、次々とホテルから出て行く。
「鈴は行かないの?」
「…申し訳ありません。少しだけ話してきてもいいですか?」
「んー?リンちゃんどうしたん?」
「…悪い、先に行っててくれ」
「わかったけど…ちゃんと来てよ?船の時間に遅れたら帰れないかんね?」
「…わかってるよ」
橘達は先にホテルを出て行った。
僕は佐伯雄星に近づき、話しかける。
「…申し訳ありません。佐伯さんに少しだけお話しがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい?どうかされましたか?」
「…お祖父様からお話しをお聞きしました。佐伯さんご自身からもお話をされた方がよろしいのではないですか?」
「…どういうことでしょうか?」
佐伯雄星は笑顔で尋ねている。
「…お祖父様はお役目を果たすことができずに、佐伯家は終わりだとおっしゃっていました。佐伯さん…あなたがお役目を果たされたのですよね?」
「…申し訳ありません。おっしゃっている意味がわからないのですが?」
「…あの絵に描かれている方の最期を見届けたのはあなたです。佐伯家の人間として、お役目をきちんと果たされたこと…お祖父様にお話された方がよろしいと思いますよ」
「…神影さんがおっしゃっていることはよくわかりませんが…祖父とはちゃんと話をしますよ。佐伯家は問題ありませんので」
「…そうですか」
「神影さん。またのご利用、お待ちしております」
彼は最後まで笑顔を崩すことはなかった。
僕はホテルを出て、橘達と合流し船に乗る。
「う〜ん!いい旅行だったね〜!」
「ミサ達はお仕事だったけどね!」
「あっ!そうやったね!」
「橘さんにも手伝ってもらったじゃないですか!」
「そういう細かいことはいいのよ!ミサはお姉様と一緒に来られてよかった〜!」
「あら?ミサちゃんは嬉しいことを言ってくれるのね」
柚葉さんは黒川美沙の頭を撫でている。
「やっぱり、海キレイだね!栞!」
「うん!中から見てもキレイだね!」
雨宮栞と真島彩花も海を見て嬉しそうにしている。
「リンちゃん…来てよかったっしょ?」
「…そうだな」
「んー?微妙な返事じゃね?」
変なシステムで面倒なことがあったからなとは、
橘には話さずに、そうだなと返事を返した。
「てかさ!結局、吸血鬼なんていなかったじゃん!やっぱり嘘だったんだな!」
「…どうかな?」
「えっ!?そうだなじゃないん?リンちゃんにそう言われたらなんか意味深に聞こえるんだけどっ!?」
橘は相変わらずのハイテンションのようで、
僕はため息をついてから、
佐伯さんは…と冗談っぽく呟いた。
「吸血鬼だったかもしれないよ?」
これにて第十八章完結です。
大切な皆さまのお時間を、
この作品を読むためにお使いいただき、
ありがとうございます。
そろそろ終わりに近づいていきますが、
優しい気持ちで見守ってくださると嬉しく思います。
今後とも、お楽しみいただければ幸いです。




