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「ここがホテルか〜」


橘から真島彩花が話していた噂話を聞いている。

だからだろうか、橘はホテルを見て、

ちょっとだけビビっているように感じた。


「…大丈夫か?」

「え?お、おうよ!大丈夫に決まってんじゃん!行こうぜ!」


僕たちは荷物を持って、趣のあるホテルの中へと入った。

ホテルは昔ながらの洋館ではあるようだが、綺麗だった。

中に入ってすぐ目の前には大きな階段があり、エントランスも広くインテリアも洋風な物が置かれている。橘は綺麗な様子を見て、安心したようだ。

高須史華が受付でチェックインを済ませる。


「当ホテルをご利用いただき、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ撮影までさせていただいて、ありがとうございます」

「こちらとしましても、ここを撮影場所に選んでいただけて嬉しく思いますよ」

「そう言っていただけるなら、よかったです。よろしくお願いいたします」

「こちらこそお願いします。お部屋へご案内しますね」


そう言って、受付の方が部屋へと案内してくれた。

大きな階段を上がると吹き抜けに大きな絵が飾られていた。椅子に座っている女性の絵だ。肖像画だろうか?


「…こちらの絵は?」

「ああ、この絵ですか…昔からずっと飾られているんですよ。私もこの方のことは知らないのですが、先祖代々、大切に飾っている絵ですので、今でも大切にしているんです」

「…そうなのですね」


二階へと上がり、部屋まで案内してもらった。


「こちらのお部屋になりますので、何かありましたらお声かけください」

「わかりました。ありがとうございます」


受付の方は、では失礼しますと言って立ち去っていった。


「とりあえず、荷物を置きましょうか」

「そうやね〜」

「橘さんと神影さんはそちらのお部屋をお使いください。私たちは隣の部屋になりますので」

「OK!わかったよ!んじゃ、また後で〜!」

「はい!」


女性達は部屋の中へと入って行った。

僕は橘の後に続き、部屋の中へと入る。

広いな…部屋の中は二人で泊まるには、

大きすぎる部屋だった。

きっと、女性達も同じような部屋になっているのだろう。これなら五人で一部屋に泊まることも可能だなと思った。


「めっちゃ広くね?」

「…そうだな」

「なんかさ!ちょいとビビってたけどさ!めっちゃ綺麗で、こんなに広い部屋に泊まれるとは思ってなかったわ!」

「…そうだな」

「リンちゃんは今からどうするん?」

「…そうだな」


僕はタバコが吸える場所はないか、確認しに行こうかな?


「…橘はどうするんだ?」

「う〜ん。とりあえず、史華ちゃんにこの後の予定を聞いとかなきゃいけんかなって思ってるけど…」

「…そうか」

「リンちゃんはタバコ?」

「…そうだな」

「だと思った!史華ちゃん達には話しとくから、行ってきてもいいよ」

「…わかった」

「おうよ!じゃあ、いってら〜」


僕は部屋を出て階段を降りる。

大きな絵が目に止まり、吹き抜けで立ち止まって絵を見ていると声をかけられた。


「この絵が気になるか?」


声がした方を見ると、

お爺さんが階段から声をかけているようだ。


「…そうですね」

「綺麗なお方だろう?」

「…そうですね。先祖代々大切にしている絵だとお聞きしましたが、時代を感じさせない美しい絵だと思います」

「そうだろうそうだろう。このお方はな。ワシら佐伯家にとって大切なお方なのじゃ」

「…そうなのですか?」

「そうじゃ。このお方のおかげでワシら佐伯家があるのじゃ」

「…この方をご存じなのですか?」

「ちょっと爺ちゃん!」


さっきの受付の人が階段を上がりながら、

お爺さんに声をかけた。


「お客様に迷惑をかけちゃ駄目だろ!申し訳ありません」

「…いえ、少しお話をしていただけですよ」

「そうですか…。爺ちゃん!ご飯の時間はまだだから、部屋で寝てなきゃ駄目だろ?」

「雄星は心配しすぎじゃ!全く…」


お爺さんはブツブツと話しているが、

雄星と呼ばれた受付の方が申し訳ありませんと言って、

お爺さんを部屋まで連れて行ったようだ。

僕はまた絵を見ていた。

お爺さんはこの絵に描かれている人を知っているのだろうか?知っていたとして、なぜそれを聞こうと思ったのだろう…

そう考えていると、声をかけられた。

お爺さんを部屋まで連れていって、

戻ってきたのだろう。


「お客様、祖父が申し訳ありませんでした」

「…いえ、お気になさらないで下さい。僕も興味深いお話が聞けてよかったですよ」

「そう言っていただければよかったです。前にお客様に対して、失礼なことをしたことがありましたので…何かご迷惑をおかけしていたらと思いまして…」

「…そうでしたか」

「はい…。それで、どうかされたんですか?」

「…申し訳ありません。喫煙所はございますか?」

「ああ!喫煙者の方だったんですね!これは申し訳ありません!灰皿をご用意しますので、お部屋のベランダでお吸いになられてもかまいませんが…」

「…そうなんですね。他にもタバコを吸える場所はございますか?」

「入口を出て、すぐに喫煙所もございますが…ご案内いたしましょうか?」

「…お願いします」


わかりました!と受付の方が笑顔で対応してくれた。

受付の方の後に続きながら、僕は話しかけた。


「…申し訳ありません。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

「私は佐伯雄星と申します」

「…佐伯さんですか。先程のお祖父様のお名前もお聞きしたいのですが…」

「祖父の名前ですか?」

「…はい。佐伯さんにはご迷惑かも知れませんが…お祖父様のお話は大変興味がありましたので、機会があればお話をお聞きしたいと思いまして…」

「…お客様は珍しい方ですね」

「…そうでしょうか?」

「はい。私にとっては大切な祖父ですが、お客様には気味が悪いと言われることが多くて…昔は接客もしてもらっていたのですが…今では私だけするようにしているのです」

「…そうだったのですね」

「お客様さえよろしければ、祖父の話し相手になってもらえたらありがたいです」

「…ありがとうございます。機会がありましたら、お話させていただきますね」

「お願いします。喫煙所はそちらになりますので…お部屋のベランダにも灰皿をご用意しておきますね」


佐伯雄星がそう言ってくれたので、

ありがとうございます…お願いしますと返事を返し、

僕はタバコに火を灯した。

煙を空へと吐き出しながら、ホテルを見る。

年季を感じるが手入れが、

しっかりとされているホテルなんだなと僕は感じた。

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