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カラコロカラン
「やっほー!リンちゃん!って!うわぁ!」
橘が元気よく入ってきたが、
山村さんと黒川美沙が仲良ししてるのを見て、
ビックリしたようだ。
「え?え?リンちゃん?これ喧嘩してるん?」
「…仲良さそうだろ?」
「うそ!?俺には喧嘩してるように見えるんだけど…」
相変わらず、おばさんだの子娘だのと、
キャンキャン吠えあっている姿を見て、
僕はコーヒーを一口飲む。
「なぁなぁ、コーヒー大好きっ子!これって仲良しさんなん?喧嘩してるんじゃないん?」
「さぁ…どうしからね〜」
山村さんが橘に気付いたようで、声をかけた。
「おい!龍生!この子娘はどうなってるんだ!私のことをおばさんと呼ぶぞっ!私はそんな年齢じゃないだろ!?」
「そ、そうね〜。美咲ちゃんはまだ若いもんね〜」
「タッちゃん!でも、ミサよりはおばさんでしょ?」
「う〜ん。年上ではあるけどさ〜」
「おい!どっちだっ!?」「どっちなの!?」
橘は二人に詰め寄られている。
オロオロと困った表情で僕の方を見てきた。
こっち、見んな。
カラコロカラン
「なんだい?うるさい声が外まで響いてるよ?」
「おっ!喧嘩か?俺も混ぜろよ!」
美里さんと龍之介さんが入ってきた。
美里さんは呆れた表情で、龍之介さんは楽しそうな表情で
事務所内を見回している。
「んだよ!女の喧嘩か!」
「龍さん。喧嘩は止めなきゃダメじゃない…」
「美里はうるせーなぁ。カー坊も元気そうじゃねぇか!龍生から死にそうだって聞いたのによ!」
「…大丈夫ですよ」
「喧嘩しに行ったそうじゃねぇか!俺にも声をかけろよ!一緒にボコボコにしてやったのに…」
龍之介さんはブツブツと小言を言っている。
「美咲!うるさいよ!そこのお嬢ちゃんも!可愛い顔が台無しだよ!」
美里さんの一喝で山村さんと黒川美沙は静かになった。
「まったく…。カー坊は本当に元気そうだね?もう大丈夫なのかい?」
「…はい。ご心配をおかけしました」
「それならいいけどね。あんまり無茶するんじゃないよ?そういうところは忠さんに似なくてもよかったのに…」
「…申し訳ありません」
「いいんだよ。でも、お嫁さんに心配かけるんじゃないよ」
「おい!美里!カー坊はまだ結婚してねーみたいだぞ!」
「あら!そうなのかい?」
「…そうですね」
まだって何だろう?
誰もがそう思っているのか?
事務所内にこんなに人がくるなんて…
みんな帰ってくれないかな?
「ねぇ、タッちゃん。この人達は誰なの?」
「んー?この人は俺のじいちゃんで、この人は美咲ちゃんね。俺とリンちゃんの姉ちゃんみたいな人で、この人が美咲ちゃんのばぁちゃんだよ」
「ふーん。そうなんだ」
「お嬢ちゃんはよく見るとアイドルの子かね?」
「うん!ミサはミサだよ!」
「そうかいそうかい。美咲とも仲良くしてあげてね」
「うん!わかった!じゃあね…う〜んと…ミーばぁとタツじいとヤマさんだね!」
「おい!私だけ言い方がおばさんじゃねーか!」
「そんなことないよ!ヤ・マ・さ・ん!」
僕はタバコに火を灯して、煙を吐き出した。
「てかさ、ミサミサはどうしたん?何か用事があったん?」
「あー!そうなの!今度ね!撮影のお仕事で島に行く予定なんだけど、みんなで行かないかなって思って、誘いにきたの!」
「え?そうなん?」
「うん!撮影もそんなに時間かからないし、シオリンも勉強になるかな〜って思ったのよね!」
「それってさ、ついてっていいもんなの?」
「フミフミにも話したんだけど、リンリンとタッちゃんは頼りになるでしょ?シオリンは勉強になるだろうし、お姉様とは一緒に行きたいのっ!」
「あら、そうなの?」
「ねぇ〜お姉様!一緒に行こうよ!」
「そうね〜…どうしようかしら?」
柚葉さんはそう言って僕の方を見てきた。
「…行きませんよ」
「なんだい!カー坊も行っておいでよ。たまには息抜きだって必要なんじゃないかい?」
「…ですが」
「いいじゃん!リンちゃん、行こうぜっ!栞ちゃんにも連絡してみるよ!」
そう言って、橘は雨宮栞に電話をかけはじめた。
「もしもし!栞ちゃん?俺だけど…うん…いきなりごめんね〜、今時間大丈夫?…そっか!よかったよ!今さ、ミサミサが来ててさ…うん、そうなんよ…んでさ!今度ミサミサが撮影のお仕事で島に行くみたいなんだけどさ〜…うん、そう島に行くみたいなんよ…そうなんよ、それでさ!一緒に行かないかって誘われてるんだけど栞ちゃんも行くよね?…そうなんだね…ちょっと、待ってね、聞いてみるよ!」
橘は受話器を外し、黒川美沙に話しかけた。
「ミサミサさ!彩花ちゃんも行きたいって言ってるみたいなんだけどさ!誘っても大丈夫なん?」
「彩花ちゃん?シオリンのお友達かな?」
「うん!そうなんよ!」
「大丈夫だよ〜」
「あんがとな!…あっ!栞ちゃん!ミサミサに聞いたけど大丈夫だって!…うん!彩花ちゃんにも伝えててよ!…うん!また連絡するからね!…うん。じゃあ、またね」
「シオリン来れるって?」
「うん!彩花ちゃんも来れるみたいだね!」
「じゃあ、タッちゃんとシオリンとお友達は決定ね!リンリンとお姉様はどうするの?」
「おい!カー坊!行ってこいよ!たまにはゆっくりと羽を伸ばすのも必要なことだろ?なぁ、美里?」
「そう思うねぇ…。カー坊も行っておいで!」
龍之介さんと美里さんには行けと言われるが…
「ヤマさんはどうするの〜?」
「あ?私は仕事があるから無理だな〜」
「そっか〜。タツじいとミーばぁは?」
「俺は家でゆっくりしとくよ!」
「私もそうだねぇ」
「そっか〜…。リンリンとお姉様は行くよね?」
「鈴が行くなら行こうかしら?」
「そうなの?リンリン!行くよね!行くよね!?」
黒川美沙がすごい勢いで聞いてきている。
柚葉さんとそんなにも行きたいんだな…
「…柚葉さんは行ったらどうですか?」
「私は鈴のそばにいるわ。まだ、ちゃんと治ってるわけじゃないのよ?元気になるまではそばにいるから」
「…そうですか」
僕はコーヒーを一口飲み、天井に煙を吐き出す。
黒川美沙はキラキラした瞳で僕を見つめてくる。
ため息をついてから、わかりましたと答えた。




