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僕はコーヒーを淹れ、タバコに火を灯す。
天井に煙を吐き出してから呟いた。
「…この間は助かりましたよ。手当をして下さったんですよね?」
「キシシ…」
ピエロがそう笑いながらカウンターに座っている。
音もなく入ってきていることについては、
今は考えないことにした。
「…助かりました。ありがとうございます」
僕が感謝を伝えながら、コーヒーを二つ入れ、
カウンターに一つ置く。
「…どうぞ」
「キシシシシ…神影〜…カッコいいね!いいね!」
そう言って、コーヒーを飲みエクセレントと呟いた。
座りながらもクネクネとリズムをとっている。
「…それで、榊原家には何をしに来られていたんでしょうか?何か目的があったのですか?」
「キシシシシ…オー…秘密!秘密だね!」
リズムをとりながらも、コーヒーを飲み笑っている。
「キシシ…不思議だね…神影は不思議」
「…そうですか?」
「神影はカッコいいね!いいね」
なんなんだろうか?
ピエロがことある事にカッコいいと僕に言うが、
何をどう思ってそう言っているのか意味がわからない。
やっぱり、会話が成り立たないな…
「キシシ…コーヒーありがとね」
「…こちらこそ…助けていただきありがとうございます」
ピエロはまたねと言って、扉を開けた。
カラコロカラン
暗闇の中にスーッと消え去った。
キシシと笑いながら…
「あら?誰かきてたの?」
「…いえ」
僕は天井に煙を吐き出しながら答えた。
「そう…」
柚葉さんはバスタオルで髪の毛を拭きながら、歩いている。
「…ドライヤー…使わなかったんですか?」
「あら?あったの?気付かなかったわ…」
僕はため息をついてから、
タバコの火を揉み消し、奥へと行き、
ドライヤーを取ってきて柚葉さんに渡そうとしたが、
受け取ってくれない。
「鈴が乾かしてくれるの?」
「…したことありませんよ」
「じゃあ、私が初めてなのね」
柚葉さんは湿った髪の毛を拭きながらも
僕を見て、微笑んでいる。
「…しませんよ。自分で乾かして下さい」
「え〜いいじゃない。どんなことも経験なのよ?」
「…そうですね」
答えながらもドライヤーを渡そうとするが、
受け取ってくれない。
僕はため息をついた。
「…座ってください」
「ありがと〜」
微笑みながら、ソファへと座ったので、
後ろからドライヤーで髪を乾かしてあげる。
僕は何をしているんだろうか…
柚葉さんの髪は僕の髪とは違い、
綺麗な髪をしているなと思いながら乾かした。
「鈴…上手じゃない。ホントに初めてだったのかしら?」
「…髪を乾かすのに上手も下手もあるんですか?」
「そうね〜。でも、丁寧よね」
「…綺麗な髪ですからね」
「あら?なんて?聞こえなかったわ?」
ドライヤーの音で聞こえなかったのだろう…
「綺麗な髪だなんて…嬉しいわ」
聞こえてんじゃねーか…
髪の毛を乾かし終わり、ドライヤーを元の位置に戻してからカウンターでタバコを吸おうとしたら、柚葉さんに止められた。
「鈴。今日はもう寝なさい」
「…さっきまで寝ていましたので、眠れませんよ」
「それでも、横になってなさい。身体も痛いんでしょ?」
なら何で髪を乾かせたんだと思ったが、
僕は何も言わなかった。
柚葉さんはソファに座りながら、隣をポンポンと叩いた。
座れってことですか…柚葉さんの隣に座る。
すると柚葉さんが僕の肩を掴み、横に倒してきた。
柚葉さんの膝の上に頭が置かれ、
膝枕をしてくれているようだ。
僕の頭を優しく撫でながら、柚葉さんはありがとねと言った。
「…何がですか?」
「私の為に頑張ってくれて…」
僕は返事を返さずに別の事を聞いた。
「…これは何ですか?」
「これって何のことかしら?」
「…膝枕のことですよ。柚葉さんが寝れないじゃないですか」
「いいのよ。こうやって過ごすのも悪くないでしょ?」
「…そう…ですかね?」
「鈴は嫌なのかしら?」
「嫌…では、ありません…かね」
僕はそう言って、目を瞑った。
柚葉さんは僕の頭を撫でてくれている。
「…ですが、やはり柚葉さんも寝てください」
「私が先に寝たらどうするつもりなのかしら?」
「…何もしませんよ。柚葉さんは僕をどのように思っているのですか?なんだか不安になってきました…」
「冗談じゃない」
「…笑えない冗談ですね」
「そうかしら?」
僕はため息をついてから呟いた。
「…話が通じない人は苦手ですね」
これにて第十七章完結です。
大切な皆さまのお時間を、
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ゆっくりですが、続きも書いていきますので、
優しい気持ちで見守ってくださると嬉しく思います。
今後とも、お楽しみいただければ幸いです。




