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隣の部屋を見ているのかしら?
私が不思議とそう思った瞬間に襖が開いた。
そこにはボロボロの鈴が立っていた。
一緒に連れてこられた時よりも、
怪我が酷くなっているようだ。
鈴は一度、私に視線を向ける。
でも、私は人ならざるものから視線が外せなかった。
感情のない人ならざるものが、反応を示した。
だが、反応を示しただけではなく、
襖が開いた瞬間に喜びの感情を見せたのだ。
それに気付いた時には鈴は水晶玉に触れて、
水晶玉は砕け散った。
人ならざるものが形を無くし、
鈴の身体の中へと入っていく。
鈴は黄金色に輝きながら、その場に座り込んだ。
なんだあれは?
人ならざるものが鈴の中に入った?
鈴が輝いて見えたのは一瞬だったが、
汗をダラダラと流していて、
今にも気を失ってしまいそうで…
私は鈴に駆け寄った。
「鈴っ!」
「…ああ。柚葉さんですか…」
「意識はあるのねっ!大丈夫なのっ!?」
「…変な感じがしますが…大丈夫ですよ…」
鈴は意識が朦朧としながらも返事を返している。
襖の奥では倒れている大きな男と、
唖然とした表情のオババ・サマーがいた。
「ぬ、主様が…主様が…」
どうやら砕け散った瞬間を見ていたようだ、
主様が…と言いながら、鈴の方へとにじり寄ってきた。
「ぼ、坊主…な、何をしたんじゃ?」
「…僕は触れただけですよ。カエさん」
「な、何故…私の名前を…?」
「…どうしてでしょうか?何故かわかりませんが、貴女の名前がわかったんですよ…。ヤエさんの子孫なのですね…」
鈴はフラフラしながらも話している。
「約束は果たしました…。ヤエさんが守りたかったのは家族と村の人達です…。いつから守るものを間違えてしまったんでしょうか…。あぁ、そうか…家族同士で争ってしまったんですね…。だから、この力を守ろうとしてしまったのか…」
鈴は遠くを見ながら話している。
「鈴?鈴っ!?」
「…あぁ、柚葉さんですか…」
私が肩を揺さぶりながら声をかけると、
柚葉さんですか…と話しているが、
まだ意識は朦朧としているようだ。
「…柚葉さん。迎えにきましたよ…。帰りましょう…」
「うん…うん…。そうね」
私は鈴の肩を支えながら立ち上がった。
カエさんと呼ばれたオババ・サマーは、
泣きながら鈴に頭を下げている。
「主様…申し訳ありませんでした…申し訳ありませんでした」
床に這いつくばるような姿で泣きながら謝り続けている。
「私共が間違っておりました…申し訳ありません…」
その横を通り抜けながら、鈴と歩く。
大きな男は起き上がって、オババ様!オババ様!と声をかけているがオババ・サマーは謝り続けていた。
廊下を歩き、外に出ると橘くんの車が止まっていた。
「コーヒー大好きっ子!どうしたんよっ!?」
橘くんは車から降りてきて鈴を支えてくれた、
後部座席に鈴を座らせ、隣に私も座る。
運転席に座った橘くんは鈴に声をかける。
「リンちゃん!リンちゃん!?」
「…ああ。橘か…悪いな…」
「リンちゃん!大丈夫なん?」
「…大丈夫だ。悪い少し寝かせてくれ…」
そう言って、鈴は横になった。
私の膝に頭を乗せ、眠っている。
「リンちゃんは…大丈夫なんよね?」
「…わからないわ。でも、息はしてる」
私もわからないから、
鈴が息をしているのを確認してからそう答えた。
「とりあえず、事務所に戻るね!」
「…お願いするわ」
車が走りはじめた。
車の中は無言が続いている。
「橘くん。…ありがとう」
「俺は何もやってないからさ…礼ならリンちゃんに言ってよ」
「それでも…ありがとう」
「…おうよ。困ってたら助けんのは当たり前だろ?」
橘くんはそう言って笑った。
私は鈴の頭を優しく撫でながら、
ありがとうと返事を返した。




