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「ついたー!」
太陽がウトウトしはじめた時間、
空は茜色に染まっている。
本当に長かった…
結局、あの後も同じように車に乗った。
乗ってしまった…
なんとか理由をつけて席を変えようと思ったのだが、
柚葉さんの鈴は私の隣よの一言で、
同じように座ることになった。
旅館の駐車場に車を止め、荷物を持って歩く。
階段を上がり、入口が見えてきた。
本当に綺麗だな…
「俺がいっちばーん!」
「橘さん!待ってくださいよ!」
駆け込むように橘が入っていき、
それに続いて雨宮栞と真島彩花も入っていった。
僕と柚葉さんはそれに続き中に入る。
雨宮栞が招待券を受付に渡し、
二部屋空いているのでご案内しますと言われた。
旅館の仲居さんに部屋へと案内されている時に、
橘が、あっ!と大声を出した。
「どこかで会ったことありますよねっ!?」
着物を着ている男性が驚いた顔をしながら、
橘を見ている。
「い、いえ…初めてお会いすると思いますが…」
「あれ?マジっすか?どっかで見たことあるな〜って思ったんだけどな…」
「私は藤代亮太と申します。以前どこかでお会いしたことがありましたでしょうか?」
「あー、すいません。似てただけかもしれません…」
「そうでしたか。きっとよく似ている方だったんですね…本日は当旅館をご利用頂き、ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりと過ごされて下さい」
藤代亮太はそう言うと頭を下げて、立ち去っていった。
僕たちも軽く頭を下げ返し、部屋まで歩く。
案内してくれている仲居さんに橘が話しかけた。
「あの人って前からここで働いてるんですか?」
「そうですね。当旅館を経営しております、藤代様のご子息様ですね」
「そうなんすか?」
「はい。他の旅館で働かれておりましたが、当旅館にお戻りになられたんですよ」
「へー、他のとこで修行して戻ってきた感じなんすね!」
「そうですね。どうぞ、こちらのお部屋です」
隣同士の部屋で二部屋用意してくれたようだ。
「お食事はお部屋にご用意できますが、どうされますか?」
「あー、栞ちゃん、彩花ちゃん。一緒に食べるよね?」
「そうですね」「はいっ!一緒に食べましょう!」
「すいません。一緒に食べれるとこってあります?」
「それでしたら広間がございますので、お食事はそちらにご用意させて頂きますね」
「お願いします」
それでは、何かございましたらお声がけくださいと頭を下げて、立ち去っていった。
「よし!じゃあ、とりあえず荷物を置こっか」
「そうですね!」
女性達は隣の部屋に入っていった。
僕は橘と一緒に部屋に入り、
それぞれ荷物を置いた。
部屋に入るとすぐにめっちゃ綺麗じゃん!と
橘は嬉しそうな声で部屋を見る
部屋の中は和室になっていて、
窓から外の風景を見ると、
木々が生えており、木々の隙間から川が見えた。
「リンちゃん…さっきの人さ…めっちゃ似てなかった?」
「…さぁ」
「旅館だから、この前のこと考えすぎたんかな…」
僕は返事を返さずに部屋を出ようとすると、
橘が声をかけてきた。
「リンちゃん…どこ行くん?」
「…タバコだよ」
「…ははっ、だと思った。夕食はどうするん?」
「…いつも通り、気にせず食べてくれ」
「わかったよ。じゃあ、いってら〜」
笑顔で手を振る橘にじゃあと声をかけてから部屋を出た。




