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「神影さん…ありがとうございました」
カウンターに座りながら、頭を下げている。
「お願いしたのは僕の方ですよ」
「それでも…明里のあんなに楽しそうな顔を見るのは久しぶりでした…」
「…そうですか」
「はい…。俺は明里の為にって必死になって、働いて…それは今も変わりませんけど…それを明里はわかってたんでしょうね…俺のことを心配してくれていたんだ…」
僕はタバコに火を灯した。
「ダメだな…。何であんなことしちゃったんだろう…犯罪者の妹にしてしまうところでした…いや、もうそうなのかな…」
彼は瞳に涙を溜めながら話している。
「父と母が亡くなって…明里がたった一人の家族なんです。明里が笑って…元気に過ごせるようにって…頑張ってきたんだけどな…何で…俺は何もできないんだよ…な、何でっ!」
自分の足を殴って、涙を堪えている。
僕は何も言わず天井に煙を吐き出した。
「か、神影さん…勝手なお願いなのは…わかっているんですけど…ま、また…明里に会ってもらえますか?」
「明里さんとそう話しましたので」
「は、はいっ…ありがとうございます」
僕はタバコの煙を天井に吐き出しから、
田口進の目を見て話しかけた。
「田口進さん。貴方はどんなことがあっても、何があっても…もう犯罪には手を染めず、誠実に生きることができますか?」
「…はいっ!…明里の為にも…自分の為にも…もうそのようなことは絶対にしません!誠実に生きると誓います」
「そうですか」
僕はそう言って、カウンターに大きな封筒を置いた。
「…こ、これは?」
「ここに200万円あります」
「…えっ!?な、なんで…」
「貴方の言葉を信じて…お貸ししましょう」
「…ほ、本当…ですか」
「はい。このお金は明里さんの手術費用にお使いください。ですが、何年かかってもかまいません…必ず返してください」
「…はい。…っう…は、はいっ」
ありがとうございます。ありがとうございます。
そう泣きながら何度も頭を下げている。
「明里さんの病気が治ること…信じていますよ」




