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カラコロカラン


「あ、あの…話ってなんですか?」


入ってきた田口進はオドオドした様子で話している。


「いえ、とりあえずお座りください」


僕がそう言うと、彼はカウンターに座った。

僕はタバコに火を灯してから話しはじめた。


「妹さんの手術におよそ100万円かかると言っていましたね」

「は、はい…」

「その手術は早くしないと手遅れになるんですか?」

「病院の先生からは、出来るだけ早くした方が治る可能性が高いと言われています…」

「田口さんの働いたお金ではまかないきれないと言うお話でしたよね?」

「そ、そうです…」


そうですか…と言って、煙を吐き出した。


「お、俺が奨学金で高校を出たので、その返済と生活費…妹の入院費に…貯金をすることもできなくて…だからと言って、人を騙してお金を取ろうなんて考えちまって…妹を悲しませるだけなのに…俺は本当にダメなやつなんです。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

「…謝罪は美里さんにしてくださいと言いましたよね?」

「…そ、そうでしたね。申し訳ありません」

「…突然で申し訳ありませんが妹さんとお会いさせていただけませんか?」

「あ、明里にですか?」

「そうです」

「か、かまいませんが…その、どうして?」

「妹さんに会ってみたいと思ったんですよ」

「…は、はぁ」

「今から会わせていただけますか?」

「わ、わかりました」


そう言った田口進と一緒に田口明里に会いに行った。


「あれ?お兄ちゃんどうしたの?」

「ははっ、仕事が休みだったからお見舞いだよ」

「もう!昨日もきたでしょ!お仕事が大変なんだから、毎日来なくてもいいっていってるじゃん!」

「明里の元気な顔を見ると俺も元気になるからさ」


田口進はそう言って笑っている。


「あれ?この人は?」

「初めまして。神影と申します」

「は、はい。はじめまして…え、えっと、お兄ちゃんのお友達?」

「あ、いや…この人は…」

「そうですよ。進さんのお友達です」

「そうなんですね!お兄ちゃんのお友達に会うのはじめてです!お兄ちゃんも友達がちゃんといるんだねっ!私、安心したよ」


田口明里は病院のベッドに座り、笑いながら話す。


「お兄ちゃんって、いっつも私のことばっかり気にして…高校に行くのもいい就職先を見つけるためにって…早く働くんだっ!ってさ…お父さんとお母さんの代わりになろうって必死でさ…だから、友達なんていないのかなって心配してたんだからねっ!」

「そ、そうだったのか?」

「そうだよっ!もう〜!でも、よかった〜。優しそうなお友達だね」


田口進は困った顔で田口明里を見ている。


「えっと…神影さんでしたよね!お兄ちゃんとはいつから友達なんですか?」

「いつからですかね?僕がお店をしているんですけど…そこにたまたま来てくれた時からですかね」

「そうだったんですね!」

「はい。明里さんが入院してるとお話は聞いていましたので、お見舞いをさせていただこうと思い、お願いしたんですよ」

「え〜!わざわざお見舞いなんて来なくてもよかったんですよ〜!…でも、ありがとうございます!本当は私も早く元気になって…神影さんのお店に会いに行きたかったな〜」

「元気になったら、是非来てください。まぁ、コーヒーしかありませんけどね」

「そうなんですか?」

「そうですね。後は…明るくてうるさい奴だったり…駆け出しのアイドルだったり…ちょっと変わったコーヒーが大好きな人も来たりしますかね?」

「そうなんですね!あ〜、私もお兄ちゃんと一緒に行きたいな〜」

「そ、そうだな!早く良くなって、一緒に行こうなっ!」

「うん!お兄ちゃん連れてってね!約束だよっ!」

「ああ!約束だっ!」


うん!と笑った田口明里は少し疲れた表情をしている。


「明里疲れただろ?少し寝よう」

「え〜!せっかくお兄ちゃんがお友達を連れてきてくれたのに…」

「また連れてくるから…早く元気になるんだろ?」

「…うん。神影さん…またきてくれますか?」

「もちろんですよ」

「神影さん…ありがとう」


田口明里はそう言って、ベッドに横になった。

田口進は優しい表情で妹を見ている。

スースーと寝静まった後、

僕は田口進と一緒に事務所に戻った。

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