10の6
「調べてきたよ〜」
そう言った橘から話を聞いた。
田口進の話は本当だったようだ。
妹の名前は田口明里。現在、病院に入院中らしい。
どうやら珍しい病気のようで、
手術費用には大きな金額が必要なようだ。
「親御さんが子供の頃に亡くなってるって話も本当だったっぽいね〜。一人で妹さんの面倒見てるみたい」
「…そうか」
僕はタバコに火を灯しながら聞いている。
「リンちゃん…これからどうする?」
「…そうだな」
「本当のことだったのは、わかったけどさ…正直、金の話じゃん?俺たちにはどうしようもなくね?」
天井に煙を吐き出しながら考える。
橘も頭を悩ませているようだ…
「手術をしたら病気は治るのか?」
「う〜ん。俺も詳しいとこまではわかんなかったけど、治る可能性があるって感じらしいね」
「…そうか」
カラコロカラン
「来ちゃいました!」
「あれ?栞ちゃんじゃん!きてくれたんだ!」
「はい!あの…橘さんにお願いがあるんですけど…」
「ん?どうしたん?」
雨宮栞は入ってくると、すぐに橘に話しかけた。
いつものことだなと思いながら、コーヒーを飲む。
「あの…明日イベントがありまして…私出ることになりまして…そこに来てほしいんです!」
「えっ!すごいじゃん!」
「はい!ありがとうございます!…その…橘さんにも見てほしくて…来てくれますか?」
「行きたい!…けど」
「…やっぱり、突然でしたもんね…来れませんよね」
雨宮栞は少し寂しそうな表情をしている。
「橘…行ってくれば?」
「えっ?でも、調べなきゃじゃん!」
「どう調べていくのか悩んでるところだろ?」
「そ、そうだけど…」
「この件は僕が調べるよ」
「で、てもさ…」
「雨宮さんも橘に来てほしいと思ってるんですよね?」
「は、はいっ!」
「明日だけなんだ、橘…行ってやれよ」
「…リンちゃんがそう言ってくれるなら」
ありがとな!と橘は笑った。
雨宮栞もありがとうございます!と嬉しそうにしている。
僕は何も返事を返さずに、天井に煙を吐き出した。
「橘さん!それじゃこれチケットです!絶対来てくださいね!」
「うん!わかったよ!楽しみにしてるね!」
はい!と元気よく返事を返して、
笑顔で手を振りながら立ち去っていった。
カラコロカラン
「リンちゃん…本当によかったの?」
「何が?」
「俺もなんか出来ることあったんじゃね?」
「…そうだな」
「まぁ、金の話だったら、俺にはどうも出来ないけどさ…」
僕は新しいタバコに火を灯してから、話した。
「橘も行きたかったんだろ?」
「…うん。せっかくの栞ちゃんのイベントだかんな」
「じゃあ、何も考えずに楽しんでこいよ」
「…本当にいいの?」
「…何度も言わせんな」
「…わかった。ありがとな」
橘は嬉しそうな顔で笑った。
僕は返事を返さずに、タバコの煙を天井に吐き出した。




