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第十章、いざ開幕!
貴方はね、この鈴と一緒に山の中にいたの。
神様がね。貴方をお作りになったのよ
白い肌に、長い黒髪
優しく微笑みながら話している。
チリンと鈴を鳴らして、立ち去った。
女性が僕を後ろから抱きしめている。
少し痛いぐらいに、だけど、優しく強く
僕を抱きしめている。
何か小さな声で囁いているが
聞こえない。聞かなきゃいけない気がするけど
聞かなきゃいけない気がするけど、聞こえない。
聞こえないんじゃない。
僕は聞きたくなかったんだ。
カラコロカラン
入ってきた柚葉さんが、
ニコニコ笑いながらこう言った。
「鈴、約束の日よ」
なんで僕はここにいるんだろう…
事務所を出る時、ビックリしすぎて、
ポカーンとした表情の橘を思い出して苦笑する。
「ねぇ、こんな服はどうかしら?」
「…それ、柚葉さんが着るんですか?」
「何言ってるの?鈴が着るのよ」
僕は今、ショッピングモールに来ている。
だが、この間と違うのは一緒に来ている人が違うことはもちろんだが、女性用の服屋ではなく男性用の服屋だということ。
「こんな服がいいわね」
「…僕は買いませんよ」
「私が買うからいいのよ」
柚葉さんはグレンチェック柄のシャツを手に持っている。
「こういうの似合いそうじゃない?」
「…僕は着ませんよ」
「鈴が持っていてくれたらそれでいいのよ」
その服のブラウンを手に取ると、
他の商品を数点持って会計に向かった。
「あとはそうね〜」
「…まだ、どこか行くんですか?」
「今度は私の服を見るのよ?」
「…じゃあ、何で男性用の服屋にきたんですか?」
「鈴はリンクコーデって知らない?」
「…知りませんね」
「そうなのね〜」
僕は柚葉さんについて歩いていく。
今度は女性用の服屋さんに来た。
僕は帰っちゃいけないのだろうか…
「う〜ん。どうしようかしら?」
柚葉さんは悩んでいるようだが、僕には何も聞いてこない。
これも…いいかな?と一人で悩みながら選んでいる。
そばで静かに聞きながら、柚葉さんを見ていた。
「うん。これに決めたわ」
そう言って手に取った服はブラウンでグランチェック柄のワンピースのような服だった。いかにも大人な女性が着るような、シックな印象を受けるような服だ。
他にも数点、商品を手に持っている
「シミタールックにするわ」
「…そうですか」
「ふふっ、私が言ってる意味わかってる?」
「…申し訳ありません」
「謝ってほしい訳じゃないわ」
微笑みながら話す柚葉さんは会計を済ませると、
これでお買い物は終わりよと僕に言った。
やっとでタバコが吸えると思った。
「そろそろコーヒーが飲みたいでしょ?」
「…そうですね」
「私にもコーヒーいれてくれるかしら?」
「…いつも飲んでるじゃないですか」
「そうね〜」
さぁ、帰ろっかと微笑えんだ柚葉さん。
僕はわかりましたと返事を返し、
一緒に事務所へと帰った。




