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幕間 とある日記の一ページ
ワタシはきっと逆子だった。
そしてそれを知っているのはワタシだけ。
助産婦や母でさえも気がつかぬまま、ワタシは逆さのまま生まれてきてしまったのだ。
だからワタシの視界はいつも逆さで、こんなにも心地が悪いのだろう。
逆さのまま育ったワタシにとって、この世界は地獄のように思えてならない。
ああ、どうして逆さの世界は醜いのだろう。どうしてワタシの足は地についていないのだろう。
生まれた時からワタシはずっと歩こうとしている。空に両足を向け、前に進もうと懸命に脚を動かしているのだ。けれども逆さだから。結果として一歩も前には進まず、故に視界が変わる事も無い。
生きるというのはこんなにも辛い事なのか。自分という存在が、自身を愛するワタシの心が嫌になる。
別に生まれて来る世界を間違えたわけではないはずだ。
だって、この世界はこんなにも満たされていて、何一つ欠けてはいないのだから。
そんな完全なる世界を醜いと思う以上、やっぱりワタシは逆さで。
だけどワタシも世界と同じく完全で。
だからきっと、生まれ方だけが間違っていたのだろう。
死ぬ前に。一度でいいから逆さで無い世界を見てみたい。
そんな事を思いながら、今日もワタシは逆さに眠る。
こうしている間だけは、地に足がついている気がするから。




