肉薄 -しかしそれはまだ序章-
天川甘音がそこに居た。
どういうわけか理由は不明だったが、よくよく考えてみれば、彼女がこの家に居るのは確かだったので、ここまで来ても不思議ではなかった。むしろ、ここまで大々的に料理対決をしていたら、彼女が来るのは半ば必然のようなものである。
だが、その場にいた誰もが硬直していた。辛籐に天川照真、霜月さえもが驚いた顔のまま微動だにしなかった。この少女にはそれだけの影響力があるのだ。
彼女は腰元に手を当て、じーっと塩谷の方ばかりを見つめてきていた。
「そんな事より始音くん! 今のはどういう事!?」
「えっ、今のって……」
「意味がないとか何だとか!」
「あっ。それは……その……」
「む、無駄だよ甘音ちゃん。そいつに何言ったってさ。だいたい、何で来たの? 僕ちん、部屋でゆっくりゆったりしてるように言ったよね?」
「忘れたわ、そんなの。ていうか父上は黙ってて。私、今、始音くんと話してるから」
「そんな!」
いつの間にか復活していた天川照真が、再び動かなくなった。
相当ダメージが大きかったようで、しばらくは動けなさそうである。
しかし、そんな事を気にしている余裕は、塩谷には無かった。
天川甘音が全力で睨んできているのだ。
「で、始音くん。わたしから言いたい事はたった一つよ!」
「な、何さ……」
「諦めがいくらなんでも早すぎるわ」
「そ、それは仕方ないよね! だって、このままいけば負けるの確定だし!」
「始音くん。逆転、って言葉知ってる? 逆転は、逆境から生まれるものよ! つまり今がチャンスよ!」
「何言ってんの意味わかんないよ! それにもう逆転の余地なんか無いよ!」
「本当に?」
「えっ……?」
天川甘音は大きな目を逸らしもせずに向けてくる。
その表情には、もう怒りの色は見えない。
ただ、塩谷の中にある“何か”を促しているように見えた。
「本当に、出来る事全部試してやれるだけやってみた?」
「それは……」
「もしかしたら勝てるかもしれないわよ。……それでも、それでももし、まだ足りないようだったら……」
天川甘音は、ゆっくりと調理台の方に移動する。
その意図に気付いた塩谷は、真っ先に頭を抱える。
この少女が来た時は、まるで救世主のような神々しさだったのに、結局こういう方向に行き着くのかと、嫌なため息を隠しきれなくなったからだ。
そう。この女が調理台に立つ理由なんて他に無い。
「わたしも手伝ってあげるわ。ルールは確かサドンデスよね? なら、途中参加も問題ないわけよね!」
「「いやいやいやいやいやいや!」」
いつの間にか復活していた辛籐と塩谷は、全力で首を振って否定する。
気持ちはありがたいが、いらないというサインだ。正直、天川甘音は料理が下手だ。
致命的にまで下手糞だ。だから、味方に入ったところでマイナスになるだけである。
「遠慮しなくていいわ! さあ、とりかかるわよー!」
「あの、甘音さん。いいですよ。これは私達の戦いで……」
「わたしの店の存亡がかかってるんだから、わたしの戦いでもあるわ!」
「むう、それはそうですが……」
「それに、始音くんは諦めムードみたいだけど、わたしにはまだ勝機が見えるの。これ、絶対試したらいけると思うのよね!」
「「え?」」
「何、甘音ちゃん! それはどういう……」
「父上うるさい」
「……ごめん」
ここで、天川甘音は何かを提案してきた。
そう。彼女はこの絶体絶命絶望的状況で、尚も勝てると主張したのだ。
正直な話、辛籐ですら本気で勝てるとは思っていなかったのにも関わらず、この状況で唯一天川だけが希望を見つめていたのだ。
絶望の中から、ほんの小さな希望を見つけられるのは、ポジティブな者の特権である。
天川甘音は天に指を掲げ、まるで地獄にでも叩き落とすかのような仕草で、一気に振り下ろして塩谷に指先を向ける。
「合体必殺技よ!」
「は、はぁ? これは料理だよ、何言ってんの!?」
「……なるほど。合わせ技ですか。案外いけるかもしれませんね」
「でしょ!?」
「本気で言ってるのかな!?」
「ええ。私達は個々で持てる力の方向性が全く異なっています。でも、だからこそ互いの必殺料理の特性を上手くフォローし合う形でいけば、個々で戦う以上の力を発揮する事が出来るはずです……!」
「ええ、よくわからないな……」
とんでもない提案である。
天川甘音は、いつだって唐突で我が道を突き進んでいる。今回もその一環だ。
だが、一理あるのは確かだ。
今まで塩谷と辛籐は個々の技術のみで戦ってきた。しかし、塩谷の「三柱天国」が辛籐の「THE END OF ROAD」の味覚破壊を無効化出来るように、それなりにコンボを繋がられそうな材料はそろっているのだ。
共同作業。合体技。コンボ料理。
しかし、それは今までに試した事の無い新たな試みであるため、やはりどこまでいけるのかは判断不可能だった。
塩谷は、未だに実感の湧かない脳をフル稼働させる。
そして、やはり変わらぬ結論を出す。
「うん。やっぱりよくわからない。っていうか、やってみないと分からないっていうのが正直な気持ち。ただ、本当に、これだけは確かだって事がある。だから、二人にお願いがあるんだ……聞いてくれるかな?」
だが、その目には先ほどまでよりも生気が宿っていた。
だから、仲間二人もそれに力強く応じる。
「何かしら? 聞くわ!」
「ええ、聞いてあげますよ。何です?」
「あのさ……」
これから先の言葉は、これまでの塩谷ならば絶対に言えなかった台詞だ。
実際、今も状況から仕方なく言うのであって、結構嫌々である。
しかしながら、もうこうするしかないのは確かなのだ。これは彼一人の問題では無い。
プライドだけの問題じゃないのだ。
だから、彼は、HelleNを守るためにその言葉を口にする。
「ほんっとうに今更だけど、天川さん。辛籐さん。お願い、力を貸して」
ここで一旦途切り、一呼吸。
そして、目に意志を宿して続きの言葉を解き放つ。
「僕一人じゃ勝てない!」
この言葉は、本来言う必要も無いものだ。だが、あえて言う事によって覚悟を決める事が出来るのである。
それは悲痛な叫びのようでもあり、前に進もうとする意志の表れのようでもあった。
これは、塩谷始音がこれまでの人生で、一度も使った事の無い言葉だ。
何故ならば、たった一人で待ちかまえていれば、負ける事なんてほとんど無かったのだ。
正直、ここまで来ておいて都合のよすぎる言葉である事は重々承知だ。戦闘前、あんなに意気込んでいた男の台詞でもない事もわかっている。そもそも本来ならば、プライドが邪魔して言えるはずの無い言葉だったはずなのだ。
けれども、今はプライドがどうこう言っている問題では無いのだ。HelleNの事は、彼ら三人の問題なのだ。
「何を言っているんですか?」
辛籐がにやりと笑みを浮かべ、皮肉気な口調で続ける。
「そもそも前提から違ってますよ。私が始音さんに手を貸すんじゃなくて、始音さんが私に手を貸す形だったじゃないですか。協力しないわけがありません」
「もちろん。わたしも力を貸すわ。……ううん。違うわね。貸すというよりは、三人の全力を合わせて父上を倒しましょう!」
「……ありがとう」
こうしてHelleNの三人は初めて共同戦線を張る事となる。
料理を食べる者に地獄を味あわせる最凶の少女、天川甘音。
味覚を破壊する大技をもつ難攻不落の不落嬢、辛籐空美。
料理を食べる者を天国に連れていける最高の料理人、塩谷始音。
この三人が各々の特性を活かし、天川照真という最強に噛みつこうとしているのだ。その結果はどうなるのかわからない。
そう。わからないのだ。敗北確定の状況から、天川甘音が来てから流れが変わったのだ。
天川照真が長い硬直時間を経て復活を遂げていたが、そんな彼ですらもこの流れを止められそうにもない。
「……甘音ちゃん。君は僕ちんの敵に回っちゃうの!? くそっ……塩谷、始音め……! 許せん!」
「だからなんで僕なのさ……?」
「父上黙って!」
「そんなぁー!」
「空美、指示お願い! 始音くんはそれに従って!」
「「了解!」」
こうして第三ラウンドが始まった。
辛籐は一秒だけ考える仕草をした後、すぐに指示を飛ばす。
「始音さんは食材の確保、甘音さんは調理の準備をお願いします! 食材は今から指示します! あと、甘音さんは可能な限り天川照真さんを罵倒していてください!」
「わかったわ! 父上のばーか!」
「ええ!? そんな!」
その罵倒は、異常なまでに効果覿面であった。
「よし、今のうちに!」
塩谷は、音さえも置き去りにして全力で駆ける。
天川照真が娘の暴言にショックを受けている間に動く。今なら人形も動いていない。これをチャンスと呼ばずして何と呼べばいいのか。
彼は、一切の妨害を受ける事なく冷蔵庫に辿りつき、調理台の方から指示を出してくる辛籐が言った通りの物を集める。
そうして、すぐに引き返して、調理台までそれを届ける。
「持ってきた!」
「よしっ。じゃあ次は調理を手伝って下さい! 私は今回、速く動かすために一部の食材や調理器具の操作を捨てますので、その穴を埋めて下さい! そして合間を見ながら自分の分を制作して下さい! あと、甘音さんは罵倒しながら、なるべく私の指示に従った調理をお願いします!」
「うん。わかった」
「了解よ! 父上の寝取られ好きー!」
「違うよ! 僕ちんそんな事考えてない! それは誤解だよ!」
何が誤解なのかはよくわからなかったが、こうして各々作業に入る。
辛籐は色とりどりの野菜と調理器具を浮かせ、塩谷は辛籐が浮かせきれなかった分のベーコンなどを即座に刻んだりする。そのスピードは個々でやるよりも何倍も速かった。
天川照真も頑張って人形を操作するが、その動きに先ほどまでの精彩は感じられなかった。明らかに、娘の罵倒によって大幅にパワーダウンしていた。
それに加え、塩谷達の作業効率が大幅に上がっているので、現在両者のスピードは拮抗していた。
だが、それでもやはり天照大御神は格が違った。
料理を先に完成させたのは、天川照真その人であった。彼は人形操作し、上品な硝子性の容器に入ったパフェを審査員席まで持っていく。
「ふん。少しはやるみたいだけど、それじゃあ僕ちんはまだ遠いよ?」
「いっただーきまーす………………50点っ!」
相変わらず、味覚破壊を食らっているのにも関わらずあり得ない点数だ。
これで160vs250だ。もうそろそろで100点差がつきかねない勢いである。
しかし、HelleNのメンバーは、誰ひとりとして気にかけていなかった。彼らは、自分の料理の事で頭がいっぱいの様子である。
天川照真はそれを忌々しげに見るが、しかしすぐに笑みを取り戻して腕を組み直す。それは、自分の優位が揺らがないという確信があっての余裕だ。
「ま、せいぜい頑張って追いついてくれよ」
「父上。あなたは少し見くびりすぎよ」
「へっ? 何をだい?」
「HelleNそのものを、よ。この名前はね。HellとHeavenを組み合わせた造語なの。たとえ父上が神だったとしても、果たして天地に挟まれ圧殺されても平気でいられるかしら?」
「へえ、面白い事を言うね。じゃあ、見せてくれないかな。その天地圧殺の力ってやつをさ」
「いいわ。さ、わたし達三人の料理は今完成したわ!」
「……ほう。って、なに、それ?」
天川照真が眉間に皺を寄せる。
それもそのはずだ。何故なら、皿が三つあるのにも関わらず、そのうち二つは全く同じ料理に見えるのだ。
血よりも赤い深紅のパスタが二つと、よくわからない虹色の泥のような塊が一つ。
しかし、これらは全て同じ物だった。だから、三人は特に打ち合わせる事なく、ぴったりなタイミングで同じ料理名を口にする。
塩谷が真剣な表情で、
「THE END OF ROADだよ」
天川甘音が自信に満ち溢れた笑みで、
「THE END OF ROADよっ!」
辛籐がこれぞ本家と言わんばかりに腕を組んで、
「THE END OF ROAD……です!」
三人それぞれが同じ料理の名を口にした。
「え!? え!?」
「もちろん三人とも仕様は異なるわ。でも、これがわたし達の合体必殺技……三連続のコンボ技よ! とくと味わうがいいわ!」
天川が、三品を乗せた盆を持って、審査員席へと移動する。
この組み合わせを見た霜月は、ほんの少しだけ驚いた顔をしていたが、すぐに平時の気だるそうな顔に戻る。
天川甘音は、指で食べる順番を指定し、まずは塩谷の作った具材が多めに入ってあるパスタを差し出した。そう。順番には意味があるのだ。
霜月はそれを一気に口に入れてしばらく噛み続ける。途中、苦しそうに一瞬胸のあたりを抑えていたが、塩谷からしてみれば想定通りである。
そして、カッと目を見開き立ちあがる。それから料理の入っていた皿を指さして、腹の底から叫ぶ。
「61点っ! 何これおいしー!」
「なっ……!?」
それは、これまでの中で一番の高得点であった。
それもそうだ。塩谷は料理に不死の力を付与して、その拒絶反応で味覚をリセットさせる「三柱天国」という技を使ったのだから。これは彼の必殺技であり、先ほど焦って作った物とは違い、全力を尽くしている。
だからこそ、この高得点だ。塩谷始音は本来、本気を出せばこれぐらいの点数は取れる男なのだ。調子が狂う時は一気に狂うが、決める時は一気に決められるのが彼の特性である。
ちなみにこれには辛籐の味覚破壊スパイスが少量含まれており、それによって得点が更に上昇したというわけだ。
これで221vs250。もう相手は射程圏内にいるも同然だ。
「まだ終わらないわ! 次はこれよ!」
「……えっ? な、なにこれー……?」
「だからTHE END OF ROADよ!」
それは、どう贔屓目に見てもパスタには見えなかった。
ただの汚らしい泥のような塊にしか見えない。
が、これは天川甘音が辛籐空美から勝利を勝ち取った時に用いた「天川版THE END OF ROAD」である。
もっとも前回の場合は、天川甘音がまだ未熟だったのもあり殺傷効果があったわけだが、今回は進化した彼女の地獄料理バージョン2「生き地獄」という特性を付与しているため、食べて死ぬ事は無い。死ぬ以上の苦痛なら伴うが、それでも食べる事は可能である。
「まーゲテモノって美味しいって言うし……いっただーきまーす」
霜月がそれを一気に口の中へと放り込む。
直後、苦悶の表情を浮かべて地面に倒れこみ、しばらく苦しそうにのたうち回る。その姿は、まるで地獄の責め苦に耐えかねている罪人のようだった。彼女は涙目になりながら、まるでギブアップをしているかのように地面を何度も叩きつける。
塩谷達は、それを遠い目で眺める事しか出来ない。お気の毒に、という言葉をかける事が限度である。
しかし、流石プロは違った。霜月はそこから這うように立ちあがり、席へと戻る。そして、何度も吐きそうになりながらも料理らしきその物体を呑みこみ、審判を下した。
「……れ、0点……!」
「えー! そんな! これに関しては自信作なのに!?」
「ふう。マイナス行かなくて良かったー。ね、辛籐さん」
「いえ、このサドンデスルールにマイナスはありません。それ導入しちゃいますと終わるまで時間がかかりますし、そもそもマイナス制に影響される料理人なんて、本来ほとんどいないので」
「ち、ちなみにねー……マイナス評価をしていいのなら……ううん。口にするのも恐ろしいよー……」
「そんなにやばいんだ。本気で危なかった」
今回の評価は散々であったが、塩谷達にとってはこれも計算内だ。
はなから天川甘音の料理で点を取ろうなんていう気持ちは無い。むしろこれは後の一撃への布石だ。
彼女の地獄料理は食らった者を一時的に、亡者のように餓えさせる事が可能だ。その状態で物を食べた場合、相当美味しく感じるというのは塩谷の実体験だ。
ちなみに天川照真は泣きながら「あ、甘音ちゃん……なんて可哀想な」と口にしていたが、誰ひとりとしてそこに触れようとはしていなかった。このまま泣いていてくれた方が好都合だからだ。
「じゃ、最後の料理よ!」
「…………こ、これは、まともな料理…………だよねー……?」
「もちろん私のTHE END OF ROADは無害です。むしろ、お口直しには最適ですよ」
「……そー、なんだー……じゃあ、いただきます……」
やけにげっそりしている霜月は、またしても皿を持って、深紅のパスタを一気に口の中へと放り込む。
その姿を見て、流石の塩谷も少し気の毒になってくる。何故なら、彼女は審査員だったというだけの理由で、これから先、天川甘音が料理を作るたびにこの苦痛を味あわされるのだから。
全て口の中に入れ、咀嚼。霜月の評価時間が始まる。だが、彼女は噛むにつれてどんどん笑みを取り戻していく。
そう。地獄から地上に這い上がる、この感情の転位こそが天川甘音の武器である。
そして、呑みこむ。
霜月は目を見開き、息を吸って吐き、座ったままの姿勢で大きく跳躍しながら空中で大きな叫び声を上げた。
「なな、じゅっ、ってーん! ひゃっはー!」
「70点っ! 馬鹿なっ! 辛籐ちゃん、一体何を!」
「いえ、私はいつも通り作っただけですよ」
最高得点が更新された。
何故、こんな高得点になったのかわからず、天川照真は動揺に目を見開いている。
事実、このTHE END OF ROADはいつもとなんら変わりの無い品であった。
これはまさしく合体必殺の賜物なのだ。
辛籐は得意げな顔で話し始める。
「まず、始音さんの料理にほんの少し含まれていた味覚破壊香辛料の中毒性が、ポイント上昇に貢献します。その味覚破壊は三柱天国の力ですぐに相殺出来るので、始音さんの料理はただ単に強化料理として効果を発揮したわけです」
「……それで、辛籐ちゃんのは……」
「私の方はもっと簡単です。単純に、甘音さんの料理を食べた人間は、口の中の不快感をどうにかしたいあまり、味に飢える傾向があります。そんな人に、私のこの中毒性の高い香辛料を用いた料理を食べさせれば、一体どうなるのかという話ですよ。強烈な化学反応を引き起こし、通常の何倍も美味しく感じられたとしても不思議ではありません」
「……!」
「だから、これはもうただのTHE END OF ROADではありません。そうですね。さしずめ『THE ENDLESS ROAD』とでも名付けましょうか。貴方程度の妨害なんかで、私達の道は潰えません。これが、決して終わらない道の証明です」
モニターに総合点数が表示される。
291vs250だ。
これで逆転成功である。その上、三人でなら何とか戦えるという事がよくわかった。このまま勝負を決める事も充分に考えられるほどの破竹の勢いだ。
天川照真は若干焦りを浮かべている。当然だ。もっと圧勝出来るはずの相手にここまで肉薄されているのだから。
勝てる、塩谷始音は希望を胸に勝利を確信する。
それが、ただの錯覚であるとも知らずに。




