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第二章 タイムカプセル

まずはどこへ向かおうか。ひとまずは近所の公園で計画を考えよう、詞杷はそう決めた。紡との思い出の土地を巡ろうにも詞杷は当時7歳前後であり、記憶があまりのこっていない。ではどうするか。親族関係は紡をいないものとしており、教えてくれる気はさらさらないだろう。何かいいものはないだろうか、詞杷は頭を悩ませていた。…そうだ、交換日記。持ってきていた宝物のことを思い出す。確かそこには、その日その日の冒険をした時の感想を書いていたような気がする。早速詞杷は日記のページをめくる。当たりであった。

最後まで読み通すと計3カ所巡れそうな土地があった。スマホの地図アプリを起動し一カ所目である「希望ヶ丘団地」を入力する。移動距離は約30キロ。

時間は有り余るほどあるのだ。詞杷は少しばかり軽くなった腰を上げた。

 お昼はどうしようか。残り半分といった距離になった時詞杷は考えた。なんだか足元がやけに滑る。詞杷はふと上を見ると、新緑の葉が空中で空色と交じり合っていた。近くにはベンチもある。せっかくならここでお昼を食べるか、そう決めた。お昼を食べ終え、再び歩き始める。もう少しで団地に着くといった時に、ここに住んでいるであろう姉妹とすれ違った。とても楽しそうである。もう夏休みなのだろうか。詞杷にも昔そんな時期があったのを思い出す。

 「希望ヶ丘団地」はかつて紡、詞杷達家族が住んでいた団地である。叔父夫妻は当時の転勤により、現在は別の場所に住んでいる。

この団地は元から寂れてはいたが、十数年の時が経つとより寂しくなったように感じられる。詞杷は交換日記に書いてある近所の公園へと向かった。

先ほどの姉妹を思い出す。そういえばこんなことをしていたか、と淡い記憶が蘇ってきた。

 「つむぎおねえちゃん。今日は何をするの?」幼い詞杷が尋ねる。

「んふふ、今日はね、この公園にタイムカプセルを埋めようと思うの!」よくぞ聞いてくれたとばかりに紡が楽しげに答える。「たいむかぷせる?」「うん、未来の私たちが、楽しい思い出を思い出せるように大事な物を埋めておくの」「楽しそう!」「でしょ!」2人ははしゃぎながら話していた。そんな他愛もない会話をしながら、翌日埋めたことを詞杷は思い出した。

「あのカプセル、まだ埋まってるかな」

当時、タイムカプセルの目印にしていた木は既に切り倒され、掘り返すのは容易ではないと思われた。だが紡は絵がうまかった。日記に当時の風景を描いてくれていたのだ。その絵を元に詞杷は100均ショップで買ったシャベルを使って掘り返し始めた。ーあった。出てきたクッキー缶には懐かしい字で『つむぎとことはの思い出カプセル』と書かれていた。文字の近くには2人の似顔絵付きである。詞杷は土を払い、近くのベンチに腰掛けて缶を開けようとした。しかしいざ開けるとなると一体何が出てくるか分からず詞杷は少しためらった。だがそんな事ではこれから何も出来ない。詞杷は覚悟を決める。中には当時流行っていた玩具から2人で手作りした不格好な玩具まで入っていた。下の方には周りの玩具とは一風変わった手紙が入っていた。こんな物を入れていただろうか。そんなことを考えながら手紙を持ち上げる。宛名には詞杷の名前。裏面には紡、と書かれていた。詞杷は動揺すると同時に涙が込み上げてそうになっていた。こんな手紙を紡はいつの間に入れたのだろうか。数年ぶりに成長した紡の字を見た。もっと眺めていたい。しかし今は感傷に浸っている場合ではない。詞杷は手紙を開けた。

 「詞杷へ。この手紙を読んでるのは何歳なのかな。ちなみに私は今17才だよ。『願い』を決めなきゃいけないの。大変だよね、ほんと。

この手紙を開けたのはきっと『願い』に困っちゃったからなのかな。こんな制度嫌だよねぇ。私はね詞杷、『願い』なんて私は要らないって考えるの。だからもし『願いをなくす』って願ったら、神様は認めてくれるのかな。認めてくれないかも。でも私はそう願おうと思うの。タイムリミットはまだあるけどね。詞杷も悩んでるなら無理はしないようにね

P.Sもしかしたらこんな手紙を幾つか見つけちゃうかも?紡より」

 何とも紡らしい文章であった。詞杷は読みながら泣いてしまっていた。予想外の収穫だ。やはり紡は『願い』がなかったわけではないのだ。『願い』が見つからずに絶望したわけではない。そう確証が得られた。詞杷にとってはそれだけでも十分、この団地に来た意味があった。だが、この手紙だけではなぜ自殺してしまったのか分からない。詞杷は自身の『願い』を見つける以外に紡が死んでしまった理由を見つける事も旅の目的に追加した。しかし他の手紙は一体どこにあるのだろうか。2人を繋いでいる交換日記をもう一度読む。しっかりとした地名が書かれているのは目星をつけたこの団地を含む3箇所のみである。残り2つの土地を巡ることに決めた。

 距離から考えると次は「夢見山」に向かうことに決めた。紡も同じように悩んでいたのだろうか。もし同じ場所を巡っていたのなら、一体何に気づいてしまったのだろう。そんなことを考えていた。ふと頭に何か当たる感触が伝わる。上を見上げると今度は葉桜と朱色が交じり合っていた。

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