第十二話「友達以上恋人未満の君へサプライズ」そのニ
十二月十四日
あの一件以来アキラは俺のアパートへ来なくなった。それどころか学校でもあからさまに俺を避ける。
加えクラスの席替えで離れたから尚更だ。でも計画通り。冷めたのは上辺だけでLINEでは濃い交流を続けている。
『どう? どう? 今日のコーディネート。可愛い?』
『可愛いっす。虎柄エプロン✕制服✕現役JK、大坂のおばちゃんみたいな見事な組み合わせ』
『それ褒めてる?』
『無論。べた褒め』
アキラの自撮りとその感想。
これの繰り返し。気軽に交信する手段が限られているので残されたコミニケーションツールを最大限に利用。スマホの画面が休み無く彩っていた。
真実を告げれば済む話なのだが、あのことはまだアキラには秘密にしておきたい。これまで準備していたことが全て水泡に帰すからだ。
把握しているのは親友を驚かせたいことで一致している西郷と大久保のみ。一蓮托生というか運命共同体。
なので、
「——もらい!」
「あ! 西郷何しやがる⁉ 最後の楽しみに取っておいたやつ!」
アキラとのやり取りで夢中になっている間に、きつねうどんのおあげちゃんを西郷に強奪させる。
「井伊ぽん、ここにも本物の美少女がいるのにそっちに夢中ってどういうことかなかな?」
「自分で美少女って、言っていてはずかしくないか?」
「正直はずかしい……」
「じゃあ使うなよ」
今は昼休みの食堂。バイト先でチップを奮発してくれたお客様がいたのでありがたく食費に当てさせてもらう。
なのに匂いを嗅ぎつけ、差し向かいに陣取った飢えた狼へメインディッシュを横取りされてしまう。由々しき事態。午後のモチベーションへ大いに影響する。
「それで井伊ぽん、例のブツも手に入れたし今後の展望は?」
「西郷が俺に謝罪をすること」
「ウチにも手伝うことはないのかな?」
「なら西郷が俺に土下座して二度としないと誓う」
「はいはい。しつこい男はモテないよん」
俺を口の中に食べかけ板チョコレートを放り込まれた。甘い。
「元々ボッチだし別に構わないさ」
「ウチの食べさしはレアだからね。これで貸し借りなし」
「確かに……食いしん坊だもな。飲みかけや食べさしなんてあるわけもないか」
「うっさいわ!」
俺の頭をポカポカ叩く。陸上部のエースだけあって筋力あるからまじ痛い。
それにしても流石は陸上部、鍛え上げた凄いプロポーション。ジャージの上からもくっきり出るところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいる。
「冗談はさておき、アキラに驚くサプライズをしたい。何かいいアイデアはないか? 女の子の視点で考えくれ」
「うーん、難しいね」
「物は用意したんだ、あとはシチュエーション」
「なるほど。でもウチも陸上一辺倒だったから大した力にはなれないよ」
「聞き方を変えよう。もし自分だったらどうする?」
「ウチだったらかぁ……」
あ………と声を出す西郷。何か閃いたようだ。
それはそうと、先程からすごい視線を感知する。外の窓からアキラが仲間になりたそうにこちらを覗いていた。まるで飼い主が出勤時ベランダの窓から見送る飼い犬の様だ。
『何をじゃれ合っているのかな?』
不満そうに口パク。
「俺のきつねうどんの揚げを奪われた」
「へへん。井伊ぽんのものはウチのモノ」
『いいなー仲よさそうね。羨ましいなぁ』
アキラは口パクで不満を表明。
風船のように頬を膨らませていた。可愛い。
決戦は十二月二十四日。
クラスによるクリスマスパーティー。
いつも世話になっているアキラにささやかながら恩返しをする。
失敗は許されない。




