第九話「どきどきの修学旅行」その二
十一月十八日
修学旅行二日目の十二時頃。
お昼だ。俺達は料亭貸切で柿の葉寿司、白味噌の雑煮、ゆばなど郷土料理を堪能。
煮物とか天ぷらとかハモのお吸い物とかプロが作るのは美味い。
そんな中アキラと——
『ああああ! 先生達と上っ面の会話で肩がこる〜』
『アキラおつかれさん』
『直助もっと褒めて褒めて』
『はいはい。凄い、ご立派、生徒の鑑』
『もー、心が籠ってないでやんす』
『注文が多い』
クラスひとまとめでお座敷にいる、流石にここで会話するのは不可能なのでLINEでやり取りしていた。
『料理美味くてほっぺたが落ちそうだよ。勉強になるなー』
『確かに。でも、アキラがいつも作ってくれる料理の方が俺は好きだな。家庭的でいつもほっとするんだ』
『ほーう、そうなんだ。別に好きで作ってるわけじゃないんだけど、直助がどうしてもと懇願するのならこれからも作ってあげる。感謝しなさい』
『ありがてえ』
仰々しい土下座スタンプを送る。
『ところで両手に花だから鼻の下が伸びているんじゃないの? 私の親友なんだから邪な気持ちを起こさないでよね』
『そんなことはしない。第一周りの視線が痛くて針のむしろだ』
そう俺はまた大久保と西郷に挟まれていた。アキラはクラス委員長なので先端の遠い席にいる。
「井伊さん誰とやり取りしているですか?」
「井伊ぽんならナリに決まってんじゃん。LINE交換している唯一の相手だから」
「委員長、一人だけ別のところにいるから寂しいみたいだ」
「リーダーだから大変ですよね」
「うんうん」
俺が打ち解けるのをみて好機と踏んだのか、他の陽キャラ男子も西郷達に話しかけてくる。
しかし適当に話を合わせるだけだった。社交的なあしらい方も一流。
コミュニケーション能力が大幅に欠けている陰キャラボッチに同じことをやれと指示されても無理だ。
当然人気者であるアキラにもアタックする陽の者達がいる。その中に水戸もいた。
「二人とも席キツくないか?」
「うちのクラス全員だからじゃないですか?」
「井伊ぽんだから安心して肩を預けられるよ」
どちらかというと胸だぞ。
満員電車の如く西郷と大久保に胸を押し付けられて苦しいのだ。いくらお座敷が狭くてもこんなにぎゅうぎゅう詰めは勘弁してくれ。
——その間不意に視線を感じる。辿ると目が合った。
俺のことをじーーと監視。何かやらかさないか心配なんだろうな。
『ちょっと直助、シュウリン達とくっつき過ぎでは?』
『回避不可能』
『エロガッパ全開で二人に手を出さないでよね』
『心配し過ぎだぞ。だいたいアキラだってモテまくりじゃないかよ』
『お、ヤキモチですかい親友?』
『違う。一応ボディーガード任されているからな』
食後、クラスメイト同士で短い歓談が始まってる中、俺達はスマホとにらめっこ。大切な思い出の一ページを無駄に過ごしている。
『ありがとうね。頼りにしているわよ』
『気にするな』
『でもせっかくの京都だし、素敵な男の子と思い出作るのも悪くないよね』
『きらびやかな大久保や西郷と違い、庶民派のアキラにロマンチックなデートなんて似合わないだろ?』
『ほう、私をなめているな?』
『そんなことはないが高級ホテルより、近所のスーパーのほうが似合っている』
『むかつくわー。分かったよ。私最終日、男子とデートすることにした』
『冗談だぞ』
だが分かってくれてない。
忘れていた……。アキラは極度の意地っ張りなんだ。




