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第八話「ファーストキスを誕生日プレゼントとして」そのニ

「井伊らしいけど、社交的に付き合いがあるからそうも言ってられないときもあるんだよ。だから誕生日ぐらいは本当に親しいマブタチ達と過ごしたいんだ」


 委員長は自分が作ったサンドイッチを薦める。ベーコン、アボカド、ハム、レタス、トマト、薄焼き玉子をトーストに挟み串を刺して固定しているアメリカンクラブハウスだ。

 具材をふんだんに使用してカラフル。手間と愛情が籠っている。


「そうですね。私は男性が苦手なんで信頼にできない人達とテーブルを囲むのは遠慮したいのです」


 大久保も俺に食べてくださいと、ぶり大根を取り分けて薦めてくる。長時間煮込んだのか赤く染まっている大根とブリ、噛むと素朴で良い出汁が出ていた。


「男達なんか呼んだらヘタに気使ってしょうがないもん。あいつらネタがスベっているのに永遠と引っ張ってくるから、しかも他人の悪口で。ウチはそういう奴好きじゃない」


 ずるいずるいと三番手に名乗りを上げた西郷。コロッケ、イカリングフライ、フライドポテト、大学芋、油物ばかり………胸焼けしそうだ。


「ちょっと待って、俺はその男のカテゴリーにはいるぞ」 

「井伊、皆あんたを男としてみてないよ……なんてね。はははっ!」

「井伊さんは別です。ナリが認めた男性 なんだから紳士に決まってます」

「井伊ぽんは本当にいいやつ。ウチの勘がそう告げているのさ」


 褒めすぎだ。俺は照れる。委員長の発言は無視。


「それでなおす……井伊にお願いがあるんだけど……」

「今度の修学旅行どうか私達の班に入ってくれませんか?」

「井伊ぽんお願い!」

「おいおい。他にもいるだろう。仲のいい陽キャラ グループで集まってんじゃないのか」


 今回クラスのカースト上位グループで班が纏まっている。俺は場違い感半端ないぞ。入る余地はないのではないか。


「悪いが辞退させてもらう。イケメン美少女揃いにぼっちが一人だなんて、居心地が凄ぶる悪そうだ」 


 インドア派ぼっちには気が重すぎる。気分は肉食の猛獣蠢くサファリへ放り出された小動物。

 生きた心地がしない。


「ダメ。私が許さないよ。黙って私のグループに入りなさい。これは命令」

「ごめんなさい。私達どうしても貴方が必要なんです」 

「そうそう。あいつらウチら狙っているから隙を伺ってアピールしてくるんだよ。すぐに二人きりになりたがるしね。それがウザくてさ」  

「ようは俺はその予防線。お邪魔虫役か」


 理解はした。

 しかし欲望に忠実な高校男子を舐めてはいけない。煩悩だらけの奴らに俺を投下したら最悪死ぬぞ。

 

 ——ひと通り楽しんだあと大久保と西郷は帰り、委員長も妹達も寝かしつける。

 夜も更け俺は帰り支度を始めた。


「直助帰るの?」

「ああ。親御さんと鉢合わせしたらどう対応していいかわからないからな」

「今日は帰ってこないよ」

「そうなのか」


 尚更居づらいわ。


「それより直助から誕生日プレゼント欲しいな」

「知らなかったから今日は何も用意してない。日を改めてでいいか?」

「今がいい」

「わがままだな」

「じゃあ私のことアキラって呼んでよ」

「ナリじゃないのか? お前の陽キャラ交友関係はみんな呼んでいるぞ」

「アキラは家族と恋人になる大好きな人にしか絶対呼ばせない。だから他の友人には誰にも呼ばせてないんだから光栄に思いなさいよね直助」


 ふむファミリーネームみたいな感じか。

 この俺が恋愛対象になることは100%ありえないから…………ということは手の掛かる弟と認識されているということか。

 まあ、いつも家事やってもらっているからな。ありがてぇ。


 不意に俺を引き寄せ、また首筋噛まれると覚悟したら、「分かったよその……アキラ——むぅぅ!」唇へ時間を掛けてキスされた。


「にひひ、直助のファーストキスは確かにプレゼントとして貰ったよ。あと私のも初物なんだぞい。大切にしろよ〜♡」


 こうして親友にファーストキスを奪われる。

 弟扱いだし、世界基準にしたら普通のことなんだろうけど、それでもいきなりは心の準備ができてないから驚いた。

 

 アキラの唇の感触が残っていて、まだ心臓のドキドキが止まらない。


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