第八話「ファーストキスを誕生日プレゼントとして」その一
十一月七日
気温もだいぶ冷え込み空っ風が強い中、今日は委員長の家にお呼ばれする。
メンツは委員長、大久保、西郷、そして俺。それに委員長の双子の妹達。
「はい、唐突ですが井伊に質問、今日はなんの日?」
「井伊君では難しいかもしれません」
「ヒントは皆でうまいものを食べることだよ井伊ぽん」
「今日は鍋の日だろ?」
「ブブー! 不正解だよ」
間違いのようだ。おかしい、靴下は十一日、七五三が十五日、勤労感謝の日が二十三日だったはずだ。他に何がある?
その間にもカースト最上位親友三人組は和気あいあいとキッチンで料理を作っている。
校内で人気の美少女三人組が一堂に介して料理。特にエプロン姿が破壊力抜群で写真に収めたいほどだ。
チーズの香ばしい匂いが漂って来る。いい匂いだ。オーブンでグラタンを焼いている。
そしてフライを揚げている音が聴こえてきた。九割方唐揚げと分析。
「本当に何で私達が集まってるか知らないで来ていたのですか?」
「井伊ぽんらしいと言えばらしいね。正解はナリの誕生日だよ」
委員長誕生日だったのか……。
そういえばいつなのか聞いてなかった……。お世話になっている手前、プレゼントぐらい渡すべきなのに何をやっているんだか。
信じらんない、友達の誕生日ぐらい自分で調べておきなさいよとか、これだから情報弱者はとか、散々文句言われる。
「その……ダチがお前しかいないんだから、ぼっちの俺にそこまで期待するな」
「そっか。それだったら仕方ない。私は唯一の友達なんだもんね」
委員長は何故かご満悦。ご褒美にと揚げたての唐揚げを口へ入れられた……あつ!
「なら提案です。私ともお友達になりましょう」
「うちもうちも立候補なり!」
「へーさすが井伊君、オモテになるようで羨ましい限りですねー」
今度は不機嫌。忙しいやつだ。
「こんな冴えない俺でいいのか? スペックの高いカリスマ男子なら幾らでもいるだろう?」
「紳士の貴方だったら信用できます」
「井伊ぽんはいいやつだもんね。ウチ同じ部活だったからよく知ってるよ」
悪いな西郷、同じ陸上やっていた当時のお前のこと知らないんだ——とは言えなかった。
暫く後、委員長達が腕によりをかけた豪華な料理が揃い、主役のケーキを箱から御開帳。
バースデーソング、数字の描かれたろうそくと火、そして拍手。
家族ともしたことがない初めてのイベント。俺はどことなく心が踊っていた。
「今更なんだが、なんで委員長達以外誰もいないんだ?」
ここで初めて疑問をぶつける。
委員長、西郷、大久保以外、他にいるのは俺の膝に乗ってすっかり懐いている委員長の妹ニ人だけ。
「誰も呼んでないからに決まっているわよ。誕生日会やろうって男子達に言われたけど断ったもん」
「意外ですよね。ナリは学友が多いからクラスメイト全員に声を掛けてパーティーすると思うでしょう?」
「でもナリはそんなことはしないのさ。どうせだったら気の許せる親友達と馬鹿話していた方が面白いじゃん♪」
「気持ちはわかる。俺なら一人ぼっちでケーキ黙々と食べた方がマシだ」
プライベートまで余計な気を使ったらしんどいだけだもんな。




