第六話「文化祭の白雪姫。演技のキスはファーストキスに入るのか?」そのニ
十月二十六日
今日はうちの文化祭。
長い準備期間を経てついにこの時が訪れる。
しかし緊急事態発生。ヒロインの白雪姫役が来なかった。
実は一週間前からトラブルが起き喧嘩に発展。白雪姫役は練習をボイコット。責任感がないやつだから心配していたがこの事態に対して、急遽なぜか俺が代役に抜擢された。しかも委員長からのご指名。
話すの苦手な陰キャラにできるかと抗議するも、セリフできるだけ軽減するからと約束を取り付けるが不安は残る。
あくまでも緊急時の代役なので、当日来たら俺はお払い箱だと安心していたがあの女は姿を見せなかった。これだからリア充は……。
それにしても他にもはまり役がいるだろうになんで俺が女役なんだ?
「はぁ……俺にできるかな?」
「大丈夫大丈夫、直助だったら問題ないよ。少ない期間だけどやれることをやったんだから、もっと自分を信じなさいな」
隣の控室。久々に委員長と二人っきり。ぎゅうぎゅう詰めの満員電車並、息がかかるほど距離が近い。
「そういえば何で委員長は俺を指名したんだ。信頼関係があるんだったら大久保とか西郷の方が息がぴったりだろ? それに陰キャラの俺だと委員長と釣り合いが取れないような気がする」
「うじうじうるさいな。私はあんたと決めたんだからそれでいいじゃない。ベストパートナーは直助だけだよ」
——そして、幕が上がり劇が始まる。
しょっぱなの王国の悪い后が魔法で出来た鏡で、鏡よ鏡の有名なシーンを終え城から森へ追放された白雪姫。さらに老婆に化けた妃からりんごを食べた白雪姫こと俺は永い眠りにつく。
しばらく後、許嫁の行方不明となっていた白雪姫を単身で捜索していた王子こと委員長が、幾度となく悪い后の妨害とか苦難を乗り越えて白雪姫の所在地を探し出す。
しかし時すでに遅し、棺の中に入った白雪姫、その周りを小人たちが泣き叫んでいた。
王子は奇跡を信じて白雪姫に口づけをする。それによって深い眠りから蘇った。
こうして結ばれた二人は王国から后を追い出し幸せに暮らしましたとさ。
——本来の白雪姫とはだいぶ話の流れが違うが、面白くできていたのではないのかな。
観客は満足していたようだ。特に王子様役の委員長がはまり役。黄色い声援がうるさいうるさい。
俺も女装していたから大半は気持ち悪るがられるけど一部からなおきゅんと呼ばれた。それは嫌だ……。
それより気になることが——
「目瞑っていて認識できなかったが本当にキスしたんじゃないだろうな? リアルな感触があったぞ」
「どうだろうねー」
下校中寄り道して、二人きりで高台にある公園を散歩。
「演劇だからファーストキスには入らないだろうけど、痴態晒してまでするキスは嫌だぞ」
「私も御免被りたいよ。どうせするんだったらロマンチックな雰囲気の中でやりたい」
中々尻尾を出さない。小声で、『ファーストキスしたよ、でも私的に無効かな。もっとちゃんとしたロマンチックなシチュエーションでしたい。この鈍感次第だけど……。それに本当は私が白雪姫でこいつが王子だったらベストだったのに、やっぱアオハルは思い通りに上手く行かないか……。ねっ、直助♡』と呟くけどよく俺は聞き取れなかった。




