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第六話「文化祭の白雪姫。演技のキスはファーストキスに入るのか?」その一

十月六日


 ホームルーム。

 俺達のクラスはあるイベントについて話し合っていた。

 そう、とうとう面倒な文化祭がまたやってくる。集団行動苦手な陰キャラロンリーウルフの俺にとっては苦痛でしかない。


 我がクラスはリア充が多いせいで大盛りあがり。出し物を何にするかで激論を展開、メイド喫茶と演劇に絞られ多数決で演劇に決定する。これで帰れると思ったら今度は演目と配役で揉めた。


 なんとか無難な白雪姫に決まり、王子役に立候補がいないので投票。 

 その結果、人気者の委員長になる。

 ヒロイン役白雪姫は逆に大混戦になった。男装したらイケメンな委員長の相手役。ジャンケンによる熾烈な頭脳戦の末、クラスで四番目の美少女へ決まる。顔は良いが性格が軽いので俺は好きではない。


 ——で、俺は結局裏方へ収まった。予定調和。ちなみに王子役の投票で俺へ一票がくる。そんな酔狂なことするのは誰だ?


 ——放課後、ファーストフード。

 これからの文化祭準備期間、大まかな方針と打ち合わせの為に委員長の呼びかけで皆が集まる。何だけど……。


 俺は委員長の親友である西郷と大久保に挟まれていた。そしてあからさまに不機嫌な委員長は対面に配置。

 存在感が気薄な俺へクラス三大美少女が囲んでいるこの状況、他のメンツからどよめきが起こっている。俺は貝になりたい。

 特にリア充男子達からの圧が凄い。そのうちシメなれないか不安だ。


「前はあんなに嫌っていたのに、ナリは最近井伊君に信頼を寄せてますよね。確かに海の家ではかっこよかったから気持ちはわかります」

「そうそう。あのときは助かったよ。ウチは客商売舐めていたわ。井伊ぽんがいなかったら今頃どうなっていたか……」

「大したことはしていない。仲間なんだからサポートするのは至極当然」

「むう……」


 姿勢正しく凛としたのが大久保寿導オオクボジュドー、文武両道で弓道部所属、対して天真爛漫な笑顔を向けるショートカット少女は西郷鷹森さいごうシュウリンは陸上部。(競技が違ったから接点はそんなにない)

 二人とも中学時代から親友。委員長曰く家族のように絆が固い。まあ、俺も同じクラスだったから何となく覚えていた。


 だから二人は委員長と距離が近くなった俺を見極めようとしているのかな。

 それはそうと俺は普段から委員長と呼んでいるから、ナリと言われるとハテナになる。ナリアキラだからナリか。名前長いもんな。


「井伊君、ナリをよろしくお願いします。しっかりしていておっちょこちょいのところもあるから支えてあげてください」

「井伊ぽんもナリがウザかったらちゃんと言葉にしないとだめだよん」

「委員長とはただの知り合いだけど善処するよ」


 ここで委員長とダチなんて宣言したら間違えなくリンチなので、危機回避能力高い陰キャラぼっちは無難な答えを絞り出す。

 二人も察してこれ以上は深く追求してこなかった。


「ねージュドー、シュウリン、二人ともそろそろ離れたら? 井伊が困っているじゃん」

「そんなことないですよね井伊君」

「ウチはもっと井伊ぽんとおはなししたいなぁ」

「まいったな」

「むーーー!」


 美少女二人に挟まって幸せの筈だが息苦しい。両肩から二人の温もりが感じる。 

 でもそれに比例して委員長が尚更不機嫌に……。委員長は何を怒っているんだ?


「ナリと井伊君の関係、核心に触れてないから今度ゆっくり話しましょう」

「ナリはなんか隠し事しているような気もするんだよね。親友の感」

「何もない。委員長はただのクラスメイトだ」

「ただの……ただのって——そう、ただの敵だよ! この!」


 ——イタっ……! 二人に勘づかれないように思いっきり足を蹴られた。

 あいつらにからかわれてるのは分かってるが、委員長の怒った顔も可愛いので特に行動を起こすことはない。


 最近は委員長同様、二人も海の家で起こったトラブルを解決したことに感謝しているようで、こうしてよく話しかけてくる。時間が合えば下校を共にすることもあった。

 

 解散後から何故か不機嫌な委員長。帰宅するとなだめるのに一苦労する。

 無言で夜ご飯作ってくれたけど、一杯褒めてくれないとご飯食べさせないと脅されるので、散々べた褒めして機嫌を回復。  

 女心は理解するには難解で面倒だ。


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