第五話「風邪と合鍵と彼シャツ」その三
十月四日
「直助、お風呂ぐらい掃除してよね。あとシャンプー切れていた。うちの予備持ってきたからあんたも使っていいよ」
「それは遠慮しておきます。同じシャンプー使ったら、感がいい女子なら同棲疑われるぜ」
あれから頻繁に俺の部屋へ出入りするようになった委員長。とうとうアパートの合い鍵を作られてしまう。
理由は学校に近いから勉強部屋または着替え部屋として使用、その対価として家事の代行をする。ことわる理由が見つからないので了承した。
でも想定外な出来事続きで俺はキャパオーバー。
今日は夕立だったのだ。
それで傘を忘れ雨でずぶ濡れになった委員長が鍵で入る。冷静に考えるとぼっちを貫いていた俺には異常事態だよな。
「直助、なんでも雑に洗濯機に突っ込まないで! ここネットとかないの?」
「委員長、俺のパンツまで洗わなくていいからな」
「いやよ。そんなこと言ってアオカビ繁殖させたのは誰なの?」
「俺も色々と忙しいん……」
言葉が詰まる。
恥ずかしすぎて言い返せない。
——で、それはいいが何事もなかったように俺のワイシャツを着ている委員長。下には何も着てない。
しかもベッドに座って自撮りする。
これは彼シャツってやつでは……世界に愛好家がいる有名な特殊フェチの一つ。
俺が彼氏だったら襲っていたかもしれない。それほど殺傷性が高いカテゴリーなのだ。
「あれあれー、直助君は何で顔赤いのかな?」
「委員長、何か上に着てくれないか? 目のやり場に困る」
「全て洗濯中なので残念ながら何もありませーん。直助が溜め込むのが悪いのよ。ふふっ」
「だったら毛布にくるまってろよ」
俺が毛布を投げつけるとイタズラぽく微笑む委員長。
畜生、俺をおもちゃにしてやがるな。
うちには乾燥機があるから長時間このままでなくて助かる。
親が俺の面倒くさがりを見越して買ってくれたのだ。洗濯自体滅多にしないので宝の持ち腐れには代わりはなかったけど。
「ふふ、エロの直助」
「違います。ぼくは紳士よ」
「知っている。とても信頼しているよ」
「本当か?」
「もちろんよ」
だからこれあげると彼シャツ委員長の自撮り画像が送られてきた。
嬉しい……「いやいや、こんなもん、クラスの野郎共にみつかったら俺死ぬぞ……。他に奴には送るなよな」と言いつつお気に入り保存する。
「いやだな、こんなことするの直助だけに決まっているじゃん。バーカ♡」
委員長はベーと舌を出すと、身を乗り出してそのまま今日のキスをした。
少女を小悪魔へ変える彼シャツの魔力は恐ろしい。
神は何処まで俺に試練を与えるつもりだ?




