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第五話「風邪と合鍵と彼シャツ」そのニ

九月十八日


「ハックション! ずずっ……」


 やっちまった。体がとてもだるい。声も鼻声。

 俺は風邪ひいて熱でダウンしてしまう。原因はこの前忙しい委員長の代わりに妹達を幼稚園へ迎えに行った時だ。次の日閉鎖になるぐらい風邪が蔓延していたらしい。


 高熱のせいで腹へったけど何もできず。ある程度収まったら半額パンでも食べよう。独り暮らしは気楽でいいが、心と体が弱っている時は寂しくもある。


 学校に来ないからLINEで委員長が心配していたが、うるさいのでただのサボりだと平気なフリをした。あいつのことだ、責任感じて一日中LINEしてきそうだから。


 しばらく後、チャイムがうるさいから出ると、「井伊酷い顔。やっぱ風邪だったんじゃない」委員長が不機嫌そうに嘆息をつく。


 委員長が初来訪。でも住所教えてないけど誰から聞いた?


「委員長。風邪感染るぞ」

「妹達の世話で慣れているから平気。それに私のせいでもあるから責任感じているのよ」

「気にするな。俺の体調管理不足だ。それに授業は? まだ下校時間じゃないだろ?」

「早退した」

「学校に戻れ。学生の模範にならないとならないクラス委員長や風紀委員長様が個人的用事で授業サボったらだめだろ?」

「嫌よ。ご飯作ってあげるから部屋に上げて。お腹減ったんでしょ?」


 ゴネると玄関先で何時間もいそうな勢いだったので俺が折れる。なのでけしてお腹の音が鳴ったせいではない。


「客を受け入れる体制できてないから散らかっているぞ」

「おじゃまします。平気平気……………って井伊! その袋の山なによ?」


 部屋へ入ると委員長は愕然となり固まる。


「ゴミ。めんどいからそのまま放置。ある程度溜まったら出す感じだ」

「はぁ。独り暮らしの男ってみんなこんなんかな?」

「あ〜いじるなよ」

「うるさい。病人のあんたは寝てなさい」


 委員長による強制清掃が始まる。文句を言いながらもテキパキとゴミとそうでないものを分別。床に置きっぱなしで地層を形成している着るものも全て洗濯機へ。スラム化している一番の難所であるキッチンも徹底的に汚れを落とす。


 一眠りして起きたら汚部屋が見違えるほど綺麗になっていた。久々に床を見た気がする。

 あんな不衛生な環境でよく今まで生きてこれたねと失礼なことを毒づくも、それに対して反論する言葉を持ち合わせてなかった。


 お盆の上にはお粥と味噌汁と肉じゃがが置かれていた。

 ベッドで半身起きて食べる。


「美味い。手作りの味噌汁なんて何年ぶりだ。最近インスタントしか食べたことないから感動すら覚える」

「普段何食べて生きているのよ」 

「スーパーの半額弁当と半額パン」

「自炊は?」

「めんどくさい。そんな暇あったらゲームしたほうがいいわ」

「これは重症だ……」


 美味すぎて全て食べ尽くした。満足してお腹を擦る。


「委員長ありがとう。お礼は必ずする。今度バイクで遠出して美味いもん食べに行こう」

「それもいいけど……そうだな。だったら二人のとき限定でいいから名前で呼ばせて欲しいかも」

「何故に?」

「友達だからよ」


 でも何処か顔が赤い。恥ずかしいの堪えている?

 おそらく双子助けた義理で無理しているのかもな。


「そんなんでいいのか?」

「うん。だめかな?」 

「好きにしてくれ」 

「ありがとう、なおすけ……直助!」

「女の子から呼ばれたことないから違和感が半端ないわ。これがリア充世界の当たり前ってやつか……」 


 さすがのクールキャラである俺もこれには照れる。陰キャラぼっちに耐性はないのだ。

 委員長は自分のことも名前で呼べと言うがそれは辞退した。一人で生きてきた俺にはハードルが高すぎる。


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