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パニックの生理学と音波の封鎖

深海ウミムシはプラズマ・リアクターの残骸を放した。その球状で装甲に覆われた頭部に目はなかった。代わりに、分節化された体に沿って生物発光する裂け目があり、幽霊のような青い光を脈打たせていた。奴は俺たちを見たのではない。俺たちを「感じ取った」のだ。


俺たちの熱力学的なキメラである深海ドレッドノートは、暗い部屋の灯台となるのに十分な熱と振動を放っていた。


「ヴァレリア、スラスターを逆噴射しろ」自身の頻脈タキカルディアを隠すような、静かなかすれ声で命じた。「ゆっくりと、静かにな。急な動きはするな。盲目の捕食者だ。ただの残骸の一つになれば、奴は俺たちを無視する」


「アーサー、バラストポンプは静かじゃないんだよ!」タッチスクリーンのコントロールの上で汗ばむ手を動かしながら、ヴァレリアが囁き返した。レーダーの近接インジケーターが狂ったように点滅している。「もしバックギアを入れたら、ピストンが軋む音を立てちまう!」


巨大な生物がその場で回転し、海底の泥の嵐を巻き起こして俺たちのサーチライトを濁らせた。周囲の水が暗くなったが、ウミムシの黒水晶の歯が暗闇を引き裂き、高密度で古代のマナで輝いた。


俺自身の黒水晶ブラック・クリスタルの腕が焼けつくように熱くなり始めた。俺の義手と獣の歯との間の共鳴は疑いようもなかった。同じ物質でできているが、ウミムシのそれは原始的で未精製のものだった。


肝臓の寄生体が叫び、俺のシナプスを化学的な恐怖で満たした。


【 原始的アラート。頂点捕食者を検知。脅威レベル:絶滅 】

【 システムをシャットダウンします。死んだふりを。死んだふりを 】


「ふざけるな」俺は唸り、共生体が俺の中枢神経系を麻痺させるのを防ぐため、人間の手の指を自分の太ももに突き立てた。


生物が巨大な口を開けた。深淵では音はそのように伝わらないため、吠えはしなかった。奴は低周波の破裂音を放った。物理的な衝撃波が、俺たちの骨の潜水艦を直撃した。


ドレッドノートは激しく後ろへと吹き飛ばされた。


グリッスルが額を天井にぶつけ、うめき声を上げた。船体の完全性アラートが鳴り響き、キャビンを緊急の赤い光で照らし出す。


「ステルスは失敗だ! 診断を極限の回避行動に変更する!」俺は叫んだ。「ヴァレリア、最大出力だ! ここから出すんだ!」


ヴァレリアはためらわなかった。彼女は略奪したプラズマスラスターのコントロールを強く押し込んだ。潜水艦は前方へ跳躍した。一直線ではなく、コンソーシアムの巡洋艦の墓場へ向かって斜めに急降下する。


背後の水が渦巻いた。深海ウミムシが突進し、その巨大な質量が何千トンもの海水を押しのける。生物が口を開けたことで生じた吸引の円錐が、俺たちを後ろへと引き込み始め、エンジンの出力と拮抗した。


「あいつの歯はプラズマを食うんだよ、アーサー!」ヴァレリアは目を丸くして後方モニターを見ていた。「企業の兵器で奴を撃っても、デザートを与えてるようなものだよ!」


「撃つな。グリッスル、斧をしまえ、外に切り刻む相手はいないぞ!」真っ青になってシートにしがみついているルナがいる後部座席を振り返った。「ルナ! 全身麻酔が必要だ! 大量の『沈黙』を投与してくれ!」


ルナは即座に理解した。その獣は振動と音圧で狩りをしている。もし俺たちが海に対して耳を塞ぎ、口を閉ざせば、奴の生物学的な「レーダー」から消え去ることができる。


エンパスの歌い手は傾いたキャビンの床を這い、杖の水晶を俺たちの船体の骨の壁に直接当てた。彼女は歌わなかった。エンジンの轟音、俺たちの心音、圧力で金属が軋む音など、キャビン内のすべての音を引き寄せ、反転させた周波数でそれを無効化したのだ。


形成された沈黙の泡は、単なる聴覚的なものだけではなく、触覚的なものでもあった。俺たちの逃走の振動が水中で存在しなくなった。深海ドレッドノートは熱力学的な幽霊ファントムと化した。


俺たちの後部スクリューに噛みつこうとしていた深海ウミムシは、虚無に向かって口を閉じた。失敗した噛みつきによる衝撃波が、俺たちを制御不能なきりもみ状態へと吹き飛ばした。


俺たちは暗闇の中を回転しながら、サイラス・ヴァンスの旗艦『フリーマーケット』の破壊された船体が横たわる渓谷へと向かっていった。


「衝撃に備えて!」ルナの魔法のおかげでキャビン内は絶対的な静寂に包まれたままだったため、ヴァレリアの声は読唇術を通してのみ伝わった。


俺たちが激突したのは岩の海底ではなく、企業の巡洋艦の引き裂かれた格納庫ハンガーに直接だった。俺たちの骨の破城槌が巨大な船の死んだ胴体を貫き、ドレッドノートはねじ曲がったポリマーの壁と深淵の暗闇の間に挟まり込んで動けなくなった。


キャビンの照明が明滅し、消えた。


沈黙が続いた。


ルナが横に倒れ込み、息を荒らげながら、ついに音波の封鎖を解除した。俺たちの荒い息遣いと、結露が滴る音が、ゆっくりと耳に戻ってきた。


パネルの生物発光の緊急灯だけが照らす暗闇の中で、俺たちはじっと動かずにいた。


正面のバイザー越しに、巨大な深海ウミムシが残骸の上を優雅に泳いでいくのが見えた。その分節化された体は果てしなく続いているように見え、海溝のわずかな光を遮っていた。獲物が消えたことに戸惑いながら水を嗅ぎ回り、俺たちの心音を見つけられないまま、奴は深海へと歩みを進め、漆黒の中に消えていった。


息を弾ませながらシートベルトを外した。パニックの生理学的反応が体から抜け始め、深い筋肉の疲労が残った。


「全員生きてるか?」暗闇の中で尋ねた。


「生きてるよ。でも、すぐに何かを切り刻まないと狂っちまいそうさ」グリッスルがぼやき、不気味な骨の音を立てて首を真っ直ぐにした。


「メインエンジンが機能停止してる」ヴァレリアが手回しの小さな懐中電灯でパネルを照らし、ダメージを評価した。「プロペラが『フリーマーケット』の鉄骨に引っかかってる。船体は水圧に耐えたけど、どこにも行けないよ。アタイら、いかりを下ろした状態だ」


左舷のハッチから外を見た。企業の巡洋艦の白く無菌の胴体が俺たちを囲んでいた。怪物が咀嚼した場所の先で、船の緊急隔壁がいくつかの無傷なセクションを密閉していた。


その皮肉は明らかだった。深淵の怪物から逃れるために、俺たちは企業という怪物コーポレート・モンスターの胃袋の中に避難することになったのだ。


俺の黒水晶の腕が柔らかく脈打ち、破壊された格納庫のエアロックを紫色の光で照らし出した。船の密閉されたゾーンへのアクセス・ハッチは、俺たちのフロントガラスから数メートルのところにあった。


逃走手術サージェリーは成功だ、チーム」ミスリルのメスを手に取り、タクティカル・ダイビングスーツの胸に取り付けられたライトを準備しながら俺は言った。「だが、手術室はまだ感染している」


サイラス・ヴァンスの船のハッチを指差す。


「俺たちの乗り物は死んだ。だが、この船の死骸にはまだ残留エネルギーとエアポケットがある。サイラス・ヴァンスは自殺するためにここへ降りてきたわけじゃない。彼は深淵の『第零号患者ペイシェント・ゼロ』を探しに来たんだ」


ダイビングスーツの襟を正す。


「将軍グリッスル。減圧ハッチの準備をしろ。『フリーマーケット』に侵入し、どんなビジネスが資本家どもを地獄へと導いたのか、突き止めてやろうじゃないか」

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