心停止(カーディオプレジア)とスラグの玉座
大窯の内部の熱は、単なる温度ではなく、物理的な圧迫感だった。かつての教皇宮殿の壮大な回廊は白いエナメルでコーティングされており、無菌のラベンダーと焼けた骨の悪臭を放つ、目も眩むような迷宮を作り出していた。
俺たちは静かに前進した。新しい黒い水銀の腕は俺の神経系と完全に同期しており、周囲の地獄のような光景とは対照的な、冷たい流動性を持っていた。
メインの吹き抜け(アトリウム)を見下ろす内側のバルコニーに到着した。そこで俺たちが目にしたのは、宮廷の産業的な悪夢だった。
吹き抜けは巨大な燃焼室へと変貌していた。中央には、黒い鉄とガラスでできた3つの巨大な炉が紫色の炎を吐き出している。その周囲には、白熱するガラスの糸で鎖に繋がれた何十人もの人間の生存者たちが、炎に投げ込まれる順番を待っていた。王の転移のための「臓器提供者」たちだ。
「組み立てライン(アセンブリ・ライン)だ」紫色の炎に顔を照らされながら、ヴァレリアが囁いた。彼女は炉の支柱を見つめた。「もし中央の熱支柱にエーテル爆薬を取り付ければ、減圧によって吸熱内破が引き起こされる。炉は自らを飲み込み、宮殿を道連れにするよ」
「切開を行え、エンジニア」炉の上の高台から目を離さずに命じた。「俺が執刀医を引き受ける。グリッスル、患者たちを解放しろ。ルナ、アラームを黙らせろ」
カウントダウンはなかった。外傷医療は待ってくれない。
バルコニーから飛び降りる。グリッスルは緑色の流星のように、囚人たちを監視していた執行者の護衛のど真ん中に落下した。ブレーキシャフトが振り下ろされ、大理石の床に触れる前に3体の磁器の忌まわしき者たちを粉砕した。
ヴァレリアは反対方向へ走り、熱配管の下を滑り抜けた。その手にはすでに鉛の爆薬が握られている。
ルナは音波の杖の先端を地面に打ちつけた。「反音」のドームが広がり、粉砕される衛兵の悲鳴とグリッスルの金属の轟音をかき消し、宮殿全体に警報が鳴るのを防いだ。
しかし、そのドームも、この家の主が侵入に気づくのを防ぐことはできなかった。
上部のプラットフォームから、一つの人影がふわりと降りてきた。
奴には脚がなかった。磁器の王の胴体と頭部は、溶けたガラスと黄金の歯車でできた浮遊する台座と融合していた。彼の体は、精神病の域に達した彫刻的な完璧さだった。汚れなき陶器の筋肉、黒水晶の鍾乳石を戴く広い肩、そして白い卵のように滑らかでのっぺらぼうな顔には、紫色の炎の王冠だけが輝いていた。
『非対称が、私の祭壇に足を踏み入れるとは』王の声は吹き抜けの隅々にまで反響した。俺の歯の詰め物が痛むような、クリスタルの共鳴音だった。
彼は右手を挙げた。頭上のガラスの天井から、何百本もの磁器の槍が無から形成され、真っ直ぐに床に向けられた。
「グリッスル! 援護だ!」前方へ身を投げ出しながら俺は警告した。
槍はギロチンの雨のように降り注いだ。
グリッスルはシャフトを使って囚人たちの鎖を払い除け、彼らを安全な窪みへと押し込んだ。
俺は隠れ場所を探さなかった。ジグザグに走り、サイバネティックな目が衝撃の軌道を計算する。陶器の槍の1本が、俺の頭蓋骨を真っ直ぐに狙ってきた。黒い水銀の義手を掲げたのは、流れるような思考だった。腕が上へと伸び、高密度な液体の盾へと変形する。槍は衝突したが、貫通する代わりに変異した金属に吸収され、毒素の中へ溶けていった。
『貴様らは生物学の計算ミスだ』王は唸り声を上げ、俺に向かって猛スピードで浮遊してくると、陶器の手に黒水晶のブロードソードを具現化させた。
「そしてお前は、誇大妄想にとりつかれた良性腫瘍だ!」側面の炉の歯車を足場にして跳躍し、浮遊する威厳に向かって身を投げ出した。
激突はタイタン級のものだった。王のクリスタルの剣が、俺の水銀の義手と衝突する。その衝撃は熱の衝撃波を生み出し、吹き抜けのステンドグラスを粉々に砕いた。眼下で燃える魂を燃料とする王の力は計り知れなかったが、彼には致命的な欠陥があった。「硬すぎる」のだ。完璧さは曲がらない。ただ砕けるだけだ。
俺の義手は、力比べで剣に勝とうとはしなかった。寄生体は俺の本能に従った。衝突の瞬間、黒い水銀は液状化した。クリスタルの剣は一時的に空洞になった俺の腕を通り抜け、王のバランスを崩した。
その完璧な勢いを利用し、人間の手でミスリルのメスを引き抜く。
下から上への弧を描いて斬りつけた。エイリアンの刃が白い磁器の胸当てを捉える。ミスリルが金切り声を上げ、貫通不可能な陶器を切り裂き、その下にある壊死した漆喰を引き裂いた。
王は濡れたガラスが砕けるような音を立てて後退し、胸から黒魔術と腐った血の間欠泉を噴出させた。
『不潔な! 伝染病め!』彼は両手を掲げた。俺の周囲の空気が凍り始め、俺の肺の中の空気を石化させるために、最も純粋な形での「チョーク熱」が発動された。
「アーサー! 爆薬設置完了!」カオスを切り裂くヴァレリアの叫び声。「心停止まであと30秒!」
王は炉に目をやり、ついにサボタージュに気づいた。彼は魔法の爆薬を解除するために振り返ろうとしたが、グリッスルがサイのような怒りとともに彼の浮遊するガラスの台座に飛び乗った。オークはブーツで君主の胸を蹴りつけ、彼のバランスを崩した。
「患者はストレッチャーの上で大人しくしてな!」グリッスルが咆哮し、王が彼女を凍らせる前に床へと飛び戻った。
その一瞬の隙が、俺に必要なすべてだった。
空気が気管支を凍りつかせる。俺は血を咳き込んだが、前進した。黒い水銀の義手が固体の形を再生する。俺はエイリアンの腱に命じ、長くて残酷な、一つの円錐形の爪を形成させた。
王が俺の方へ向き直り、原初の死を吐き出そうとした。
俺は彼を退院させなかった。
振り上げられた磁器の腕の下に潜り込み、ミスリルが開けた胸の穴へ真っ直ぐに水銀の爪を突き立てた。腕は君主の魔法の核の奥深くまで貫通した。
俺が宮廷自身の血からろ過した黒い毒素が解き放たれる。黒い水銀は磁器の王の胸郭の内部で膨張し、瞬時に固化して、彼を生かしている壊死した歯車を麻痺させた。それは完璧な心停止だった。忌まわしき者の心臓は、有毒な金属のブロックの中に凍りついたのだ。
王が震えた。王冠の紫色の炎が消え去る。有毒な金属の内部での膨張に耐えきれず、汚れなき磁器の体は耳をつんざくようなガラスの音とともに内側から外側へと吹き飛んだ。
君主は無菌のほこりの雲と、命を持たないティーカップの破片へと変貌した。
大理石の床に重々しく着地し、荒い息を吐く。腕からは煙が上がっていた。
「先生が……王様を退院させたよ!」グリッスルが囚人たちに向かって叫んだ。「中庭へ走れ! 今すぐ!」
「あと15秒!」ヴァレリアはすでに、俺たちが来た廊下へ向かって走っていた。
ルナが音波のパルスを使って宮殿の扉の最後の鍵を壊し、解放された生存者たちの群れを導いた。俺は振り返らなかった。チームの後を追いかけて走る。胸が焼けつくように痛んだが、アドレナリンが肋骨の痛みを覆い隠していた。
俺たちは白いブロンズの扉を通り抜け、空き地の大理石の庭園へと出た。
背後で、ヴァレリアの3分間が尽きた。
炎の爆発は起こらなかった。不安定なエーテルが吸熱反応、すなわち大規模な真空崩壊を引き起こしたのだ。
大窯は周囲のすべての酸素を吸い込んだ。石と磁器の塔が、恐ろしい地殻変動のような軋み音を立てて内側へと折りたたまれる。一瞬にして基礎が崩れ去り、炉が内破した。教皇宮殿全体が黒焦げのクレーターの中へ引きずり込まれ、それに続いて石灰の粉塵の衝撃波が広がり、俺たち全員を大理石の床へ吹き飛ばした。
俺たちは幾何学的な庭園の床に倒れたままだった。そこは今や、砕けた瓦礫と灰に覆われている。宮殿の絶対的で閉所恐怖症を引き起こすような沈黙は消え去り、クリスタルの木々の間を吹き抜ける自然の風の音に取って代わられていた。
白いほこりを咳き込みながら、ゆっくりと頭を上げる。
かつてヨーロッパの精神病的な完璧さの玉座がそびえ立っていた場所には、今や煙を上げる暗い穴があるだけだった。怪物工場はプラグを抜かれたのだ。
ヴァレリアが身を起こし、煤で汚れた顔を拭い、今や役に立たなくなった手の中の起爆装置を見つめた。彼女は笑い声を上げた。それは純粋な、疲労困憊した安堵の音だった。
グリッスルが立ち上がり、ズボンのほこりを払って、生存者の一人が立ち上がるのを助けた。
ルナはクレーターの縁まで歩いていった。エンパスは目を閉じて深呼吸し、微笑んだ。
「魂は解放されたわ、アーサー。鎖は溶けた。森にはもう主はいないのよ」
立ち上がり、ボロボロの白衣を整え、ミスリルのメスのほこりを拭き取ってからしまった。左手を見る。何千年もぶりにその地域の厚い雲を突き抜けた太陽の光を、黒い水銀が反射していた。その光は、痛々しいほどに美しく、クレーターを鮮明に照らし出していた。
チョーク熱は浄化された。淑女は解剖された。王は粉砕された。
ヨーロッパはもはや、死んだ貴族によって支配されるクリーンルームではなく、攻撃的で生き生きとしたジャングルだった。俺たちは腫瘍を摘出した。そして今、大陸は自らのカオス的なルールの下で、進化し、苦しみ、血を流し、そして何よりも「生きる」自由を得たのだ。
切開は深く、おびただしい血が流れたが、患者はこの回復期を生き延びるだろう。
「患者たちを集めて、歩調を安定させろ」煙を上げるクレーターに背を向け、寄生体の捕食本能がようやく臨床的な疲労へと道を譲るのを感じながら、俺は命じた。「手術は成功だ、チーム。彼らを修道院へ連れ帰り、術後ケア(ポストオペラティブ・ケア)に移行しよう。ヴェラス先生にはコーヒーが必要だ」
新生地球は、俺たちに投げつけるために、まだ多くの恐怖を孵化させているだろう。だが、クリニックが開いている限り、そこには常に鋭く研ぎ澄まされたメスが待っているのだ。




