産科的外傷(オブステトリック・トラウマ)と石英(クォーツ)の家長(マトリアーク)
マルセイユ郊外の丘を彩る樹齢数百年の木々は、ただ押し倒されたのではない。木片と樹液へと粉々に砕け散ったのだ。地震の揺れは、局地的な大地震へと変わった。
家長が林冠を引き裂いて都市の廃墟に足を踏み入れた時、空気が突如として希薄になった。彼女は俺の足元で死んでいる子供の3倍の大きさだった。子供が戦車の大きさなら、母親は「動くビル」だった。
彼女の変異は初期段階のものではない。絶対的な(アブソリュート)ものだった。暗く厚い毛皮は、黒水晶と有機的な黒曜石の分厚い地殻プレートによってほぼ完全に覆われていた。柔らかい「大泉門」も、頭蓋骨の弱点も存在しない。彼女は生物学的な戦艦だった。下顎は前方に突き出し、以前の獲物の血で汚れ、ブロードソードほどの大きさがあるシリカの歯を剥き出しにしている。
怪物が立ち止まった。獣の知性で燃える黄色い目が、俺がたった今解剖したばかりの子供の死骸に焦点を合わせた。
その後に続いた沈黙は、咆哮よりも恐ろしかった。それは、爆発の前に爆弾が酸素を吸い込む音だった。
「彼女の悲しみが……ブラックホールになっているわ」ルナは膝から崩れ落ち、音波の杖を放り出して両耳を塞いだ。過剰な共感による過負荷で、瞬時に鼻血が流れ出す。「アーサー、騙せるような『脳』がないの! 純粋な悲嘆と怒りだけよ!」
家長が頭をもたげ、その悲しみを解き放った。
それは音ではなかった。気圧の衝撃波だった。
咆哮が廃墟の広場を一掃し、古いアスファルトの板を剥がし、黒焦げの車を宙に吹き飛ばした。俺は後ろに引きずられ、スクラップの義手の血の鋼鉄の爪を地面に突き立てて滑りを止めようとした。寄生体の腱が、道路を引き裂く張力でシューッと音を立てる。
ヴァレリアはコンクリートの柱に吹き飛ばされ、ライフルが手からすり抜けた。
獣はほこりが収まるのを待たなかった。獲物を探る捕食者の慎重さで攻撃したのではない。雪崩の重みで攻撃してきたのだ。
「グリッスル、側面を突け! 正面からまともにやり合うな!」俺は叫び、立ち上がって彼女の怒りを惹きつけるために反対方向へ走った。
当然、オークは俺の指示を無視した。
グリッスルは獣に匹敵するほどの挑戦の咆哮を上げ、家長に向かって真っ直ぐに走った。彼女はエンジンブロックを攻城戦のハンマーのように振り回し、怪物の前脚の関節を狙った。
家長は減速すらしない。彼女は水晶で攻撃をブロックしたのではない。純粋な慣性を使ったのだ。巨大な体が、ハンマーが標的に当たる前にグリッスルに衝突した。オークはひき逃げされ、緑色のラグドールのように宙に放り出され、骨が軋みレンガが崩れる轟音とともに、古いパリ風のカフェの瓦礫に激突した。
「将軍!」ヴァレリアが叫び、武器を回収して凝縮したプラズマのバーストを放った。
白熱するビームが家長の側面に命中する。原初の水晶が割れ、極度の熱が微小な亀裂を引き起こしたが、彼女の怪物的な生物学は瞬時に反応した。水晶の下の静脈が青みがかった液体を送り出し、プラズマの熱を消火し、ほんの一瞬でアーマーを封印したのだ。
獣はエンジニアを無視した。黄色い目は俺に釘付けになっていた。彼女の子供の血の匂いを染み込ませたメスを持つ男に。
彼女は前進する。一歩踏み出すごとに、地面が沈み込んだ。
サイバネティックな目が彼女の体をスキャンし、あり得ない解剖学的構造を数ミリ秒で処理する。重なり合うプレート。熱再生。骨格構造における死角の不在。
診断はシンプルだ。俺にはあのアーマーを貫通できない。
しかし、整形外科学は教えてくれる。完璧に連動するアーマーなど存在せず、過度の重量は軟骨にとって最大の敵であると。
「患者はミネラル性の肥満と関節の過負荷を患っている!」瓦礫の間をジグザグに走りながら叫んだ。「足場の悪い地形で慣性にブレーキをかけるには、彼女は重すぎる!」
マルセイユの古い地下鉄駅の、むき出しになった基礎に向かって走った。そこの地面は頑丈なアスファルトではなく、地下鉄の古い路線の深淵の上に吊り下げられた、錆びた金属の換気格子だった。
家長は俺を追いかけ、道を遮る柱や車をなぎ倒していく。彼女の盲目的な怒りが、戦術的なためらいを一切許さなかったのだ。
「ルナ!」俺はタクティカル無線で呼びかけ、巨大な錆びた格子のど真ん中で滑り込んだ。「金属疲労の周波数だ! 今すぐ!」
エンパスは衝突の射線から離れた場所でヴァレリアに支えられていたが、その処方箋を理解した。震える手でルナは杖を掲げ、甲高く、醜く、耳障りな羽音を放った。その共鳴が、俺の足元の格子にぶつかる。古い鋼鉄がうめき声を上げ始め、音波の振動が錆の分子結合を破壊していく。
獣が跳躍した。
毛、筋肉、水晶の山が宙に身を躍らせ、俺の首を一撃で刎ねるために顎を大きく開いて、俺の真上に落ちてくる。
ためらいはしなかった。
人間の右腕をベルトに戻し、メスをしまう。スクラップと血の鋼鉄でできた義手を使った。寄生体は音のない電気的な咆哮とともに従った。俺は、機械とエイリアンの生物学の暴力的な力のすべてを込めて、ルナによって弱められた金属の格子を殴りつけた。
家長が俺を押し潰すほんの1ミリ秒前に、格子が崩落した。
足元の地面が消え去った。
獣は虚無へと落ち、その記念碑的な慣性が彼女を古い地下鉄駅の深淵へと引きずり込んでいく。
俺も一緒に落ちたが、底まで行くつもりはなかった。
最初の5メートルの自由落下の中で、俺はスクラップの腕を縦穴のコンクリートの壁に向かって伸ばした。寄生体の金属製の黒い爪が、登山用のフックのように鉄筋コンクリートに突き刺さる。
その衝撃で、食いしばった歯の間からうめき声が漏れた。血の鋼鉄が軋み、有機的な腱から煙が上がったが、俺の体重に耐え抜いた。俺は暗い壁にぶら下がり、荒い息を吐きながら、石英の家長が人間のインフラの暗い深淵へと真っ逆さまに落ちていくのを見つめた。
ガァァァァァァン!!
眼下での激突は、2台の貨物列車が正面衝突したような音がした。古く灰色のほこりの雲が縦穴を上昇し、俺を飲み込み、上空の太陽の光を遮った。
「アーサー!」穴の縁から、タクティカル・フラッシュライトに照らされたヴァレリアの声が響いた。
残りの数十メートルを登る。機械の義手は容赦なくコンクリートを引き裂いた。ヴァレリアが壊れたセメントの向こう側へと俺の体を引き上げるのを手伝い、俺は安全なアスファルトの上に仰向けに倒れ込み、呼吸を整えようとした。
グリッスルが、エンジンブロックを杖代わりにして、ひどく足を引きずりながら近づいてきた。額には深い切り傷があり、緑色の血が流れている。
「あのデカいメス犬を排水溝に流してやったね、先生。いい手腕だったよ」
地下鉄の駅の奥底から、音が聞こえてきた。
それは死のうめき声ではなかった。水晶が金属をこすりつける、耳障りな音だ。続いて、くぐもってはいるが恐ろしいほどに「生きた」咆哮がトンネルの壁に反響し、俺たちの周囲のほこりを舞い上がらせた。
「奴は死んでない」ゆっくりと座り直し、人間の手の関節をマッサージしながら俺は断言した。「水晶が落下の衝撃を吸収したんだ。問題を先送りしたにすぎない」
ヴァレリアは周囲の廃墟を、そして暗い穴を見つめた。
「これからどうするの? 正面からまともにやり合うことはできないよ。ウチらの装備は、この新しいハイブリッドに対処するようには設計されてない。『原初の種子』の戦術は通用しない。コンソーシアムの戦術も通用しないんだよ」
「世界は全身性の変異を起こしたんだ」俺は立ち上がった。俺たちがもはや食物連鎖の絶対的な頂点ではなくなったという事実を愛おしむかのように、肝臓の寄生体が危険な期待を込めて喉鳴らしをしている。「ヨーロッパはもはや無菌の冷蔵庫じゃない。地球上で最も攻撃的な『保育器』だ。そして下にいるあの『母親』は、俺たちを狩るためにトンネルを利用するだろう」
タクティカル白衣のほこりを払った。
「野営地を片付けろ。クリニックの物資をまとめろ。高台へ移動しなきゃならん。産後の患者が不機嫌なまま目を覚ました。診断は『即時の緊急回避』を処方している」
新生地球での最初の一日は、俺たちに厳しい医学的教訓を与えてくれた。俺たちはディープフリーズ(極低温)を生き延びたが、それはただ、新たな進化の顎の真ん中へと直接放り込まれるためだったのだ。




