走れ!!
「僕、お化けではないです」
ど、そうしてそれを!? 美里は更にドキッとした。名刺交換会という名の肝試し、そして、テヨンをお化けなどと思った事を、なぜ知られてしまったのか。
「凄い顔……してる」
テヨンの言葉にハッとして、美里は顔が赤くなるのを感じた。
CDを買うことすら躊躇っていたのに、こんな風にいきなり目の前に現れるなんて。誰だってお化けに遭遇したような形相にもなる。
「……」
「……」
沈黙が気まずい雰囲気を作り出そうとしていた。
何か言わなきゃ。
「な、何でこんな所……」
「キャーッ!!」
突然聞えた悲鳴に、美里の蚊の鳴くような声はかき消された。
「やっぱりテヨンだ!!」
声の方を見たテヨンと美里の視界に、ペンらしき女の子三人がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。
この状況って、もしかして、もしかしなくても凄くヤバ……。
『ヤバイ!!』
韓国語でそう叫んだテヨン。
「家どっち!?」
「あっち!」
テヨンの咄嗟な質問に、美里もつられて答えた。
「O.K!」
バッと奪うように美里の手を取り、駆け出すテヨン。
「えぇ~っ!?」
何で!? 何で? 何でこんな事になっちゃってんの?
混乱しながらも、とにかく必死にテヨンについていく美里。繋いだ手の先には、テヨンの後姿。
見上げる程の背の高さ。揺れてる髪。広い肩……。美里の頭の中を、ふと流れ始めた曲。
『二人の時間を始めよう~』
いつかの夢で、手を繋いで歩いた相手の顔は見えなかったけど、確かにテヨンを感じてた。あれはこの時を知らせる予知夢だったのかな。
そんな事をボ~ッと感じていた美里の目に、見慣れたアパートが飛び込んできた。ハッと我に返り、繋いだテヨンの手を引っぱり寄せた。だけど、直ぐにテヨンに引っぱり戻された。
「ストーップ!!」
反対側の手でテヨンの腕を掴んで叫ぶと、やっと止まってくれた。
「ハア、ハア……何?」
「ゼエ、ゼエ……」
息を切らしながら聞くテヨンと、今にも倒れそうで声も出せず、アパートの方を指差すジェスチャーだけで必死の美里。
「ブッ! アハハー!!」
突然お腹を抱えて大笑いするテヨン。
「ぜえ……な、何?」
「顔が、面白いことになてる」
テヨンの言葉に、ハッと自分の姿を想像した美里。顔から火が出る思いがした。それにしても失礼なヤツと、キッとテヨンを睨みつけた。
「……ミアネ。ごめなさい。家ここ?」
「そうだけど」
つっけんどんに美里が答えた。
「分かた」
スタスタとアパートに向かい歩き出すテヨン。
「待って! 何処に行くの?」
「キミの家」
何て? 流石に倒れそうなんですけど……。




