記憶
『ずっと、ず~っと応援してます』『テヨン サランへ』『I Love テヨン Forever』
テーブルに山積みされた名刺。ペンからもらった愛あるメッセージ。その一つ一つに目を通し、読み上げているテヨン。こうして日本でも沢山のペンに支えられて、活動できている喜びを実感する。
ふと思いだしたようにソファーから立ち上がり、ハンガーに掛けてあるジャケットのポケットから、1枚の名刺を取り出した。
名刺交換会で自分の名刺を一方的に渡し、テヨンの名刺は受け取らず、逃げるように去っていったペン。その不可解な行動と同じに、名刺に書かれた“へんてこ”なメッセージも、テヨンを悩ませていた。
昨日のマネージャーとの会話を思い返すテヨン。
* * *
『高橋さん、このメッセージの意味は何ですか?』
『ん? 《コーヒーは嫌いじゃなかったですか?》 なんだ? 普通はコーヒーは嫌いじゃないですか? 若しくは、好きですか? だろうな。どっちにしろ、メッセージとしては変わってるな』
そんなマネージャーの言葉を聞きおわらないうちに、テヨンは考え事をはじめていた。
コーヒーといえば、ある日を境に日本で飲む缶コーヒーは、これと決めているものがあった。
* * *
今しがた飲み終わったその缶コーヒーの空を、カラカラと振った。途端、テヨンは声をあげた。
「そっか! そうだったんだ!」
謎が解けた単純な嬉しさで、フッと笑いがこみ上げた。
まだ肌寒かった季節、マネージャーの監視から逃れるように宿舎から脱出したあの日。公園通りのベンチに腰掛けていた自分に、突然『男の子!?』と声をかけてきた女性。その人物と、名刺交換会での印象的な女性とが、テヨンの中で一致した。
スっキリしたテヨンだが、それもつかの間、また頭を悩ませる。
「でも何で逃げたりしたんだろう。僕の名刺も受け取らずに」




