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離さない  作者: mimayu
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3/12

天使か悪魔か

「洋子のやつ、なんで大事なものを置いてくかね」

 ソファーにもたれ、おやすみ前のコーヒーを飲みながら、親友の忘れ物のCDを聴いている美里。

 完全な確信犯だな。私も巻き込むつもりで。……って、さっきから繰り返し聴いてる私も私だけど。

「East Top……か」

 CDジャケットを手に取り、写真の男の子たちに目をやる。

若いな。などと思いながら、やはり美里の視線は、その中の一人に釘付けになる。洋子がまるで、少女みたいに目をキラキラさせながら、メンバーひとりひとりの名前を教えてくれたけど、それどころじゃなかった。覚えたのは、洋子一番のお気に入りだという“ドフン”って子と……。

「テヨン……君。あの時の“エンジェルスマイル君”は本当に君なのかい?」

人差し指の先で、ジャケットのテヨンを突きながら美里は思う。

まさかね~。他人の空似って事もあるし。

「でも……」

 あの時、エンジェルスマイル君の隣にいた男の人が呼んだ名前は、確かに“テヨン”だった。 

「……あ~もう! 考えない!」

自分に言い聞かせるように言い放つと、美里は冷めてしまったコーヒーを一気に飲み干し、ソファーに横になった。流れているEast Topの曲と歌声が、耳に心地いい。

「うん。確かにいい曲だよね」

 そう呟くと、美里はそのまま深い眠りへと落ちていった。心のどこかで、夢が見られますようにと祈りながら。テヨンが出てきたあの夢の続きを……。


*  *   *


洋子からのストーカー並の着信履歴に気付いたのは、美里が飲食店のパートを終えた、翌日の午後5時過ぎだった。

「お疲れ様でした。お先に失礼します」

 パート先のおばさま達に挨拶を済ませ、携帯片手に従業員出入り口から外へ出たところで、美里は小さくため息を漏らした。

「ったく。留守電に用件も入れずに」 

 そうぼやきながら、リダイヤルボタンを押そうとしたところで、美里の携帯の着信音が鳴った。最近ダウンロードしたばかりの着歌。ディスプレイが、洋子からの10回目の着信を告げている。

「はいはい」

 そう呟いた途端、背後から大きな声がした。

「その着歌! おー罠に掛かったね。ハマッタね! East Topに!!」

「洋子! もうビックリさせないでよ!」

 ギョッとして振り返った美里の前に、満面の笑みを浮かべた洋子が居た。

「いや、これはその、前の着歌に飽きたから何となく……」

しまったと言わんばかりに、思わず言い訳っぽいセリフを口にした美里。自分でも何故こんなに焦っているのか分からないまま、続けた。

「てか、これじゃあんた本当にストーカーじゃん!」

「誤魔化さなくていいのだよ、美里くん。そっか~、気に入ってくれたんだ。じゃ、話は早い」

 不敵な笑みを浮かべる洋子に、美里は嫌な予感がした。

「何?」

 訝しげに訊ねる美里に、洋子が答えの代わりに差し出したのは1枚の紙切れ。これ~。と言って、ヒラヒラさせながら、また笑みを浮かべる洋子。

「だから何これ?」

 美里がそう聞くと、今度は辺りを警戒するようにキョロキョロした洋子が、耳打ちした。それを聞いた美里は、即座に言い放った。

「は!? 何言ってんの! 無理無理、その日はフルタイムでパートだし!」

「まだ日にち言ってませんけども?」

 洋子にそう言い返され、ますます焦る美里。

「いや、だから、その……」

 最早、二の句が継げない美里を追い込むように、洋子が続けた。

「じゃ、そういう事だから。また連絡するよ。ット マンナヨ♪」

 そう言い残し、軽やかな足取りで去っていく親友の後姿に、真っ白な羽と、真っ黒な尻尾が生えているように見えた。まるで天使なのか、悪魔なのか、見当がつかない。

 無理よ、ムリムリ! とにかくダメなのよ!

「名刺交換会? East Topと? ムリムリ、無理~!」



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