↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンジュと白のペンダント  作者: 北村 清
Case 2アシールの奥さんがやって来た

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/47

猫達は勇敢に闘いました

真っ先に動いたのはブランシュだった。


モモンガのように飛んで行き、ゾンビの背中に体当たりしたのだ。

ゾンビが動きを止めて振り返った。床に降りたブランシュは再び飛びかかる。人間だった頃の緩慢な動きからは想像がつかないほどのスピードでゾンビが足を振り上げた。足にぶつかったブランシュは弾き飛ばされ

「ぎゃん!」

と悲鳴をあげ床に転がった。


間髪入れずにお兄様とリュッカもゾンビに飛びかかった。お兄様がナイフを握った右手に噛みつき、リュッカが左手に噛みついた。


ゾンビに噛みつかれたらゾンビになってしまうが、ゾンビに噛みついたらどうなるのだろう?

と考えている間に、ゾンビは左腕をブンッと振りリュッカを床に叩きつけた。そして左手で、尚も右手に噛みついているお兄様を引っぺがしお兄様を階段の手すりに叩きつけた。

私はお兄様に駆け寄った。

階段の手すりは、人間なら通り抜けられないが猫なら通り抜けられる幅である。お兄様が階下に転落するのではと思ってひやりとした。


ブランシュが立ち上がり、勇敢にも再び飛びかかる。


その間。

階下では阿鼻叫喚の騒ぎだった。ナイフを持った男が複数の猫に襲われているのだ。非現実的な光景に客が出口に殺到し、群衆雪崩が起きている。


「落ち着いて、落ち着いてください。大丈夫です!」

と無責任に言っている店員が、客に押し倒されて踏まれていた。


ニ階と三階の間の踊り場にいるミルカは姉のエスターさんを盾にして「きゃーきゃー」と騒いでいた。支配人はその横で腰を抜かしている。さっさとお嬢様方を連れて逃げろよ!と叫んでやりたい。


勇気を持って闘う猫達の姿を見て私も己を奮い立たせた。

元々私は、女子をからかうアホな男子に飛び蹴りをくらわせる武闘派女子だったのだ。今こそくらえ!ワニの尻尾蹴り‼︎


私はゾンビの足に飛びかかった。

しかし!

目にも止まらぬ速さで動いた左手に首筋をつかまれ投げ飛ばされた。


このスピードで床に叩きつけられたきっととても痛い!

と思ったが、私は硬い床にではなく柔らかい何かに激突した。三毛猫王子が私の落下地点に回り込みクッションになってくれたのだ。

おかげで私は無事だったが、王子は「ぐえ」と言ってのびていた。


「申し訳ありません、殿下!」

「いや、無理をするな。きみは騎士ではない。一般人、いや一般猫なのだ。」

王子が腰をさすりながら起き上がった。


その間にも、騎士猫三匹は攻撃を繰り返している。しかし、おそらくゾンビには痛覚が無いのだろう。まるで攻撃が通らない。しかもこのゾンビ、人間だった頃よりも体幹が強い。決定打が決まらないまま、何度も床に叩きつけられた騎士猫達はやがて動けなくなった。


「うがあぁーー!」

とゾンビは叫んで階段を降りて行った。私と王子とアシールは後を追った。四階と三階の階段の途中から踊り場を覗き込む。下を見るとこの位置の真下にゾンビがいる。ゾンビはミルカとエスターさんに少しずつ迫っていた。

ミルカと支配人の絶叫が響き渡る。

アシールが手すりの隙間から飛び降りようとして怯んでいた。


「殿下!」

恐怖に震えながらアシールは言った。


「足がすくんで自分では飛び降りれません。どうか私を奴の上に突き飛ばして落としてください!」

「わかった!」


情緒(じょうちょ)も躊躇(ちゅうちょ)もなく王子はアシールを突き落とした。


運動神経ゼロのアシールは空中で姿勢を整える事もできず、足を下にそろえたまま前脚を横に広げ垂直落下して行った。

そして、そのままキューピ◯のポーズでゾンビの頭上にドスン!と落下。思わず私は言ってしまった。「愛は食卓にある」と。


さすがに相当の衝撃があったようだ。

ゾンビはよろめき、ふらついた後階段を縦回転で転げ落ちて行った。『新撰組』系映画に出て来る階段落ちのような激しさだった。


「きゃーきゃー、いやーー!」

ゾンビがすぐ近くまで転がり落ちて来てミルカが尚いっそう叫んでいる。うるさい。


ゾンビの回転に巻き込まれたアシールは、エスターさんの足元で完全にぐったりしている。私の横で王子が

「アシール。いい奴だったのに。」

と涙ぐみながら言っていた。その割に何のためらいもなく突き落としましたよね、あなた!


「墓は豪華なものを建ててやる。」

「殿下。アシールさん、生きてますよ。」

エスターさんに強く抱きしめられ、ジタバタともがいている姿が見えた。あの位置で抱きしめられるとダイレクトに胸に埋まるもんね。


「さすがにあっちは死んだよな?」

王子が、曲がってはいけない方向にいろいろと曲がって倒れている物体Xを見ながら言った。それはどうだろう?と私は思う。倒したと思っても倒しきれていない。それがゾンビだ。そもそもアレはとっくに死んでいる。


とか思っていたら、やっぱり動いたよ!!!


何で、首とか足とかそんな方向に曲がっていてまだ立って動けるの⁉︎

ペンダントさん、いいかげんにしてーー!


ガラス窓が割れそうなほどの絶叫をミルカがあげる。エスターさんはアシールをかばうようにしゃがみ込んだ。私と王子はエスターさんの側に駆け出した。


ゾンビはナイフをめちゃくちゃに振り回している。


その時!


ゾンビの後方から剣が一直線に飛んで来てゾンビの背中に突き刺さった。位置的に心臓を貫いたようだ。


そしてその剣を投げたのは!


「お父様!」

そう叫びそうになって、私は慌てて口を押さえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。