表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンジュと白のペンダント  作者: 北村 清
Case 1 黒豚はなぜ殺される

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/27

事件の調査を開始する

しかし、ここで重要な問題が!


閉ざされたドアを開けようとしたのだが、ドアノブに手が・・いや前脚が届かなかったのだ。


何てこった!

これが障子や襖なら、猫の手でもカリカリすれば開けられるのにノブのついているドアは開けられない。どうしたらいいの⁉︎閉じ込められちゃったよ!


と思っていたら、ブランシュがノブの高さまでジャンプしてグニっとノブを回しドアを開けてくれた。


「すごい、ブランシュ!」

「惚れた?」

「うん。惚れた、惚れた。」


「僕だって、本気を出せばそのくらい!」

「殿下、そんな事で張り合わないでください。」

お兄様が王子に苦言をていす。


私は部屋の外に出た。


廊下には人がいっぱいいた。キョロキョロと周囲を見回した。


ミステリー小説が大好きでいろいろ読んでいた私だが、どちらかというと21世紀に発表された作品より19世紀や20世紀の初めに発表された作品が好きだった。

その中でも特に好きだった探偵はホームズでもポアロでもなく、ノーヴェンバー・ジョーだ。


ハンサムだし、常識人だし、探偵としての観察力がすごいし、灰色熊グリズリーが襲って来ても闘って守ってくれそうだし。


正確に言うとノーヴェンバー・ジョーは探偵ではない。森で暮らすレンジャー兼ハンターだ。

だけど誰よりも森に詳しくて、森であった些細な違和感や異常に必ず気づける人なのだ。私も彼と同じようにこの場の違和感を探す!

そこに必ず答えがあるはずだ。


ただ、人間ってこうやって見るとデカいわぁ。

気分はミステリー小説の探偵というより、進◯の巨人のモブキャラだわ。


とりあえず気を取り直して耳を澄ませてみたら、まず聞こえて来たのはキャンキャンと甲高い声だった。


「だから知らないって言っているでしょう!あんな気色悪いもの見せられて私の方が被害者よ‼︎」


・・・・。

確かに見てて気持ちの良いものではなかったが、被害者は一応王族なのだ。その言い方は、ひどくないだろうか?


叫んでいるのは10代の少女だった。豊満な胸と豊満な腹を、布の少ないドレスで覆っている。舞踏会会場で一番私を睨んでいた女の子だ。


きっと彼女が『マリーカ公女』なのだろう。彼女にはセブラン王子に変な薬を盛った疑惑もある。今のところ殺人犯人候補の筆頭だ。


「何故、リュミエール侯爵家の部屋をお訪ねになったのですか?」

そう聞かれるとマリーカは、にたあっと笑った。


「セブラン殿下に誘っていただいたのよ。二人でロマンチックな時間を過ごしましょう、って。ふふ。」

私が振り返ると、三毛猫はぶんぶんぶんっ!と首を横に振った。


「しかし、姫君はすっぽかされたのですよね。」

と役人が言うと

「すっぽかされてなんかないわ!殿下は必ず来てくださったはずよ。」

と虎のように吠えた。


「何故、密会の現場にリュミエール家の部屋を選ばれたのでしょうか?」

「そんなの決まっているわ。あの身の程知らずな小娘に誰がセブラン様の真実の恋の相手か見せつけてやる為よ。あの女、ずうずうしくもセブラン様と腕なんか組んで寄り添ったりなんかして。まな板のような胸の分際で!」


この女のせいで、リュミエール家の部屋が殺人事件の現場になってしまったようだ。何て迷惑なんだ!

今のセリフを面と向かって言ってくれたら、喜んで身を引いたのにさ。


私は彼女の後方にいた女性に視線を移した。マリーカ公女の姉のエミリカ大公妃だ。

はっきり言って妹と似てない。造作もだが、かもしだすオーラが全くの別物なのだ。

今も、ぷんぷん怒っている妹と違い、今にも倒れそうな顔をして両脇を侍女達に支えられている。役人に質問されてもろくに声が出ないみたいだ。


似ているのは髪の色だけで顔も体型も似てない姉妹だが、着ているドレスは二人とも紅色だった。ただし妹のドレスと姉のドレスでは、使用されている布の量が倍くらい違う。勿論、姉の方が多いのだ。妹の半分の量しか布がなかったら、もうそれは一種の事故だ。


実は今日の舞踏会、我が国の王妃様が赤いドレスを着るので他の女性貴族は被らないように!と通達があった。だから我が国の貴族で赤いドレスを着ている人はいない。私もセブラン王子の瞳の色と同じ青色のドレスを着た。

通達を知っていて敢えて赤いドレスを着たのだとしたら、姉妹揃っていい根性をしていると思う。日も沈んで少し冷えて来たからだろうか?大公妃は更に今は、舞踏会会場では巻いていなかった赤いストールを首に巻いていた。


「この部屋に入って行く人を誰か見た人はいませんか?」

と聞いている人がいた。ざわざわするばかりで誰も返事をしない。


だけどおずおずと手を挙げた人がいた。なんとデルフィーヌ様だった。


「私が廊下を歩いていた時、背の高い金髪の方が入って行かれるのを見ました。」

「あなたは?」

「デルフィーヌ・ド・ブリクールと申します。」

「ちなみにあなたは何故、ここにいたのですか?」

「サラ夫人の様子を見に行きました。疲れたから控室で休む、と言っておられましたので。」


サラ夫人って誰やねん?と思って、お祖母様だという事をしばらく経って思い出した。というかお祖母様が「間違いなく私の様子を見に来てくれた」と言い出したからだ。「それは何時ごろ?」と重ねて質問されたが、お祖母様もデルフィーヌ様も「わからない」との事だった。


「私も見ました!背の高い金髪の男性が部屋に入って行くのを。」

と若いメイドが言った。「私も」と他のメイドも言い出した。一人が言い出した事で皆言い出しやすくなったようだ。


「やっぱり、セブラン様が来てくださっていたのよ!セブラン様は金髪だもの。」

鼻の穴を膨らませながら、マリーカ公女が叫んだ。私は前脚で狭い額を押さえた。公女さん。あんた、セブラン王子が殺人事件の現場に入って行ってそこから逃げた。ってずばり言っちゃったんだよ!


廊下にいる人達の間になんとも気まずい空気が漂う。

隣国の人達もヤバい!と思ったのか

「マリーカ様。部屋に戻りましょう!」

と言って引きずるようにマリーカ公女を連れて行った。


「ちょっと何をするのよ!」

とマリーカ公女が金髪を振り乱しながら抵抗したが、結局連れて行かれてしまった。


「エミリカ様も部屋に戻りましょう。」

と侍女達が大公妃に勧めた。


私は彼女達の後をついて歩き出した。隣国の人達の言う事をもう少し聞いてみたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ