古の秘宝を発動する
「殺されるかもしれない、と言っていて本当に殺されたのか?」
呟くリュッカの声はかすれていた。
「あるいは『古の秘宝』の情報を流そうとしたから殺されたのかもしれません。」
「セブラン殿下の『敵』って誰の事なんですか?」
と私は聞いた。4人はお互いに顔を見合わせ口ごもった。よその国の話題と違って安易に話せる事ではないのだろう。私も正直聞いた事を後悔した。
「王妃様と王妃様を支持する一派とか・・かな。」
とお兄様が教えてくれた。
セブラン王子の母親は王子が幼い時に亡くなっている。現在の王妃様は王子にとって継母なのだ。
セブラン王子が失脚、もしくは処刑されれば、セブラン王子の異母弟が次の王太子に選ばれるだろう。
どこの王族も異母兄弟同士で大変だ。
「王族って大変だね。」
とぽろっと言ったら
「だから、セブラン殿下はアンジュ嬢と結婚したがってたんだ。」
とリュッカが言った。
「・・・え?」
「伯父は歴史ある家門の侯爵、父親は騎士団長、母親は外国の王女。物理的に最強だろ。」
「だから、この場所が『犯行現場』に選ばれてしまったのかもね。」
とブランシュが言った。
・・・・。
そうだよ!
もしも、王子を揺り起こして皆ですたこらさっさと逃げ出したら、犯人と疑われるのは伯父様か、お父様か、お兄様なんじゃないの!だってここは、リュミエール家の部屋なんだもの!
「お兄様、これは・・これは一大事ですよ!大変ですよ‼︎」
「何を今更・・・。」
お兄様が重い口調で言った。
だけどいったいどうしたら良いのだろう?
このおっさん、セブラン王子に『黒豚』呼ばわりされただけあって、めっちゃ太っているのだ。きっと体重100キロ以上ある。とてもじゃないが持ち上げられない。仮に持ち上げられたとしても、窓には侵入と転落を防止する為格子が入っている。入っていなかったとしてもここは3階だ。窓から出る事はできない。だからと言って死体を運び出すのに王宮の廊下を使うわけにもいかない。何とか人目につかず運び出せたとしても、部屋の中は血まみれなのだ。何か事件が起こった事は一目瞭然である。
どうすればいいの!
と思っていたら。
突然、誰かがガチャガチャと外からドアノブをひねる音がした。私は悲鳴をあげてしまうところだった。
お兄様が鍵をかけていたのでドアは開かなかった。
「お嬢様。鍵がかかってますわ。」
とドアの外から声がする。
人んちのプライベートスペースにノックもせずに入り込もうなんて、どこのお嬢様だよ!
「お嬢様。従僕に言って鍵を借りて来ます。ここでお待ちになっていてくださいませ。」
待て、こらーっ!
私達はパニックに陥った。この部屋の中にもうじき人が入って来る。逃げ出そうにも窓には格子が入っているし、ドアの外には『お嬢様』とやらがいる。
どうすればいいんだ⁉︎
このままでは私達が殺人犯だと誤解される。相手は隣国の要人だ。誤解が解けなかったら、重い処罰が待ち受けている事だろう。
私は無意識のうちに首に下げたペンダントを触っていた。
みんなを動物に変身させたらみんなの事は守れるのではないだろうか?
勿論コレが、過去世で使ったペンダントと同じ物とは限らないけれど。でも、もしもみんなを動物に変える事ができたらみんなの事は救えるかもしれない!
私自身は殺人犯と誤解されるだろう。でもみんなを助けられたら過去の私の罪の贖罪になるかもしれない。
私は決意を固めた。
でも、何の動物にする?
豚だけは絶対駄目だ。食用ではない動物にしないと。
となるとウサギとかアヒルとかもアウトだ。
もふもふとした可愛い動物が良いけれど、レッサーパンダとかラッコにしたらリュミエール家が密輸をしていると誤解される。
この場にいてもおかしくなくて、食用じゃなくて、ネズミやコウモリや熊みたいに駆除の対象にされる動物じゃなくて、そんな動物『アレ』しかない!
ガチャガチャとサムターン錠が動く音がした。間もなくこの部屋に人が入って来る。
お願い。もう一度だけ奇跡よ、起きて!
私はペンダントを握りしめて叫んだ。
「猫になれ!」




