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EX2.彼は普通の薬屋だといつも言う

Ileina: Behind Her Gaze


「料金は君の笑顔で」


 そう言って、ふんわり笑った人がいた。

とある薬屋の店主、ロイ。


 本人曰く普通の薬屋。



 彼からは、なんか不思議な雰囲気がしていた。


 そして優しい。

 

 私は口数が少なく、ゆっくり喋ってしまいがちだが、彼は待ってくれるし、察してくれる。


 昔から私の周りにはモンスターがいた。


 それでいいと思っていた。


 だから人とのコミュニケーションなど取ろうとしなかった。


 それでもふと時間が空くと彼のことを思い出し、気が付けば薬屋に着いている。


「こんにちは、イレイナさん」


 彼は、薬を買うわけでもない私を邪魔者扱いしなかった。


 だから余計に落ち着く場所になった。


 ある日、冒険者ギルドで軽い依頼をこなして手続きしていると受付嬢が話しかけてきた。


「あのぉ…イレイナさんに指名の依頼が来ているのですが」


 ちらりと見ると、数日間、王都を離れなければならない依頼だった。

前なら、何でもかんでも引き受けていた。

けれど、ふと彼の顔が頭をよぎった。


「断って」


そう、口から出てしまった。


 慌てる受付嬢を無視して薬屋へ向かった。

指名依頼だから、成功報酬もよかった。

なのに、なんで断ったのか。

毛玉をもふもふしながらそんなことを考えていたけどよくわからない。


「あ、いらっしゃい。イレイナさん」

「ん」


 私はいつもの場所に座る。


「いらっしゃいませにゃ!」


 最近薬屋に人が増えた。


「おじいちゃん、ミャンが貼ってあげるにゃ~」


 奴隷の猫と、


「む、店長殿、昼からこんなに食べるのか?」

「逆に食べなさすぎです。アルリアさん騎士ですよね?」


 ほかの常連。


 あんまり静かな場所ではなくなった。

すこし椅子を彼のそばに寄せる。するとすぐに彼は気が付きこちらに話しかけてくれる。

でもあんまり話すことがない。

私が何も用事がないことを確認すると、彼は仕事に戻ってしまう。

彼は仕事中だから当たり前。


「ばいばいにゃー、イレイナ!」

「ん」


 夜、閉店後、彼に用意してもらったご飯を食べてから借りている集合住宅の部屋に帰る。

ミャンは薬屋に住んでいる。

私は帰る。


寂しい。


なぜ?


分からない。


「イレイナさん!先方がどうしてもとお願いしてくるのです。成功報酬も上乗せしてくださいましたし、どうにかお願いできませんか?」


 朝、冒険者ギルドへ行くと受付嬢に熱心にお願いされた。というか掴んだ手が強くてちょっと怖い。

本来指名依頼は冒険者としてありがたいもの。だから断っている私を、怖い目で見る人もいた。


「…わかった」

「ほんとですか!ありがとうございます!」


 彼には、いつもご飯を作ってもらっている。

タダでもらうのは、気になる。

成功報酬が入れば今までのご飯代を払えるかもしれない。

この時点では、そんなことを考えていた。


依頼達成後、とりあえず家へ向かうと、何人かが荷物を運び出しており、何人かの騎士が集合住宅の周りにいた。

近づこうとすると、騎士に止められる。


「おっと、お嬢ちゃん。悪いが立ち入り禁止だよ。中の人に用事でもあったのかな?」

「…家」

「え?なんだって?」

「住んでた」

「いや、もう住人は退去したはずだからここには知り合いはいないと思うぞ」


 騎士にめんどくさそうに対応されてしまう。


「私、住んでた」

「え?あぁ!そういうことか。すまないね。実はもうここは住めなくなってしまっている」


 そのあと、他の騎士から説明を受けたが大家がこの集合住宅を違法麻薬の取引所として使っていたとのことで建物全体が調査対象で、住民は強制退去らしい。

説明を受けた後、騎士の詰め所で取り調べを受けた。

依頼で数日いなかったとギルドの受付嬢に証明してもらって、さらに最近は家にいないことが多かったと言うと、ようやく解放された。

部屋の物は騎士団で預かってくれているらしく、住むところが見つかったら届けてくれるらしい。


 住むところ。


 どうしよう。


 そう考えていたら、気が付けば薬屋の前に立っていた。


「家、なくなった」


 と伝えた時の彼はひどく驚いていた。

けれど、すぐにふんわり笑った。


「うちへどうぞ」


たぶんこの時から、


私の中では


彼は普通の薬屋ではなくなった。

召喚術師 イレイナ 第二イベント発生中

薬屋   ロイ   ビビりまくり

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