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5.うちはヒロイン達のたまり場になるような薬屋ではないはず

※一部欠けていた文章を追加しました。2026/7/27

※一部ロイの口調を修正しました。2026/8/2


 ここはただの薬屋である。

そんな薬屋に新しい従業員が来た。本来は勇者のヒロインなのだが。


「いらっしゃいませ!にゃ!」


 なぜこうなったのか…いや、出会った以上見捨てることはありえない。

だが勇者は大丈夫なのだろうか。

いや、ミャンはうちに住み込みだが別にイレイナやアルリアはそうではない。

自分が知らないだけで、勇者と交流があるに違いない。


「…おはよ、ロイ」

「はい、おはようございます」


 交流あるよね?


「朝からすまない店長殿。包帯が欲しいのだが」

「あぁ、アルリアさん。いつものですね?こちらです」


 交流…あるかな?


「ロイ様!お届け物にゃ!」


 ミャンが耳をピコピコさせながら荷物を持ってくる。


「お!きたきた!ありがとうミャン!」


 頑丈な木箱に入った荷物を受け取り、そっと調薬室の奥へしまっておく。


「…またそれ」

「そうなのかにゃ?」

「高級素材」

「にゃ!やっぱりロイ様は危ない薬屋なのかにゃ?」

「む、そうなのか?」

「違う!自分用です!」


 女性陣がこちらに疑惑の目を向けている。

ちょっと好奇心を満たすための研究材料だというのに…失礼な…おや?


「あ、ミャン、クリーム塗り忘れているのでは?」


 ミャンの手は、相変わらず年頃の女性とは思えないほど荒れているし、爪が綺麗ではない。

なので、真っ先にハンドクリームなどを渡して塗るように言ったのだが。


「あ、ごめんなさい!」


ミャンは慌ててしっぽをピンと立てて、いそいそと手にクリームを塗りこむ。


「ミャン殿、手の保護は大事だぞ」


 アルリアの発言に賛同するようにイレイナがこくこくと頷く。


「いざというときに、爪や指先のささくれに気を取られてしまったら、手元が狂ってしまうからな」


 イレイナは「ん…?」と言わんばかりに首を傾げている。

ちなみに俺も何の話なのか分からない。


「騎士様!確かにそうにゃ!ミャン、気を付けるにゃ」

「え、えぇ。お願いしますね…」


 なにが確かになのかは…探らないでおこう。なんとなく察してしまう。

将来もし、勇者のところへ行くことになった時のために万全な状態に整えてやろう。


「おっと、そういえば店長殿、知っているだろうか。東の森で暴れていたルナティックキメラが討伐されたとの報告を受けた。これで物資の流通が回復するだろう」


ルナティックキメラはゲーム内で最初に討伐を推奨されるボスだ。前半ストーリーに登場する六体のボスのうちの一体だ。

それが倒されたということは。


「それはもしや、勇者ですか?」

「ああ、勇者カイン様だ。冒険者ギルドから討伐依頼が届き、準備しているところだったのだが、一人で倒してしまうとはな。さすがは勇者様といったところか」


 は?一人?


「一人…ですか?仲間はいないのですか?」


 聖剣エンゲージカリバーはカインが生まれながら持つ、彼だけの聖剣だ。

ゲーム内では、カインがヒロインたちと絆を結ぶたびに、その力を増していく。

炎を宿したり、傷を癒したり、さまざまな耐性を得たり、結ばれた相手によって追加される能力も異なる。

ヒロインたちとの交流は恋愛要素だけではなく、勇者を強くするための育成要素なのだ。

それなのに、一人で戦っただと?


「ああ、私も驚いた。戦闘したのは勇者様だけらしい。勇者様と懇意にしている貴族の者からの報告故に、誇張されているということはないはずだ」


 確かゲームでは、戦闘メンバーには入らないがゲーム内の施設がアンロックされるタイプのヒロインもいる。

しかも貴族ということであれば限られてくる。

アルリアの口ぶりから当然騎士団は関わっていない。イレイナも今知ったような顔をしている。ミャンはうちで働いている。

まさかここにいる優秀なヒロインたちを放置して一人で倒してしまうとは。

まぁ、比較的弱いボスなので不可能では、ないが。


「…勇者、すごい」

「すごいにゃ!」

「ああ、そうだな」


 お、ヒロインたちが興味を持ったようだ。ミャンもしっぽをゆらゆらしている。


「…ロイ」

「はい?」

「毛玉がおなかすいたって」


 はい?


「朝ごはん食べてないにゃ?」

「今日はたべてない」

「む、朝ごはんは毎日食べなくてはいけないものなのか?」


 はい??


「朝ごはんを食べないとロイ様に怒られるにゃ!」

「…わたしおこられる?」

「おっと、話し込んでしまったな。私はこれにて失礼」

「アルリアさん?お待ちいただけますか?」

「う、うむ」


 この人この前うちで何を買っていったと思っているのだ?


「この前、空腹は腹の不調に繋がると説明しましたよね?」

「…すまない」

「ロイ、私は?」

「え?」


いや、なんで怒られ待ちをしているの?

というかさっきまで勇者の話ではなかったか?なんでこうなった?

なんでヒロインたちの食事管理まで俺はしているのだろう?


うちは普通の薬屋のはず。

薬屋   ロイ   ヒロインのお世話係

召喚術師 イレイナ 当たり前のように入り浸る

獣人奴隷 ミャン  クリーム塗り忘れ

王国騎士 アルリア 再指導される

召喚獣  毛玉   はらぺこ

勇者   カイン  ソロプレイ疑惑

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