17.うちはヒロインに順番を争われるような薬屋ではないはず
ルミナとイレイナがテントをサクサク立てて、ミャンはリリに指示されながら火の準備をして…俺はというと…
「いやー助かったよ!」
「いえ、応急手当ですので」
なぜか臨時診療所状態だ。いやだって医療に携わる者としてはケガをそのままにしてる人を見過ごせないし。
とはいえ、割と利用者がいた。旅の途中だと多少のケガは放置しがちなのだろうか。
ちなみに中には少し横暴な人がいたが…。
「…」
「な、なんだよ…」
「…ウゥー…」
「わ、分かった…払うからやめてくれ…」
フェンリルが睨みを効かせてくれた。なお、毛玉が必死にはねるが、特に何も起こらないようだ。
「きゅ!きゅ!」
「きゃー!可愛い!何この子!」
いや、周りの女性冒険者にモテてるな。
本当にあの毛玉は何なのだろうか。ゲームにいないし、未使用イラスト集にもいない。イレイナとの会話にも出てきたことはないはず。
「ロイさん!準備できたわ!」
「ロイ様、本日は私が調理いたしますね」
おっと、呼ばれた。臨時診療所はここまでだな。
「きゅー!」
「わふっ?」
なぜか毛玉も収入があったようだ。木の実を咥えている。
「ところでロイ様。こちらは?水ではないですよね」
リリが瓶を抱えてきた。あ、それはアレだ。
「ええ、それは俺が調合した――」
「おまちください。ロイ様、確認いたしますが、先ほどのエナジーバーと同じくこちらも…?」
「は、はい。そうですが…」
「…厳重に管理します」
何故だ。
「メイドの直感です」
思考まで読まないでほしい。
夜の時間になり、焚火を囲みみんなで夕飯を食べる。うん、実にファンタジーだ!
「…ロイ、なんか嬉しそう?」
「え、そうですか?」
「うん。嬉しそう」
イレイナがふんわり笑いかけてくる。そんな顔イベントCGにありませんが!?
「ロイ様は旅が好きにゃ?」
ミャンが耳をピコピコさせながら聞いてくる。
「まぁ…好きというほどではありませんが…」
イレイナ、ルミナ、ミャン、リリを順番に見ていく。本来、勇者の隣にいるであろうヒロインたちを。
「皆さんとこうしている時間が、嬉しくて」
心の中からそう思う。まさか彼女らと野営するなんてね。
「…そう」
「ず、ずいぶんとはっきり言うわね…」
「う…あ…」
「…そう、ですか…」
ん?なんでみんなうつむいているのだろうか。
「きゅー!」
「わおっん!」
「ああ、忘れてないって。お前たちとも一緒で嬉しいよ」
毛玉とフェンリルを撫でる。
「…」
なんかイレイナがめちゃくちゃジト目を向けてくる!?
「あの…なんでしょうか」
「…」
「イレイナさん?」
「…私も」
え?
「私も撫でて」
じっと上目遣いで見てくる。え?なんだこんなイベント。ちょ、誰か攻略サイトを頼む。
「え、あ、あの…」
「撫でて」
「あ、はい」
圧に耐え切れず、イレイナのさらさらな髪に手を乗せ、撫でる。
「んっ…」
イレイナが気持ちよさそうに目を細める。心なしか顔が赤いような?
「あ!イレイナずるいにゃ!ミャンも!」
え?
「まだダメ」
「ちょっと、イレイナだけずる…いやなんでもないわ」
「…あ、あの…皆さん…夜ご飯…」
「リリもして欲しいんじゃないかにゃ?」
「そそそ、そのようなことは!」
「リリ、あんた隠し事向いてないわ」
「ええ!?」
なんだこの空気は。俺なんかしたか?
「…ロイ…もっと」
「イレイナ!順番にゃ!!」
「…むう…」
深いことを考えるのはやめようかな。
俺、普通の薬屋だし。
うん。
主要キャラ
ロイ ー薬屋ー 極上のなでなで
イレイナ ー召喚術師ー うっとり
ルミナ ー氷術師ー そわそわ
ミャン ー獣人奴隷ー なんかロイ様の手腕すごそう
リリ ーメイドー イレイナが羨ましい
イレイナの召喚獣
毛玉 はねる、いかく、あまえる、たいあたり
傀儡人形クレイドール ふしぎなおどり、たいあたり、まもる、経営
氷狼フェンリル いかく、あまえる、氷の牙、氷のブレス




