16.うちは突然の思い付きで繁盛するような薬屋ではないはず
俺は旅を舐めていた。
「…大丈夫、ロイもフェンリルが運ぶ」
「わふっ!」
フェンリルの背中に乗せられている。二刻ほどで俺の足は限界を迎えたのだ。
よく考えればこの世界には自動車はおろか電車も無ければ、歩く道は舗装などされておらず、踏み固められた土である。
これが思った以上に体力を持っていかれた。
「まぁ…新人冒険者も似たようなものだから…気にすることはないわ、ロイさん」
「そうですね…ロイ様は休んでいただければ」
「馬車でもあった方がよかったかにゃぁ」
「きゅー?」
女性陣みんなが平気そうに歩いている上、さっき知ったのだがフェンリルもメスらしい。つまり、俺を眺めてる謎の毛玉はさておき、唯一の男である俺が真っ先にダウンしたということだ。
「す、すみません…」
「ん…ロイは初めて、仕方がない」
しばらく進むと、川の近くに何組かの旅人がテントを張っている場所に着いた。
「今日はここで休憩にしましょう」
「かしこまりました」
俺が座っている間にフェンリルから荷物を降ろしてテントを張りだす女性陣。なんてたくましいんだ。なんか周りの冒険者の目が痛い気もするけど、気にしないことにする。だってわかんないし…。
「あ、皆さんこれをどうぞ」
自分の荷物からエナジーバーを取り出す。栄養満点のブロック状のアレを参考にして作ったものだ。
「ん?なにこれ」
「お菓子にゃ?」
「甘い香りがしますね」
三人は眺めているがイレイナはすぐに食べだす。
「ん…美味しい…」
「俺がつくった携帯食料です」
その瞬間イレイナ達だけではなく、周りの人たちまでこちらを見た気がする。
え?俺何かした?
「ロイさんが作ったということは…」
「ええ、体によく、食べやすく作りました。腹を整える薬草も入っているので、基本的にはいつ食べても大丈夫なはずです」
ルミナもミャンもリリもすごい目で見てくるのだが?俺なんかした?
「お、おいアンタ!それ分けてくれないか!」
「あ!まちなさいよ!私も!」
え?え?
「お待ちください」
リリが俺を守るように一歩前へ出る。
「ロイ様はローズ商会と専属契約しておりますので」
あれ?それは抑制剤の話では?
「…ロイ、もう一個」
「あ、はいどうぞ」
「ちょ!?イレイナ!空気読みなさいよ!」
「あーはいはい、取引はしないにゃー!散るにゃ!」
そんなやばいものだろうか、これ。
「ロイ様…こちらは販売の予定は…?」
「え、今のところ考えていませんでしたけど…?」
「…帰ったらローズマリー様のところに行きましょう」
え?なんで?
「…ロイさん、携帯食料ってどういう物なのか分かってるの?」
「え…そういえばわかりませんね…」
「干し肉にゃ!」
「干し肉?」
はて、ゲームにはなかったアイテムだな。
「干し肉…塩辛い…」
あー…なんとなくわかった気がするぞ。
確かによく見れば、干し肉を噛み切れず苦戦してる人もいるな。
「ふむ…あれ、これやばいですか?」
「やばいなんてもんじゃないわよ!」
「売り出したら爆売れにゃ」
そんなにか…。軽い気持ちで現代のもの作るもんじゃないな。
「あ、でもこれ売るとしたら少し高いですよ。これ一個でパン屋の白パンが10個は買えますから」
「…だとしてもかなりの需要があると思いますよ。ともかく、ロイ様、できればそれは誰にもお譲りにならないでくださいませ。騒ぎになりますので」
「あ、はい」
「ロイ、もう一個」
「イレイナ!アンタは少し自重しなさいよ!」
もしかして現代の運動した後に飲むジュース的な物も作ってきたけど…見せないほうがいいなこれは。
だって俺は。
普通の薬屋だし。
主要キャラ
ロイ ー薬屋ー 現代の文明を再現してしまった
イレイナ ー召喚術師ー エナジーバー美味しい
ルミナ ー氷術師ー 突然出てきた物にびっくり
ミャン ー獣人奴隷ー なんかロイ様の荷物あやしいにゃ
リリ ーメイドー ロイ様の荷物確認する必要がありそうです
イレイナの召喚獣
毛玉 エナジーバーに夢中
傀儡人形クレイドール 来店したアルリア、不摂生確認、要報告
氷狼フェンリル エナジーバーに夢中




