15.うちは旅をするような薬屋ではないはず
「ロイ?」
「な、なんでしょうかイレイナさん」
「さっきから…ルミナを見てる」
「え?どうしたのよロイさん」
棚をきれいに掃除してくれているルミナが、怪訝な目で見てくるが…せ、説明できないしなぁ…。
「ロイ様がずっとルミナを見てるから、イレイナがむくれてるにゃ」
「むくれてない」
「え?」
「なんでもない」
イレイナが俺の袖を摘まんでいる。なんだその萌え技。
「気になることがあるなら言いなさいよ」
「あー…こ、故郷には顔を出してますか?」
「は?なんで故郷なの?」
あなたの故郷が危ないかもなんて言えない!
「いやまぁ…その…眼も落ち着いたことですし。経過観察中ですが」
「…まぁ…確かに顔は出してないわね」
「家出娘にゃ?」
「ちっ…違わないわね…」
「ルミナ様…後悔されないうちに一度ご両親に会われた方がいいと思いますよ」
え?なにかリリが悲しそうな顔をしてるぞ?え??リリにそんなバックボーンあったっけ?
「…まぁ、一度帰ってみるのもいいかしら…」
「な、なら俺もいきます!」
「「「え?」」」
みんながこちらを見る。な、なんだその顔は?
「まさか本命はルミナにゃ?」
「え?そうなのですかロイ様」
「な、何の話よ!?」
え?どういう意味だ?なんだこの雰囲気は?
「…たぶん、ルミナの眼を気にしてるだけ」
「「「あっ」」」
なにかすさまじい勘違いされてる?
「ロイサマ、ジッサイハ、イカガデスカ」
「えっと、当然そうですが?」
「…ロイ…?」
じっとイレイナが、いつもの眠たげな目でこちらを見透かすように見てくる。
「う…そ、その…それだけではないのは事実ですが…。いえ、そうですね。よく考えずとも、わざわざ俺が付いていく必要はないですね」
ちょっと出しゃばりすぎたみたいだ。
そう、俺はゲームに関係ないモブですらない人間だ。
あまりヒロインに関わりすぎるのは…。
「ロイサマ、オルスバンハ、マカセテクダサイ」
「え?」
「なんでそんなに気にしてるか分からないけど…ロイさんには世話になってるし…別にいいわよ、ついてくるぐらい」
「みんなで旅行にゃ?」
「畏まりました、準備いたしますね」
え?みんなノリノリ?
「ロイ、大丈夫」
「イレイナさん?」
「何を気にしているか分からない…でも、大丈夫」
イレイナの目元が優しい気がする。
「…はい、そう…ですね」
自分からこの話に加わることに、なぜか抵抗感と罪悪感がある。
本来は勇者の話なのだ。
リリも、ミャンも、ルミナも、イレイナも。
「ロイ様」
「どうしたのかにゃ?」
「ロイさん?」
「ロイ」
みんながこちらを見ている。
「すみません…では、準備をしますかね」
まさか旅の準備をすることになるとは。
薬屋の道を選んだ頃の自分からすれば、こんなことになってるなんて思いもしなかっただろうな。
クレイドールに留守を頼み、イレイナの胸元には毛玉がいる。
ミャンもこの前に一緒に選んだ動きやすい服を着て、腰にはナイフを携えている。
ルミナはいつも通りの姿だし。
リリは槍を背負って…槍?
「リリさん…槍を使われるので?」
「ええ、少し嗜んでおります」
「絶対にゃ、手慣れてるにゃ」
ば、馬鹿な…リリは戦闘キャラでは…。
いや、こんな発想してるからいけないのか?
「きゅ!きゅ!」
「…業物」
「わかるのですか?」
「毛玉がそう言ってる」
「きゅー!」
え?君目利きできるの?え?
「謎の多い毛玉ね…」
「すげぇにゃ!」
さて、これから王都を出る。
今までと違って何が起こるのかも分からない。
まぁそれでも。
うちは普通の薬屋だ。
それらしくいこう。
主要キャラ
ロイ ー薬屋ー やたらと薬を背負う
イレイナ ー召喚術師ー 荷物はフェンリルが背負う
ルミナ ー氷術師ー 旅支度は慣れてる
ミャン ー獣人奴隷ー 実は服選びに時間かかった
リリ ーメイドー 槍はローズマリーに買ってもらった高いやつ
イレイナの召喚獣
毛玉 直感で目利きする
傀儡人形クレイドール ロイの代わりに営業する気満々
氷狼フェンリル 荷物持ち狼




