11.うちはヒロインが集まるような薬屋ではないはず
なぜソワーズ公爵邸に来ているのか。
まぁ原因はルミナが魔眼の治療についてローズマリーにしゃべったからだが。
それだけで呼ぶか?…呼ぶか、ローズマリーだし。
「こちらにてお待ちください」
ちらりと、この部屋まで、案内してくれたメイドさんをみる。
リリ、彼女もゲーム内ヒロインだ。と言ってもソシャゲの低レアキャラレベルの扱いで、大してバックボーンも語られず、戦闘キャラですらないが。
「失礼しますわ」
動きやすい服装だが高貴な雰囲気をまとった女性、ローズマリー・ソワーズが現れた。
「本日は時間を取っていただいてありがとう存じますわ」
「いえ、ローズマリー様のお呼びとあれば喜んで」
立ち上がり、挨拶を返す。平民なら普通は『ソワーズ様』と呼ぶのだが、彼女はあまり好まないので、最初から名前呼びをした。
「あら…ふふ、座ってくださいな」
正解だったようだ。さっきからリリがちらちらと見ているので、何かやらかしているのかと心配になる。
「今日は、お聞きしたいことがありまして…先日、とある冒険者に護衛をしていただいたのですが…その方から『魔属性抑制剤』について聞きましたの」
やっぱりその話か。まぁそれしかないよな。
「あれは複製可能ですの?」
「可能と言えば可能ですが、正直に言うと臨床試験無しで使用した物なので…」
「あら、ずいぶんと綱渡りですこと」
薬師としては言語道断だが事実だ。ゲーム知識とかいう、誰にも証明できない根拠で薬を使ったのだから。
「臨床試験に協力するから複製してくれとお願いしたら作っていただけますの?」
「はい?」
なんだって?
「知ってまして?魔属性抑制剤はいろんな物に応用できますの。もしあなたが安定して複製できるのであれば、私としても長期的な支援の用意がありますわ」
「あ、あの、お言葉は大変うれしいのですが…」
「ええ、ご心配はわかってますわ、調べさせていただきましたもの。ロイ様の薬屋はお一人で経営なさっていて、最近は同居人に接客をさせているようですが、基本的に診察はロイ様がお一人でなさっているのでしょう。そうなるといくら貴族からの申し出があっても手が足りない、と」
「え、ええ」
あれ、この敵意のないのに着々と囲い込んでくる論理展開、どこかで聞いたぞ。主にゲーム内で。
「臨床試験についての責任者はロイ様とさせていただきますが、私の方で必要な人材は用意させていただきますわ。それに調薬法についても、十分な代金をお支払いしますし、今後商品化して利益が出れば、その一部を継続してお支払いしますわ」
さ、さすがローズマリー、断る理由が潰されていく。
「それに…この臨床試験は、ルミナ様のためにもなるのではなくて?」
それを言われては断れない。今使っている魔属性抑制剤がたまたま効いているのか、今後調整が必要なのか、ゲームではあっさり治ったが、どうなるのか分からない。
ここはゲームではなく現実だ。
「申し出、大変ありがたくお受けします」
ローズマリーがニッコリと笑みを浮かべている。可愛らしい笑顔だとゲームの時には思っていたのに、実際に相対すると全くそう感じない。
「決まりですわね。契約書などは用意してありますが、ひとまず…」
ん?ローズマリーがリリを見てニヤニヤしている。なんだ?
「リリ、ロイ様の店舗経営に助力なさい」
「か、かしこまりました」
はい?
「リリをロイ様にお貸しいたしますわ。リリは調薬技術を少々嗜んでおりますので、手くらいにはなるでしょう」
なにその情報、初耳なんだが?マジ??
「あなた様ほどではありませんが、多少の心得があります。どうぞ、私をお使いください」
「そ、そうですか…」
何がどうなっている…?
薬屋にリリと帰ってくると、女性陣が自己紹介を始めた。
「…ロイ」
「はい、なんですかイレイナさん」
「たらし」
「はい!?」
なんでそうなる!?人聞きが悪い!
リリがこちらを見てクスリと笑った。
「これから、お世話になりますね」
「あ、はい…」
「へぇ、ロイさんって…」
「にゃはは~」
「むぅ…」
なんだこの空気は…。
どうしてこうなった。
うちは普通の薬屋のはず。
薬屋 ロイ なにがどうなってる?
召喚術師 イレイナ ロイはたらし
氷術師 ルミナ 察した
奴隷 ミャン ロイ様はロイ様にゃ
メイド リリ お世話になります
公爵商人 ローズマリー リリを見てニヤニヤ




