10.うちはヒロインに高額請求するような薬屋ではないはず
「…」
目の前でルミナが顔を引きつらせている。
痛みが引いて落ち着いて話をしていたのだが、当然のように薬の代金を聞いてきた。
薬師として、必要な薬の原価を無視して安売りするわけにはいかない。
「た、高くない?そ、そんなにするの?」
「まぁその…今後も定期的に診察を受けて、ほんとに落ち着くまでこの薬を使い続けるとなると合計でこうなります」
「…命の対価」
「わかってるわよ!」
まぁあんな金額言われれば焦るよね。
「ただその…すぐに全額は…」
「ルミナも奴隷になるにゃ?」
「え゛っ!?」
なに?ツンデレ幼馴染キャラが奴隷だと?……ふむ。
「…ロイ?」
何か圧を感じた。
「はっ!?し、しません!あのルミナさん、分割で、少しずつでいいですからね」
「ごめんなさい…そうしてもらえると助かるわ…」
とりあえず、支払いについての証文を作らなくては…何度かやったことはあるけれど、流石にこの金額は見たことない。素材には聖水など、手に入りにくいものもあるので仕方ないといえば仕方ないのだが。
「…ん?なにあれ、前はあんなものなかったわよね」
ルミナがイレイナ用に設置されたクエストボードに気が付く。
「あまりにもイレイナがクエストを受けに来ないから、専用のものが用意されたのにゃ!」
「どんな特権よ、それは…」
ルミナがイレイナを見て呆れている。しかし、イレイナは毛玉と遊んでいた。
「あ、わかった!ねぇロイさん、お願いがあるの!」
「はい?」
「私にここでの仕事を手伝わせて、このイレイナ用クエストも含めてね!その代わりに…」
「構いませんよ。俺も定期的にルミナさんの容体を診たいですし。イレイナさんも、もうそろそろハンナさんに急かされますよ」
イレイナが、しぶしぶといった様子で立ち上がる。
「…わかった」
「決まりね!改めて私はルミナ、よろしくイレイナ」
「ん」
イレイナとルミナが握手をしている。ゲームでは見られない、ヒロイン同士の交流だ…。なんか感動的だ。
「ミャンはミャンだにゃ!ロイ様の奴隷にゃ!」
「それ大声で言うことなの?」
「にゃはは~」
「…ミャンだから」
「なんか察したわ」
にしても、まさかルミナまでうちに出入りするようになるとは…。まぁ治療のためだ。仕方がない。たまたまだろう。
なんだってうちは普通の――
「あ!これなんていいじゃない!ローズ商会の護送任務!」
は?
は??
は???
「え、ロイさんどうしたのよ」
「ちょ、ちょっとそれ俺にも見せてください!」
ルミナからひったくるように依頼書を確認する。
本当にローズ商会の護送任務だった。依頼人は…。
「ローズマリー・ソワーズ…」
ローズマリーもゲームのヒロインであり、非戦闘キャラだが、彼女がいると楽になるイベントも多く、普通にプレイするなら必須、と言われていたヒロインだ。
その接触イベントのフラグの依頼がなんでここにあるのぉ!?なんでぇ!?
「知ってるの?」
「ちょ、直接知っているわけではありませんが。学生のころから事実上ソワーズ家を取り仕切り、卒業と共に親を隠居させ家督を継いだ方です。今は商会を運営をしている公爵様です」
「…え、なんでそんな人が普通に依頼を出しているのよ」
「さ、さぁ?」
彼女の信条は、人は己の目で見て判断する、というものだ。だからこそ、様々な人との交流を彼女は惜しまない。商会をもっと盛り立てていくためにも。
だとしてもこの依頼書がここにあるのおかしいけどねぇぇぇ!!!
「罠かしら…」
「いえ、そのようなことをする方ではないので心配しなくても大丈夫ですよ」
「そうなの?ならこの依頼受けましょ、イレイナ」
「わかった」
「気を付けるにゃ~」
ミャンが手と尻尾を振っている。
たまたま、だよね?
ハンナが間違えて混ぜただけだよね?
決して勇者が受けないからとこっちに回ってきたわけじゃないよね?
だって。
うちは普通の薬屋のはず。
薬屋 ロイ 高額請求
召喚術師 イレイナ しぶしぶ
氷術師 ルミナ 債務者
奴隷 ミャン にゃぁ~
召喚獣 毛玉 実は描写されないだけでよくイレイナに抱かれてる




