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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第349話 最下層へ


 セーフエリアを出てすぐのところに、十階層のボスであるクマ型の魔獣と、まわりにフォレストウルフの群れがいた。

 そろそろ動いておきたいというロゼリアの意向で、りのがバフをかけ、ロゼリアが一刀両断して終了。

 ドロップはフォレストベアのお肉とフォレストウルフの毛皮だった。



 十一階層は、じめじめした湿原エリア。

 湿原の真ん中に大きな木製の通路があって、そこを進んでいると、両側からびよんとカエルが跳んできたりカニが現れたりヘビがにょろついていたりした。


「リン、ヘビやカエルは大丈夫なんですね」

「好きじゃないけど、まだ目で確認できるから大丈夫。今はロゼが全部倒してくれるし」

「リンの援護があってこそです」


 二人でいちゃいちゃしているうちにボスエリアへ到着。

 そこにいたのは、マッドヴァイパーという大蛇だった。がばっと口を開けたところにりのがほいっと火球を放り込んでお亡くなりになった。



 十二階層は河エリア。

 ここは、エリアのほとんどがほぼ水で、端っこに道がある。

 その道を歩いていると、河の中から魚や貝やエビ型の魔獣が襲ってくる仕様だ。ワニはその道にずりずりはいあがってきた。

 少しは動いておきたいというアダンの意向で以下同文。

 ボスはブルークロコダイルという青いワニ型の魔獣で、きれいな青いワニ革をドロップした。



 十三階層は熱帯雨林エリア。

 アトラロの森とはまるで違う、むしむしむあっとした空気がりのにはどこか懐かしかった。

 りのが練習がてら、全員に「冷却」をかけて進んだ。


「リンの『冷却』は快適ですねえ。普通の魔術師がかけると、寒くなることがほとんどなんですが」

「冷やすっていうと、たいていは氷を想像しちゃいますからね」

「私の国は、ここまでではなかったですけど、夏はけっこう蒸し暑いところなんです。ですから、空気の温度を快適に保つ魔道具みたいなのがすごく発達していて。それを参考にしてますから、快適さが具体的なのかもしれませんね」


 冷やすだけではなく湿気もとってくれるのが日本のエアコンである。


(エアコン魔法、屋敷のどこかに魔術陣があるだろうから調べてみようかなあ)


 ここで出てきたのは植物型の魔獣と、イモムシ型の魔獣。

 植物型にはラウの指示でりのが「アトラクト」をかけてみた。

 畑のようなところ一面に植わっているマンドレイクは、葉っぱと根っこの合間、茎がぎゅっとなっているところに魔石があって、それを引き寄せたのである。

 魔石をとられたマンドレイクはしゅるんと枯れてしまった。やはりスライムに比べると魔石をとりきれなかったが、取り逃しは多くはなく、やはり視認できれば強いなと皆で頷きあった。

 イモムシ型は巨大で、どちらかと言うとミミズだったが、ゼノンの「風刃」で輪切りからみじんぎりになった。


 また、このエリアでは、少しだけ採取もした。

 ラウがひとつひとつ名前と採取のしかた、効能、使い方、買い取り価格などを教えてくれて、それをりのが採取する。

 凄腕の冒険者で、かつラハラン支部の副支部長に直接教えてもらえるのだから、贅沢だ。


「おお、ハエトリグサっぽいなあ」

「あれがボスのレッサーマンイーターです」


 まさにハエトリグサみたいな、ぎざぎざの生えた口のような葉っぱをぱくぱく動かしている。

 が、暇になったラウが弓を取り出し、きれいな光の魔術でできた矢をぶち込んで終了。

 ドロップはぎざぎざの歯がいくつか。よい刃物を作るのに使うらしい。



 十四階層は雪原エリア。

 一面が真っ白な雪で覆われ、道の両側にはりのの身長より高い雪の壁があった。


「『温熱』」

「――ありがとうございます、リン。リンの魔術は本当に快適です……!」

「女の子は体が冷えやすいからね」


 ロゼリアときゃっこらしている横で、ラウがさあ行きましょうとやっと口を開いた。

 この階層に入ってりのが魔術をかけるまでの間、一言もしゃべらなかったのに。相当寒いのが苦手らしい。


「オオカミ型もキツネ型も、壁を飛び越えて入ってきますから、しっかり『防壁』を張っておきなさい」

「はーい。『バリア』」


 途中、上の壁からびょんとキツネが降ってきたが、りのの「バリア」に弾かれてきゃん! と雪の壁の向こうに落ちていった。


「? 今何か音がしませんでした?」

「いいえ、特に何も」

「あはは……」

「まあいいんじゃねえか……実害はないし……」

「さすがリンです」


 ぬくぬくしたままボスエリアについて、大きなスノウウルフの番とスノウフォックスの群れと対峙する。


「リン、ここではパーティー連携の練習をしましょうね」

「はいっ」

「まず前衛に強化魔術を」

「はい! アダンさん、ロゼ、行くよー。『シールド』『アクセルレーション』『パワーアップ』!」

「ワァ……」

「ゼノン君?」

「ああはい……、いや、もうここまで来たら過剰でも何でもいいですよね、うん。おれもかけまーす。『速度強化』『身体強化』」

「やりすぎじゃねえか? まあいいけどよ……ロゼ、俺が盾持ちやる。立ち回り方はわかるか?」

「大体は……あまり自信はありませんが」

「アダン、教えてあげなさい。少し体を動かすことも必要です」

「了解」

「リン、前衛を強化したら、次は露払いをしましょう。敵の強さや種類にもよりますが、まず数を減らすことが鉄則ですよ」

「わかりました!」


 二頭のオオカミとキツネの群れは、りのとロゼリアの教材にされてしまった。

 ラウ、アダン、ゼノンが説明を繰り返しながら攻撃をする関係で、なかなか倒してもらえず、かといって逃げることもできず、最後は疲れた様子で打ち取られた。


「……なんか、オオカミもキツネもやる気なかったね」

「やる気というか、あきらめというか……まあいいだろ、倒せたし」

「そうだけどさあ」


 ドロップしたのは真っ白なオオカミの毛皮と、同じく真っ白なキツネの毛皮。

 どちらもドロップ率は低く、たいていは肉が落ちるらしい。


「よかったですねリン、幸運でした」

「だねー! 少しごわごわしてるけど、真っ白できれいで嬉しい」

「――スノウウルフもスノウフォックスも、あんなに真っ白でしたっけ?」

「いや、もう少し汚れてたりまだらだったりするはずなんだが……」

「豪運なのか、それとも、というところですね……」



 

 そして、ボスエリアに続く階段が現れた。

 今までの階層間で見たどの階段よりも、広くて整った階段だ。しかも白い石でできている。

 アダンとロゼリアを先頭に入り、一番後ろのゼノンも入ると、後ろの入り口が閉まると同時にぽっと白い灯りがついた。


「なんか、今までとずいぶん雰囲気が違うんですね」

「十五階層は、神殿のようなところの中なんですよ」

「神殿」


 りのは、こちらの世界で神に関わる施設を訪れたことはない。

 多神教で、街のあちこちに神殿があるのは知っているが、実際に足を運んだことはなかった。

 ウェルゲアの主神の神殿くらいは行っておこうかなあ、でも何かトラブルが起こったらいやだなあという気持ちで、なかなか足が伸びなかったのだ。


(だって、私にこういう能力を与えたり、顔や体をいじったりしたのは、たぶん神様っていう存在だろうからなあ……)


 お話の中では、神殿に行くと神様が話しかけてきたりする。

 りのは詳しいのだ、そんなお話をいっぱい読んだから。


「リン、魔力は残ってますか」

「あ、はい、大丈夫です。八割はあります。――体感、ですけどっ。皆さん体力は大丈夫ですか? 『リカバリー』かけますか?」

「一応お願いします。最後の階層、最後のボスと戦うということは、そのダンジョンで最も強い魔獣と戦うということですから、体力と魔力はしっかり整えておきましょう。場所によっては、この階層間の通路で強化魔術をかけたり、防具や武器のチェックをすることが必要ですよ」

「わかりました。ではひとまず、『リカバリー』」


 武器も防具もチェックする。歪みがないか、外れていないか。

 できる限りのメンテナンスをしておくことが大切だそうだ。

 それぞれにホルダーや鞘から自分のえものを引き抜いて、一同は十五階層へ入っていった。




本日はここまで。お読みくださりありがとうございます。

また、★とブクマ、リアクションをありがとうございました。

おかげさまで、異世界転生/転移ランキングの日間/ 連載中にお邪魔していたようです(不整脈)

どうかお楽しみいただけますように。今後ともよろしくお願いいたします!

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