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インドア聖女は早くおうちに帰りたい  作者: 和原茉白


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第330話 見学準備


 発熱した次の日はゆっくりして、その翌日にりのは全快した。


(いつもだったら回復するのに二、三日かかってたのに……若い体って恐ろしい……!)


 もちろん「リカバリー」の影響もあったのだろうが、それにしても早く治ってびっくりである。

 それでも、いきなりマックスで行動することはせず、ゆっくりと行動量を増やすことにした。


(なぜなら! 調子に乗ると、私ぜったい失敗するから! 大人はそういうところ油断しないから!)


 というわけで、本日のタスクは、キャンプ……じゃなくって、ダンジョン見学の準備のみです。





 りのがまず思ったのは、ダンジョンって何がいるんだろう、ということだった。


「私は泊りで潜ったことはないのですが、ダンジョンに行くなら武器防具とポーション類は必須ですね」

「ポーションね」

「それから、マジックバッグがあればドロップ品をたくさん持ち帰れるので、冒険者は皆持っていきたがります。マジックバッグをドロップさせるためにダンジョンに潜る冒険者も多いですよ」

「貴重品だもんねえ。じゃあユーゴ様からもらった時間遅延のマジックバッグを持っていこう」


 ポーションは冒険者ギルドで売っているから、そこで買おう。


「ええと、武器は、私は使えないからいいとして」


 使わない、ではなく、使えない、だ。

 悲しい。


「着るものは、いつもの冒険者装備でいいよね。『クリーン』を使うから、着替えもいらないし、洗面用具もいらない。あとは?」

「そうですねえ、夜寝るときのテントと毛布でしょうか。テントはラウ殿たちが用意されると思います」

「え、そうなの? 個人で持っていかないの?」

「大体はパーティーで一つなんですよ。男女の混合パーティーでは二つですね。パーティーの事情によっても変わってきますけど、今回はラウ殿たちが持ってこられるんじゃないでしょうか。ランクの高い冒険者は、ダンジョンドロップのテントを持っていることもありますし」


 ダンジョンドロップのテント!? なんかすごそう!


「驚くような機能がついているのも多いそうですよ」

「へえ……! まあそれが今回あるのかはわからないから、自分で用意するものは用意しよう。ええと、毛布、ね。ギルドで売ってる、薄いひざ掛けみたいなやつであってる?」

「合ってますよ。あれ、あまり防寒にはなりませんけど」


 ふうむ。あれって、毛布というよりは厚手の布だもんねえ……。


「――ねえロゼ、鳥の魔獣の羽毛って、どこかで手に入るかな?」

「羽毛? あのふわふわした、小さな羽根ですか?」

「それそれ」


 ロゼリアは少し考えて、あると思います、と頷いた。


「ウィンドグースという鳥型の魔獣がいるんですが、大きいので羽根はたっぷりとれると思います。肉が美味しい魔獣でよく狩られているので、小さな羽根も確保してもらえるようにラウ殿に頼んでおきましょう」

「強い魔獣なのかな? すごく少ない魔獣だとかってことはない?」

「レアではありません。水の上にいることが多いので、弓か魔術でないと倒せないですけど、よくいますよ」

「そっか、うん、じゃあお願いしたいな。私からラウさんにお手紙書こうか?」

「では私が届けて参ります。リン、ユーゴ様にも連絡しておいた方がいいですよ」

「あ、そうだね! じゃあすぐ書く!」


 りのはさっさと手紙を書き、ロゼリアもさっさと出かけて行った。

 今日はこれから聖女の屋敷へ戻る予定があったので、護衛を気にする必要がなかったので。


「リン、お土産にこの間行った喫茶店のケーキ買ってきますね。ああ、ポーションも調達してきます」

「ありがとうロゼ、楽しみにしてるねー!」




 さて、聖女の屋敷に戻ってきて、りのはキッチンに行った。

 泊まりとなれば、やはり必要なのは食べるものだ。

 りのはダンジョンどころかキャンプすら初心者以下なので、まずキッチンでタブレットを開き、「キャンプ飯」で検索する。


「わあ……おいしそう……!」


 向こうの世界ではキャンプは大人気で、たくさんの人たちがキャンプで作ったご飯の画像を上げてくれている。

 どれもすごくおいしそうだ!

 が。


「うう……カレー、お米にじゃがいも、カップラーメン、ツナに焼きそば、ホットケーキミックス……ないものだらけだあ……」


 こちらでは手に入らない、あるいは出せないもののオンパレードだ。

 食欲に大ダメージを食らってしまった。特にカップラーメン。なんであの時カップ麺買わなかったんだろう……悲しい……。


「うーん、しょうがない……。何とかこっちにあるもので作ろう……」


 メインとなるのはやはり夕食だろうか。ちゃんとお腹にたまる、温かいものを食べたい。高カロリーの行動食もあった方がいいだろう。ちょっとほっとできるようにお茶とお菓子もほしい。


 涙をのんでおいしそうなキャンプ飯に別れを告げ、りのは食事のメニューの検討に入った。






「すごい……!」


 アトラロへのお使いから帰ってきて、ケーキを持って聖女の屋敷へやってきたロゼリアが嬉しそうな声を上げた。


「リン、こんなにたくさん作ったんですか!?」

「うん、こっちはふつうのごはん用。こっちは行動食……ちょっとおなかが空いたときにつまむ用ね」


 かっちりと焼き上げたバゲット、ライリーにも話していたフライパンで焼けるピザ生地、手で持ちやすいサイズのコッペパン的なもの。おかずになるのは、定期的にウェスから仕入れているベーコンにチーズ。野菜はあらかじめカットしたものとしていないものを数種類。玉ねぎやトマト、お腹にたまるルシャタ、うま味の元になるキノコなどをチョイス。


「お肉はたぶん、現地調達できるよね?」

「できます。邪魔ダンジョンなので、ものすごくおいしいものは出ないでしょうけど」

「お肉がでれば十分だよー。それを料理するために、フライパンと、各種調味料」


 調味料は、マヨネーズと赤ワインを煮詰めたソース、グレイビーソースとトマトソースをきっちりと瓶に入れて。後は蜂蜜と、炒め物用のネシスオイル。


「つまむ用には、まずフラップジャックね。オートミールと乾かした果物類、アーディルンとかを砕いて蜂蜜とバターを混ぜて焼いたの。小さいけどけっこうお腹にたまるんだ」


 アメリカのパンケーキ的なものではなく、イギリスの方のフラップジャックだ。これはバー型に切って袋にぴっちりつめた。

 それに、ゆで卵とドライフルーツ、ナッツ類も。


「基本的には手で食べられるもの、パンにはさんで食べられるものを選んだんだけど、大丈夫かな?」

「いいと思います、おいしそうで楽しみです!」


 食いしん坊ロゼリアが発動している。とてもかわいい。


「あと、ちょっと迷ってるのがスープなんだよね」

「わあ、スープというか、これはリンのシチューですね!」

「そう、野菜たっぷりのクリームシチューとブラウンシチュー。みんな自分のカップを持っていくって聞いたから、それに入れて食べれば良いかなって思ったの。でもこれ、温めないとおいしくないんだよね」

「ああ、マジックバッグが時間停止ではありませんものね」

「そうなの。どっちも大きいお鍋で作ったからバッグの場所をとるからなーって迷い中」


 ロゼリアはしばらく考え込んでいたが、こくりと頷いた。


「誰かは時間停止のマジックバッグを持っていると思いますから、手分けして持っていけばいいんじゃないでしょうか。ダンジョン内は寒いところもありますので、体が温まるものは喜ばれます」

「そっか、じゃあそうしようかな」


 五人の二日分の食料となるとかなりの量だ。

 いざとなったら自分のインベントリにごまかして入れてしまおうと思いながら、りのは仕上げに入った。

 これを作り終わったらさっさと時間停止の方のマジックバッグに収納して、ロゼリアとお茶をするのだ。ケーキが楽しみ!



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