表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロンギヌス  作者: 白河・DG・夜舟
終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/49

45.揃いも揃って、この大馬鹿者どもがっ!

 こういう時のチームワークは、最高ですよもう。

 名前なんてどうでもいいじゃありませんか。

 俺たちはチームワークの良さで勝負するんですよ!

「君たち、入っちゃいかん!」

「なぜですか。俺たちはれっきとした関係者ですよ。正式な説明も無しに物事を決めといて、帰れはないでしょう」

 困惑している警備員に、キャプテンは派手に食ってかかった。

 建物の前でリポートの準備をしていたテレビ局のスタッフが、それとばかりに詰めかける。

 報道陣にしても、うかつに建物の中に入る訳には行かない。許可なく入れば、最悪訴えられる可能性もある。

 昭和の監督が教育委員会に入る所を捕まえてコメントは取ったものの、その後の映像を確保したいと張り込んでいたのだ。

 これは格好のネタである。

「ぼくたちは、野球部員ですから、決定には従いますよ。ただ、正式な説明もなくて勝ち負けを決めるのはどういうことかとお尋ねしたいだけです」

「そうだそうだ!」

「高野連横暴だ!」

 調子を合わせて部員たちが叫ぶ。

 その様子は、しっかりテレビが放映していた。

「…歴史でならったデモ行為みたいだな」

「まさか俺たちがやるとはな」

 小声で囁きあうも「責任者出て来いっ!」とか大声を上げる辺りは、すっかり乗り気である。

「とにかく、関係者である以上、責任者に会わせて貰います」

「こ、困るんですって!」

「無理にという訳じゃないでしょう。用事のある関係者を止める権利はあなたには無いはずだ」

 警備員の制止を振り切って、南洋第一ナインは建物内部に突入した。

「キャプテン、事務所は3階北側です」

「よし、階段を登るぞっ」

 こういう時の連携は、普段の試合以上に速く強い。

 一気に目的地に突き進んでいく。

 その後を、報道陣が尻馬に乗って追いかけていく。

 こうなれば、もう訴えるも何もない。

 野球部が結束して教育委員会に押しかけるなどという前代未聞のニュースを取り逃がしたりしたら、訴えられて裁判ざたどころの騒ぎではない。

 ある意味、ヤクザの出入りより常識はずれで、赤穂四十四志士の討ち入りよりもお涙頂戴である。

 この機会を逃したら、報道人生の終りだ、という決意で後を追いかける。

「失礼しますっ!」

 いきなりドアを開け、事務所内に上がり込んでいった。

 受け付けと事務を兼ねているらしい制服の女性が、驚いたように睨んでいる。

 電話を受けていた事務職の男性数人も、固まったまま動けない。

 キャプテンは、周囲をさっと見渡すと、奥の席に座る一番偉そうな男性を見つけた。

「お話がありますっ!」

「な、なんだね君たちっ」

 やや怯えたような、それでも威厳を保とうとする声など無視して、その机の前に立ちふさがる。

 部員たちもその左右に散らばり、人間の壁になるかのように整列した。

「海浜高校の不正投球による処分の件で、お尋ねしたいことがあります」

 冷静だが、必要以上に大きな声でキャプテンが言う。

「な、なんだね…」

「彼らが不正な行為をしたのであれば、我々南洋第一高校との試合は不成立であると考えます。したがって、試合をやり直して頂きたい」

「な、なにを言って…」

「海浜と初めて試合を行なったチームになんの断りもなく、決定を強行したのはどういうことですか。同じ高校野球を愛する者として、慙愧の念に耐えかねず、事情をお尋ねしたく伺いました」

「委員長、私から説明しましょう」

 後ろの応接室が開き、中から初老の男がゆっくりと出てきた。

 昭和の監督だった。

 そして、南洋第一の監督も。

「か、監督…」

「揃いも揃って、この大馬鹿者どもがっ!」

 部屋中に響きわたる声で怒鳴られて、さすがのキャプテンも二の句が告げなくなった。

「いや、うちの生徒が大変な御迷惑を…」

「いや、若気の至りという所ですなあ。ハッハッハッ」

 にこやかに昭和の監督が笑って見せる。

「お前たち、気持ちは判るが、大勢で教育委員会に詰めかけるとはどういう了見だ。俺に恥をかかせやがって」

 監督がずかずかと近づいて来ると、キャプテンや能口達の頭を拳骨で小突き始めた。

「イテッ…だって監督…」

「いいから帰れ。関係者の方々には俺から謝っておくから。マスコミまで呼び込みやがって…」

 事務所の表も何やら騒がしい。マスコミ関係者が、排除されているようだ。

「監督…」

「決まった事は仕方ないだろう。後でみんなに説明するから、今日は帰れ」

 手荒に追い出されると、さすがに自分のチームの監督には逆らえず、南洋の部員たちはぞろぞろと来た道を帰らされてしまった。


 表にはパトカーが幾台も止まっていたが、マスコミの関係者を追い払うのが主な任務らしい。何人か見せしめにでも逮捕しようとして、揉めている。

 その間隙を縫って南洋の部員たちを撮影しようとしたカメラマンが、カメラを向けた途端、寄って来た警官に手錠を掛けられていた。

「おい、報道の自由はどうなったんだ?」

「それよりも、なんで俺たちは逮捕されないんだ?未成年だからか?」

「なんだ逮捕されたいのか?」

 むしろ面白そうにキャプテンが言う。

「そんなことないですけど…」

「俺たちも、監督も、他の連中も、嵌められたんだよ。あの狸親父に」

「ええっ…?」

「とにかく学校に戻ろう。これ以上俺たちが騒いでも、成果はないからな」

 監督同士の密談かよ…

 大人って、大人ってずるいわぁ…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ