42.帰り道
短くてスイマセン。前のエピソードに混ぜるか迷ったのですが、入れると汚くなりそうで。
元々、一回戦ごとに章を組んでいたので、カットすると微妙な感じになりますね。
しかもサブエピソードまであとから入れてるし。
「延長53回、1-0で海浜高校の勝ち。礼っ」
疲れ切った両校のナイン達は、挨拶もそこそこにベンチに引き上げた。
普段なら、応援に来てくれた観客達に挨拶して回る海浜ナインも、そうそうに引き上げていく。
怪我の状態が悪い中、最後までグラウンドに留まった一塁手と、満身創痍の中、最後まで投げきったイヌイを病院に連れていくためである。
昭和のナインにしても、同じようなものだった。
その事情をよく判っていたので、観客も、南洋第一ナインも、なにも言わなかった。
なにも、言えなかった。
「これで、良かったんでしょうか?」
帰り道、能口は誰にともなく、呟いた。
「確かに昭和のやり方は褒められるものじゃない。だが、勝負の世界は、えてしてそういうものだろ?」
「だけど…」
「能口、お前はプロを目指すんだろう?」
「ええ、でも、キャプテンは…」
「俺は、止めとく」
「ど、どうしてですか…?」
一回戦負けのレッテルとはいえ、名門野球部を率いてきたキャプテンである。
「俺は、バカに徹しきれないからな。昭和のやり方も、ありかなと思ってしまうんだ。
俺は野球が好きだが、好きだからこそのめり込めないんだよ」
「言ってることがよく分かりませんけど」
「いいんだよ、バカは判らなくて」
「な、なんなんですか、それ」
「能口、勝負には、とことんこだわれよ。でも、プロで野球やりたいなら、根っこの所ではバカでいなきゃだめだ」
「はぁ?」
「じゃないと、野球がつまらなくなるぞ」
「…キャプテン」
「なんだ?」
「最近、“週刊野球人生”買ってませんか?」
「…なんでそれを」
やっぱり…
どうもキャプテンの言うことは、おやじくさいと思っていたのだ。
ただ、イヌイや尾形は、確かに野球を根っこの部分で好きなのだろう。
それも、バカみたいに。
だから、尾形が汚い所を見せても、イヌイはなんにも言わないし、受け止めていられるのだろう。
イヌイが、意識しているかいないかは判らないが。
「いいなあ…」
能口は、自分でも判らない気持ちを玩びながら、一人呟いていた。
(つづく)
そうですか、キャプテンはプロを目指さないのですか。
ちなみに、名前入りの登場人物は全員プロ志望。
名無しは、目指していないわけじゃないけど、わかりませんけど、バカには徹していないようです。




